挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

313/660

313

 商国、東の都。

「おい、いるか?」

 五会頭のひとり『麦野ばくや』のフストラ・エイルーンのもとに、同じく『銀檻ぎんかん』のダイネン・フォボスが駆け込んできた。

「ずいぶんと息を切らせていますね。今は魔国にいるのではなかったのですか? 大きな取り引きの最中だと思うのですけど」

「それどころじゃねえんだ、『麦野』の。工場稼働に合わせて送り込んだ呪国人たちがみんな狩られてしまった」

「ふむ……そっちもですか。それで慌ててここに?」

「そうだよ。まさか紛れ込ませたのが見つかるとは……ん? そっちも?」

「竜国の王都に隠していた拠点が次々と潰されましてね」
「なんだそりゃ。どういうこった?」

「拠点を十作ったら、二つか三つはダミーとして把握させていたのですが、潰されたのは本命の方でした。いつの間にか場所を掴まれていたようです」

「おまえ、それって。……つぅか、なに涼しい顔をしてやがるんだ。やべえだろ。今後の作戦に支障を来すんじゃねえか?」

「大丈夫です。情報が入ってくるのが遅くなるだけですから。作戦そのものには支障はありません。ただし、竜国の情報収集能力は上方修正した方がよさそうですね。ここぞというときに動くとは、なかなかどうして戦略を分かっている」

 ひとりで感心しているフストラに、ダイネンは嫌な顔をした。

「こちとら貴重な戦力を潰されて頭にきてるんだが。育て上げるのにどんだけカネをつぎ込んだか」

 戦闘奴隷を扱うダイネンは、手塩にかけて育てた呪国人を、実戦に投入する前の段階で潰された事に、怒り心頭だった。

「私の方も拠点を見つけられていたのは誤算でした。が、可能性はありました。なにしろ、何年も調査を続けていれば、露見する可能性はありましたので。でも、そちらはどういうことでしょうか。なにかヘマでも?」

「そんなことさせるかよ。潜入は完璧だった。身元だって実際のを使ったしな。バレるはずはねえ。それこそ情報が事前に漏れていたとしか考えられねえ」

 あらかじめ潜入する者の容姿や名前が敵に分かっていたのではないか、つまり、裏切り者の存在をダイネンはほのめかした。

「どうでしょうね。潜入させる予定だった町はソールの衛星都市でしたよね」
「……ああ」

「ソールには死神がいますから、もしかするとそれに刈り取られたのかもしれませんよ」

「あの大粛正をひとりでやったっていう、伝説の殺し屋か? とっくに引退したって聞いたぞ」

「さあどうでしょう。名前が売れすぎてそうせざるを得なかったとも考えられます。なにしろ、狙われて生き延びた者がいないと言われていますからね。私も何度か探らせましたが、成果なしか未帰還のどちらかですから」

 未帰還、それはすなわち消されたのだとフストラはほのめかしている。

「……つぅことは、工場関連から攻めるのは難しいか」

「いえ、個人の能力ではなく、集団の力で押せばいいのですよ。計画は継続させて大丈夫だと思います。多少、戦略を修正しますので」

「そうかい。そんだったら任せる。……で、拠点を潰されたってのは、どういうこった?」

「竜国内の協力者から情報を得ている店舗が軒並みですね。他の拠点はそのままでしたが、すべて引き上げさせることにしました」

「どうするんだ? あっちの動きが入ってこなくなるだろ」

「仕方ないです。新しい拠点を作るつもりですが、機能するまではしばらくかかります。逆にこの時期というのが面白いですね」

「というと?」
「スルヌフの独断で王都が混乱しました。その報復と考えそうですが、これは違います。狙いがあまりに細かすぎますから」

「つまりこっちの目的がバレているってことだよな」
「そこまではいってないと思いますけど、概ね警戒する対象に私たちが入っているのでしょうね」

『麦野』と『銀檻』の両方が狙われたという事実から、計画の中身は知らなくても、主導している人物に圧力をかけてきたのだとフストラは言った。

「中途半端に手を出してきたなら用心して進めりゃいいが、こう見事にやられるとなぁ。人材はそう次から次へと沸いて出てくるわけにはいかねーんだよ」

「そうですね。ただしこれ以降は大丈夫でしょう。たとえ女王といえども、手出しできないはずですから」

「ならば、そっち(・・・)を重点的に強化するか」
「そうしてください。できれば南方面でも対立を煽りたかったのですけど」

「南は無理だな。オレの在庫じゃあ、あれをくぐり抜けられそうなのはいねえ」
「分かりました。では計画の見直しをします。できあがったらお知らせします」

「ああ……んじゃオレは魔国に戻る。あっちはまだ途中なんでな」
「了解しました。よい旅を」

 フストラはダイネンを見送った。

「なかなかどうして、ソールの町は強固ですね。だからこそ落とし甲斐もあるのですが、今回は時間もないことですし、止めておきましょう。それでも女王の運命は変わらないのですから」

 フストラは計画を練り直すために、大陸の地図を広げた。
 そして新たにいくつかを書き加えはじめた。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ