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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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「王都と地方の対立が表面化したのだけど、それはいいわ」
 いいのか?

 女王陛下は話題を切り替えるように、顎に手を当てながら考える仕草をした。
 どう話そうか考えあぐねている顔だ。

「レオンは竜国運営会のこと、どのくらい知っているかしら?」

「申し訳ありません。各種代表が集まって会議をする事以外、ほとんど知りません」

「直接関係ないとそうよね。……毎月下旬に六十一名の代表が集まって会議が行われるのだけど、その中の半分が竜国議会の出身者なのね」

「他にも操竜会から十名の出席と聞いたことがあります」
「そうよ。竜導教会も竜国軍部会も十名ずつ」

 なるほど全部合わせて六十名。それに女王陛下を加えて六十一名か。

「その三十名の竜国議会だけど、その中にひとりだけいつも欠席しているのがいるのよね」
「…………」

 あれ? 何か聞いたことがあるような。

「ウルスの町の領主リトワーン・ユーングラスだけ、いつも来ないのよ」
 リトワーン卿……王女殿下の言うキザ男か。

 それが竜国運営会に来ない。
 なぜ来ないのか。

「対魔国防衛が忙しいからでしょうか」
「そう言うことになっているわね」

「……なるほど」

 女王陛下は信じていないようだ。
 たしかに飛竜に乗れば二日、急げば一日で着いてしまうのだから、無理すればこられないことはない。

「フィロスから、アレ。聞いたのよね?」
「はい。王女殿下と一緒にいましたおりに聞きました」

 アンさんのお兄さんの結婚式で、フィロス・シラームという医者が王女殿下に話していた。「リトワーン卿には気をつけろ」と。

「ここへきて謀反の噂が流れているわ。もっともかなり前から戦力増強が囁かれていたのだけど」

 リトワーン卿は最近、王都にまったく顔を見せないらしい。
 やってくるのはいつも代理のモーチャン・ビスカートルという側近の男。

 モーチャンは王都に住んでいる。御年八十歳の超高齢らしい。

 このモーチャン老だが、リトワーン卿の父親、つまり先代のウルス領主のときの重鎮だという。
 いまは隠居してリトワーン卿と頻繁に手紙のやりとりをしているので、自身が会議に出席しなくても問題ないと言い張っているらしい。

 あからさまに捨て駒っぽい気がするが、それは僕が言わなくても女王陛下も分かっているだろう。

「しかし謀反ですか。現地の〈影〉はなんと言っているのでしょう」
「謀反につながる証拠なしと言っているわね。状況証拠はいろいろあるようだけど」

 戦争準備は年々激しさを増しているとか。
 ただしそれはウルスの町では当たり前のことであったりする。

 ゆえに何をもって謀反の証拠とするか、決められないのだろう。

 僕はリトワーン卿について考えてみた。
 美丈夫で、人誑ひとたらししであることは疑いない。

 王女殿下の言うキザ男という表現もあながち間違っていない。
 そういう派手な所作が似合うタイプだ。

 では陰謀を巡らせるかといえば……どうだろう。
 やりそうな気がする。

 僕としては、黒に近い灰色ってところだろうか。
 身辺はがっちり守られていて〈影〉と言えども入り込めないのかもしれない。

「というわけで、今回強制的に呼び出すことにするわ」
「リトワーン卿をですか?」

「そう。それではっきりすると思わない?」
 竜国運営会の開催に合わせて、勅命をもって召喚するのだという。

「次だと、八月ですか?」
「さすがに間に合わないわよ。だから九月ね」

 竜国運営会はあと数日で始まるらしい。
 またリトワーン卿の欠席届も来ているという。

 しかし、強制的に呼び出しか。

「……もしかして内乱になります?」
「さあ、どうかしら」

 本当に謀反を考えているなら、単身でのこのこやってくるとは思えない。
 町の軍隊を引き連れて? それはないか。

 竜の監視網が張り巡らせている現状、町を出た瞬間にバレる。
 ということは、配下の竜操者たちとともに一斉に王都を襲うか?

「迎撃の準備して待っていたりします?」

「もちろん。無駄にならないといいわね」
 女王陛下は、そう楽しそうに笑った。



 女王陛下との謁見が終わった。

 寮に帰ってきたのだが、気分が重い。

 最後の「謀反」の話だが、なぜわざわざ僕に話したのか。
 もちろん理由はある。

 ひとつは、シャラザードのこと。
 謀反を起こした場合、リトワーン卿が率いる竜の大群がやってくる。

 こちらも竜の大群で迎撃してもいいが、それよりももっといい手がある。
 シャラザードを出せばいいのである。

 敵の竜を操り、どこか広い場所に下ろさせればいいのだ。
 女王陛下のいう「準備」とは、下りてきた竜操者たちを捕まえる準備を指す。

 謀反の一報が入れば、僕はシャラザードで出撃する。
 そのために僕に話したのだ。

 もうひとつは僕自身のこと。
 敵もシャラザードが出てくる可能性を考慮に入れているかもしれない。

 ならばどうするか。
 竜による王都襲撃を諦める? それは下策だ。
 一般の兵を集めても王都に到着する前に迎撃される。

 謀反の目的はただひとつ。
 王族を打倒し、ルクストラ王家の権威を引きずり下ろすこと。
 王都襲撃は避けられない。

 その最大の障害が僕ならば、それを排除すればいい。
 物理的に排除するか、事が終わるまで王都にいなければいいのだ。

 つまり僕を殺すなどしなくても、戦いに間に合わなければ、それでいい。
 情報の入らない場所。たとえば陰月の路などにいる間に事をおこすとか。

 だから僕は、女王陛下から謀反の話を聞いてしまった以上、長期に王都を空けられなくなってしまった。

 女王陛下の口ぶりから、「準備」は終わっているのだろう。
 なぜ実行に移さなかったか。それは……

 ――僕がずっと海の上にいたからだ。

 僕が捜索から帰ってきたことで、リトワーン卿を召喚できるようになった。
 強制召喚にやってこなければ、謀反確定。戦の準備をしはじめてもだ。

 逆にやってくれば、身柄を拘束して厳しく尋問できる。
 それを警戒して竜の大群でくれば僕が出撃する。

 そういう計画だろう。

 一応僕がいなくても、ソウラン操者や女王陛下だって属性竜を持っているのだから勝算はあるはずだが、無駄な戦いはないほうがいい。

「……まったく女王陛下の話は本当、心臓に悪い」
 嘆いたところでどうしようもないのだけど……。


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