挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

319/656

319

 陰月の路付近にある拠点。
 ここは竜操者のみが使用できる。

 旅の商人などは利用することはできない。
 一見不公平なように思えるが、ここは軍事施設と同じ扱いである。

 昨年の襲撃の例もあるが、一般の者を軽々しく入れることはできないのだ。

 僕が立ち寄ったこの拠点は、そんな拠点のひとつで、常時、複数の竜操者が宿泊している。

「「「ご苦労さまです!」」」

 現役の竜操者、つまり僕の先輩が挨拶してきた。というか、一列に並んで敬礼?

 慌てて返礼したけど、敬礼って僕が先にするものじゃなかろうか。
 というか、軍属じゃないんだけど、僕。

「今日の成果を記入したいと思います。資料室は開いていますか?」
「了解しました。すぐに確認致します。……開いているようのですので、こちらへどうぞ」
「……はい」

 ずいぶんと丁寧に扱われている。
 なぜだろうか。

 月魔獣を狩った竜操者は、その日の成果を報告する義務がある。
 といっても報告は大ざっぱでいい。

 資料室の大きな机に、この周辺の地図が広げられている。
 そこに一日の成果を書き込むのだ。

 僕の名前と日付、倒した数を書き加えるだけの簡単なものだ。
 成果を表にして管理すれば、記入は簡単に済むのだが、倒した数よりも出現場所が重要だったりする。

 ゆえに地図に書き込む方式が一般的になっている。
 地図は毎月新しくなる。

 びっちりと一ヶ月分の成果が書き込まれた地図は新しいものと交換され、古いものは操竜会本部に送られる。

 よって、いま書き込まれているのは八月分だけなのだが……。
「ずいぶんと多いな」

「そうですね、昨年の1.5倍という結果が出ております」
 僕の独り言に応えがあった。

「1.5倍ですが。それはまた……」

 これも大転移が近づいている影響だろう。
 とすると来月、再来月はもっと増えるかもしれない。

「我々はまだ対処できておりますが、魔国は大変だと思います」
「魔国……そうですね」

 竜国と魔国では、月魔獣の扱いがかなり違う。
 竜国の場合、竜操者がたえず陰月の路を巡回し、見つけ次第狩っている。

 そのため、陰月の路のかなり近い場所まで、小さな村や町が存在できる。
 逆に魔国は、町にやってきた月魔獣を倒すやり方を選んでいる。迎撃だ。

 魔国の町は、陰月の路からかなり離れたところにある。
 距離にして竜国の倍以上、安全マージンをとっている。

 それだけ離れると月魔獣が襲ってくることはほとんどない。

 そこに到達するまでに体内の月晶石が切れて、月魔獣は動けなくなるからだ。
 それでもやってくることもあるが、それらは魔国の軍隊と魔道使いたちで迎撃する。

 僕は魔国の迎撃を実際に見たことないが、四段構えだと聞いている。
 普段から大穴や石、木によって行動阻害の逆茂木さかもぎを町の外周に張り巡らせてある。

 月魔獣がそれを突破しようとする間に、兵による足止め陣形が形成される。
 この兵たちは工作兵の意味合いが強い。

 可動式の柵を月魔獣の進行方向に設置するのだ。
 長い年月をかけて改良された対月魔獣専用の足止め装置である。

 町の全面に設置できなため、逆茂木を越えてくる間に設置する。

 それが月魔獣の足を止めている間に魔道使いたちが遠方から一方的に攻撃する。
 ここまでで月魔獣は多少の傷を負っていることも多く、なにより遠方までやってきたことで月晶石の残りも少ない。

 ほとんどの月魔獣はそれだけで動きを止めてしまう。
 まれにそれすらも突破してくる場合もあるが、最後は町の周囲に張り巡らせた石の壁が行く手を阻む。

 長い年月をかけて少しずつ壁の高さを増やしていった町の擁壁は、すでに月魔獣が越えられない高さにまで成長しているという。

 こうした多段防衛体制によって、魔国の民は守られている。

 ただしこれにはふたつのデメリットがある。

 ひとつは竜国以上に陰月の路から離れたところに町を作らざるを得ないこと。
 月魔獣の活動限界はほぼ正確に把握しているので、十分な距離を取ればその被害を減らすことができる。
 そのかわり、魔国民が利用できる国土が減ってしまっている。もったいない話だ。

 そしてもうひとつのデメリット。
 どんな防壁をしたところで、飛行型の月魔獣には効果がない。

 それに対処できるのは、強力な魔道使いたちのみ。
 そのため、強力な魔道使いが町に常駐することが求められている。
 魔道使いがひとり、または数人集まれば、月魔獣を倒すことができるからその需要は高い。

 常駐してくれる魔道使いをどれだけ抱えているかが、陰月の路に近い町のステータスになっているという。
 強力な魔道使いは、魔国の民を守る勇者とも言える。

 それを考えると、月魔獣の降下が増えた現状、魔国はどう対処しているのだろうか。

「魔国からやってくる商人からの情報はありますか?」
 竜国はいま、大幅な戦術変更のため、陰月の路は竜操者不足となっている。

 それでも対処できている竜国はすごいと思うが、魔国はどうなのだろうか。

「はっ、お答え致します。魔国よりやってくる商人の数はここのところかなり減少しております。それでも何人かはやってきているようです」

「少ないんですか。それは月魔獣が増えたからですか?」
「そのようです。魔国は戦力集中のため、陰月の路を横断する回数を減らしたようです」

「……なるほど」

 魔国は南と北を陰月の路で分断されている。
 これは竜国も変わらない。

 竜国の場合、自己責任で商人などが渡ることがよくある。

 魔国の南から北へ、もしくはその逆へ行く場合、決められたルートを通る場合に限り、兵や魔道使いたちが同行している。

 迎撃部隊つきの隊商だ。
 集団で陰月の路を横断するという。一度に数百人規模になるのが一般的で、千人を超えることもあるという。

 月魔獣を倒せる魔道使いが同行するのだから、みなこぞって参加するのだ。
 その回数が減らされたとすると、いろいろ物流に影響が出ることだろう。

 かといって竜国と違って独自に陰月の路を渡ることは少ない。
 魔国は竜国以上に陰月の路を渡るのは命がけなのだ。

「魔国は大変そうですね」
「はい」

「では、明日も狩りに行きますので、月魔獣がたくさんいそうな場所を教えてもらえますか?」

「……は、はい。最近巡回の手が回ってない場所というと、町から離れて重要度の低いこことここが……」

 僕は明日向かう場所を熱心にメモした。
 これで明日もシャラザードの機嫌が良くなりそうだと思いながら。


活動報告にも書きましたが、長い長い……ほんとうに長い戦いが終わりました。
今日1日はPTAイベントに出てきますが、明日からいろいろ動けそうです。ほんと涙でそうです。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ