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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 女王陛下が参戦? 月魔獣狩りに?

 なんて無謀な。
「なんて無謀な!」

「あら、失礼ね。妾も戦えるのよ」

 思わず、声が出てしまった。
 けど、驚いた。まさか女王陛下が出陣するのか。

 女王陛下の騎竜『白姫』は、シャラザードと同じ属性竜。
 大型種にも対応できる。

 対応できるのだが……まさか前戦に立つのか。

「あまりに驚いてしまったので、思わず声を出してしまいました……申し訳ありません」
 いきなり女王陛下の言を否定してしまったけど、これは僕が悪い。

 ただ闇雲に出陣するわけではないだろう。
 周囲だってそれを認めたりしないはずだ。

「いま、竜の渓谷でソウラン相手に鍛錬を積んでいるところなの」
 あそこは僕とソウラン操者が一騎打ちした場所だ。

 竜の聖門があるため、だれも入ることができない。
 特訓にはうってつけだろう。

 しかしそんなことになっていたなんて……たった数十日いなかっただけで、ずいぶんと動きがあったようだ。

 しかし、そうするといまの王都は竜で溢れているな。
 小型竜や中型竜は、新しい戦法をマスターするため操竜場に来ているだろうし、ソウラン操者も王都にいる。

 そして女王陛下の護衛もまた王都にいる。

「その分、陰月の路が手薄になっているのですね」
「そう。だからしばらく好きにしていいわ」
「ありがとうございます。シャラザードも喜びます」

「……でも」
 と女王陛下は意味深な目を向けてきた。

「なんでしょうか」
「少しレオンに知らせた方が良い話があるのよ」

 ……嫌な予感しかしない。
 女王陛下の口から発せられる話は毎回「きゃー」とか「うわーっ」とかいうたぐいのものだ。

 全力で遠慮したいのだが……そういうわけにもいかないんだろうな。
「なんでしょうか」

「ソールの町近郊で、工場が稼働したわ」
「存じています」

 長期休みの前に、その情報は入ってきている。
 ヴィラーインとバロドリストの町だ。
 領主が許可を与えてしまっているのでどうにもならないと聞いた。

「魔国からの流入も増えたのね。困ったことに多くの間者が紛れ込んできたの」

 なるほど。従業員に混じってやってくるのは防げないだろう。
 女王陛下は続ける。

「以前にもあったでしょ。食い詰めた者たちの流入が」
「はい。ソールの町にも人が溢れていました」

「ギリギリになったけど、魔国の狙いが分かったので、ハルイに頼んの」
「はっ? 父ですか?」

「そう。地方都市の反乱。それが魔国の狙いね」
「…………」

 僕が海の上で『楽園』を探している頃。
 ソールの町で何があったのか。

 違和感は以前からあった。
 それに気づいていながら、その先を想像できなかったのだけど。

 僕がリンダと一緒にソールの町を訪れたのはもうもう何ヶ月も前だ。
 通商破壊の被害が深刻で、原因を調査する必要が生じた。

 あのときソールの町には、多くの流民が溢れていた。
 まだ工場が完成していないにもかかわらず。

 いずれできるであろう工場の従業員になりたくてやってきているものと思っていた。
 だが違っていたらしい。

 工場が完成したいま、すべての従業員は魔国や商国からちゃんとやってきた。
 食い詰めた彼らではなく。

 では彼らは何のために国境を越えてまでやってきたのか。

「紛れ込んだ間者たちは、あるひとつの命令が与えられていたの」
 食い詰めた者たちの不安を煽り、流言飛語を流して反乱をおこさせる。

 そう、はじめから彼らは工場の従業員ではなく、反乱要員として先行させられたのだった。

 もちろん本人たちには知らされてない。あくまで、「新しい工場ができるから、そこで雇ってもらえる」という話を聞きつけてやってきたに過ぎない。

 しかも国境付近まで送ってもらった者も多い。

 だがフタを開けてみれば自分たちの居場所はない。
 働くところがなければ、食べることはできない。

 所持金がなく、腹を空かせた状態では国に帰ることもできない。
 そこで間者たちの出番である。

「こうなったのも、竜国が悪い。町の領主が悪い。おまえたちに慈悲をかけない町民が悪い」
 そうそそのかすである。

 はじめは小さな悪事からである。
 奪うことに慣れたらより大きな相手から奪う。

 大きな相手を襲うには徒党を組まねばならない。
 そのためには町にいる同胞たちと協力する必要がある。

 そうやって煽り続け、反乱を起こさせることが狙いだったという。

「竜国の対応力を見たかったのよね。領主が彼らをどう扱うか、竜を使うのか。使うならばどうやって運用するのか。それを知りたがったみたい」

「反乱は鎮圧されることが前提ですか」

「最終的にはそうでしょう。だって武力だけならば勝てるわけがないもの。……けど、食い詰めた者の数はかなりだったみたいだし、間者の多くは訓練を積んでいた」

「訓練ですか? 暗殺?」

「そうよ。表で反乱を起こして裏で領主や竜操者の暗殺を狙ったのでしょう。暗殺にすべて失敗したとしても、反乱を許した地方領主は面目を失うし」

「そうですね。噂を流せば簡単に失脚すると思います」
 反乱がおこれば領民たちが巻き込まれる。

 食糧や金銭を失うだけならばまだマシだ。
 命を失うことだって大いにあり得る。

 反乱を防げなかった領主。領民の命を守れなかった領主。
 そんな噂が流れれば、王都から叱責が飛ぶし、領主交代に発展するかもしれない。

 新しい領主は、元の領民におもねる政策を執る必要がでてくる。
 また、長年町を治めていた領主に比べて、知識が浅い。

 つまり、工場稼働にかこつけて地方の混乱を狙っていたのか。
 嫌な手を打ってくる。

「食い詰めた者たちが明らかに限界を迎えていたのと、新しく工場の労働者としてやってきた者たちの中に訓練を積んだ者がいるとハルイが見抜いてね。そこからいぶり出しが始まったの」

 あー、父さんならそうだろう。
 徹底的にやったんじゃないかな。

 ソールの町の大粛正もそうだけど、父さんが動いたら人が死ぬ。

 間者たちは次々狩られていったことが想像に難くない。

「ソールの町を選んだ事が敵の敗因ですね」

 そうとしか言い様がない。
 選んだ町が悪かったのだ。

「そうね……そしてもうひとつ」
 まだ何かあるのか?

 女王陛下の話は、僕の心臓に悪いのだけど。
 まだ続くようだ。


『潮の民』が暮らしていた島ですが、イメージ的にはハワイくらい離れていた感じです。
日本からだと6000km? 米国からでも5000kmくらいでしょうか。(うろ覚え)
何の手がかりもないと、見つけるのは大変そうです。
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