挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

318/655

318

 謀反とは穏やかな話ではない。
 一体、ウルスの町はどうなっているんだ?

 だが、僕にはどうすることもできない。
 逆に積極的に動かない方がいいように感じる。

 どうも僕の存在は、謀反の押さえとして機能しているように思える。

「リトワーン卿の強制召喚は、九月の下旬なんだよな」

 いまはまだ八月の下旬。もうすぐ九月になるが、召喚の連絡は会議に合わせて行うだろうから、一ヶ月近く猶予がある。

 その間に僕は僕で、やることを済ませておかねばならない。

『さあ行くぞ』
 つまりシャラザードと一緒に月魔獣狩りだ。
 海上でシャラザードと交わした約束。切り札。
 それを実行しなければならないのだ。

「お手柔らかにね」
 一日中、朝から晩までは困るので、とりあえず手加減してくれるよう頼んでおく。

『うむ、存分に楽しもうぞ!』
 シャラザードは分かってくれなかった。

 まあ、月魔獣の数を減らすのに貢献できるのは喜ばしいことだ。そう思うことにしよう。
 僕もソウラン操者と同じく、自分自身を守る必要がある。
 陰月の路に行くのは悪いことではない。

 うんそう。そろそろ僕も自覚しないといけない。

 竜国の敵がいたとする。もちろん実際にいるわけだが。

 その連中が竜国を狙う場合、一番の障害となるのが強力な竜の存在である。
 中型竜以上だと、通常戦力では対処できないだろう。

 どう頑張ったところでこれに対抗できる存在は、そうそうない。
 そのような最強戦力のほぼ頂点に君臨しているのがソウラン操者である。

 敵はどう攻略してくるか。
 彼が竜から下りたときに狙うことが予想される。
 ゆえにソウラン操者は、自分の居場所をなるべく明かさないようにしている。自衛の策だ。

 今どこにいて、次はどこに向かうのか、だれも分からない。
 その手配をしているのは、ソウラン操者が持つ編隊の竜操者たち。または、彼らに従う竜務員たちである。

 ソウラン操者は半分以上を陰月の路で過ごし、残りは王都で女王陛下とともにいる。

 世間ではそう思われているが、意外と神出鬼没で、あちこちの領主のもとに顔を出したり、式典などにも不意に出席したりする。

 周囲は突然の来訪に大慌てだったりするのだが、それはソウラン操者が行き先を宣伝しないからこそ起こるのである。

 それによって、自身の安全を確保している。属性竜持ちは大変である。
 今は人ごとだけど、僕もいまは学院内で守られている。
 卒業したら、ソウラン操者のような生活を送るのだろうか。

 それは御免被りたいのだが……。

 なんにせよ、僕とソウラン操者を同時に狙うことは不可能なので、属性竜持ちが増えたことは、ソウラン操者の危険度が下がったことを意味する。

 反対に僕にも自身を守る必要が生じている。

「シャラザード、この三日間は好きに狩っていいぞ。学院に戻る必要はないからな」
『心得た。狩り三昧ざんまいだな』

「ああ……そのかわり、三日過ぎたら一度帰還する。おまえも腹が減るだろう? もちろん、狩りに出ていない間は、約束した日数には入れないから」

『ふむ。たしかにハラが減れば、効率は落ちるだろうしな。あい分かった!』

 シャラザードと生活して分かったことは、よく飛んでよく動いた後はよく食べる。
 おそらくだが、一日狩り三昧した場合、通常よりもかなり早く腹が減る。

 それを見越して日数に関係なくシャナ牛を与えるよう竜務員の人には伝えてあるが、そのためには僕がしっかりと管理して、早めに帰還しなければいけない。

 今回よけいに食べる分も王宮に請求書が回される。
『楽園』探しの一環として、経費になるのだ。

 拠点で食べたシャナ牛の量は通常の二倍以上三倍未満。
 ちょっぴり目が飛び出るが、まあ想定の範囲内だろう。
 僕が言うことじゃないけど。

『もうすぐだな』
「ああ、陰月の路に入ったら、なるべく月魔獣の多い場所を探してくれ」
『もちろんだとも』

 こと月魔獣狩りに関しては、シャラザードは素直に従ってくれる。
 問題は……。

「それでだ、王都に戻ったら、一度技国に行くぞ」

『なぜだ? 月魔獣を狩る以外に重要なことがあるとでもいうのか?』
 それはいっぱいあるだろ。

「僕の両親を技国に連れて行かなければならないんだ。前に話したろ。結婚について、いろいろと先にやらなきゃならないって」
 アンさんとの婚約発表が迫っている。

 すでに竜国の王宮では発表があったが、いまだ他の領主には漏れていない……はず。

 王宮内ではすでに常識となっているが、一般の民に漏れてないと思う。
 その辺は王宮勤め、信用していいはずである。

『ふむ、主の結婚か。ならばしょうがないな』
「結婚じゃなく、婚約だけどね」

 相手の両親とディオン氏族長へ挨拶をするのだけど……いろいろと気が重い。
 だが、やらないわけにはいかない。

 そして先方の意向。
 どうしても技術競技会の前に婚約発表したいらしい。

 理由は教えてもらっていない。
 アンさんは女王陛下と話をしているようだが、その内容は僕のところまで下りてこない。
 どうも、両国の同盟に関することらしいので、僕が聞いても無駄かなと思っている。

『考え事か、主よ』
「戻ってからのことを少しね」

 こうしている間にも、月魔獣の欠片・・が宙を舞っている。
 シャラザードが容赦なく、見つけたそばから破壊していくのだ。

 通常の月魔獣では、シャラザードにとってもはや赤子の手をひねるようなものだ。
『詰まらんな。この周辺には、もういないようだ』

「もうかよ、早いな。じゃあ次は……いや、暗くなって来たし、今日は宿泊施設に戻ろう。新しい狩り場の情報もそこで集めよう」
 闇雲に探すより、その方が効率がよい。

『うむ、そうだな。よし戻るか』

 シャラザードが気分良く方向転換した。
 これが人ならば、鼻唄交じりにスキップをしている感じだろうか。

 陰月の路にいるとシャラザードは本当に機嫌がいい。
 日が落ちる直前に宿泊施設に到着した。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ