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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 捜索をはじめて二十日以上が経過した。
 成果はまだない。

 そして……。

『飽きた』

 シャラザードが限界を迎えつつあった。
 ここまでよく我慢したと思う。

 餌をちらつかせてその場しのぎも何回かあった。
 時にはロザーナさんまでフォローに回ってくれた。

 もっともシャラザードと会話できないので、僕がロザーナさんに頼んだだけだけど。

「もはや限界か……」
 次の切り札を切るときがきたようだ。

 どう効果的に切り出すか。
 それによって成功率が変わってくる。

 ――ザァー

「あら、雨ですね」
 雲行きが怪しかったが、とうとう降り出した。

 シャラザードは雲の上まで余裕で飛べる。
 だがその場合、曇りの日の捜索ができなくなる。

 それゆえ、捜索する高度を雲の下に定めているため、こうして雨が降ると大変なことになる。

「今日はもうお終いね」

 時刻は夕方。もともと曇り空で視界が悪かった。
 それに加えて雨が降り出してしまった。

「そうですね。風が出てきましたしたけれど、雲の上に避難します?」
「雨が降っているからそうしたいけど、上空の方が風が強そうよね」

 頭上ですごい勢いで雲が流れていた。
 この季節によくある吹き下ろし風だ。

 陸の上ならば恵みの雨となるが、海上では迷惑この上ない。
 シャラザードの場合、何日でも飛んでいられるので、雲の上に出てしまえばいいのだが、そうすると今度は地図上で、どこにいるのか分からなくなってしまう。

「これは一度帰った方がいいかな」
 吹き下ろし風は数日続く。

 波も高くなるし、雨の中で捜索はできない。
 いまから飛ばせば、明日の日中には海岸に着ける。
 本来は日中の帰還は禁止されているが、こんな大雨大風の中で船が出ているとは思えない。

 見つからずに拠点に帰れるだろう。
「シャラザード、帰還しよう」
 そう言う前に、シャラザードはぐんぐんと高度をあげて雲を突き抜けた。

『ぬおおおおおおっ……』

 よっぽどうっぷんが溜まっていたらしい。
 速度も今までとはまったく違う。

 全速力だ。
 先ほど飛んでいた速度と比較すると、倍以上出ているのではなかろうか。

 そんな状態ではるか上空を縦横無尽に飛んでいく。

「レオンくん、シャラザードさんはどうしちゃったんですか?」
「飽きて、キレたようですね。……もう好きにしましょう。地図はここまでで」

 どうせ帰るつもりだったので、今日の地図埋めは終了だ。
 今はシャラザードが落ち着くまで好きにさせよう。

 下は雲海。見上げると星空が輝いていた。

「綺麗ね。寒いけど」
「そうですね。これでシャラザードが落ち着いてくれたらどんなに良かったことか」

 すでに宙返りも何度かしている。
 荷物が心配だが、一応落下する様子はない。

『うがあああああ』

 シャラザードの様子から、相当溜め込んでいたことが分かる。
 分かるのだが、いまどこにいて、どっちに向かって飛んでいるんだ?

 眼下は雲。
 何度か宙返りしたので方角はまったく分からない。

 あれ? もしかして僕ら遭難した?
 帰る方向が分からなくなってしまった。

「これでは、朝日が昇るまで帰れないかしら」
 ロザーナさんも同じ事を考えていたようだ。

「そうですね。一応、星の動きから大まかな方角は分かりますけど」

 ただし、大幅にずれる。
 下手をすると技国あたりに到着することも考えられる。

 やはり、日が昇るのを待った方がいいか。

 下は嵐となっているので、シャラザードは一晩中雲の上を飛び回った。

 翌朝、日が昇る頃には眼下の雲もなくなっていた。
 つまり、吹き下ろし風の範囲外まで来てしまったことになる。

「シャラザード、どれだけ遠くに来たんだよ」
『さあて、我はよく分からん』

 だろうな。適当に飛んでいたし。

「帰り着くまで地図作りはできないな」

 朝日から方角は分かったので、もうこれで帰ることができる。
 ただし、海岸までの距離は分からない。

 闇雲に飛んでいたことで、いまどのあたりにいるのか本当に分からなくなっているのだ。

「唯一の救いは、北方に行っていないことだけね」
「なるほど。寒くないですね」

 ということは、思ったより南に移動しているかな。
 北に向かいつつ戻らないと、技国の南部を通過してしまう可能性が出てきた。

『主よ、あそこに島があるぞ』

「えっ!?」
「えっ、なに?」

 僕が眼をこらし、ロザーナさんが僕を見る。

「見えないぞ」
『行ってみるか?』

「お願い!」
『あい分かった』

 シャラザードが方向を北寄りに変え、しばらく進んでいく。
 するとたしかに島があった。

「レオンくん、これは」
「い、行ってみましょう」

 シャラザードに島に下りるように指示を出す。
 島の周囲をよく見る。島を取り囲むように海面が白い。

 近づいて分かった。あれは波飛沫(しぶき)だ。
 島の北東側に大きな火山があり、南側に向かってなだらかな斜面が続いている。

 植生は低木と高木が混じった雑木林のような部分が多い。
 そして草原と海岸……には、村落らしきものが見えた。

「シャラザード、家があるあたりに向かって!」
『承った!』

「いやまだ下りないで。とりあえず周囲を回って!」
『ん? どうしてだ?』

「攻撃してくる可能性がある。もし迎撃に竜が飛び立ってきたらお願い」
 人が槍や弓を持ち出してきたところで怖くない。

 だが、竜がいた場合、不用意に僕らが地上に降りると危険だ。
 しばらく空を巡回して様子を見よう。

 住人たちがシャラザードに気づいた。
 高度を下げて円を描くように回ること小一時間。

 飛竜どころか、走竜、地竜のたぐいも出てこないので、ようやく下りることにした。

 住人たちはシャラザードを遠巻きにして近づいてこない。
 ここは竜がいない島。
 シャラザードを見るのだって初めてだろう。

 怖がって近寄らないのも予想の範囲内。

 そのため、僕だげがゆっくりと彼らに近づいた。
 ロザーナさんをおいていったのは安全のため。

 僕だけならば敵対されてもいくらでも対処できる。

「こんにちは」

 ある程度まで近づいてから、友好的に話しかけた。
 するとひとりが前に出て……

「○×@□◎#!」

 何を言っているのか、分からなかった。


昨日旅行から帰ってきまして、倒れるように寝てしまいました。
今週いっぱいは大変慌ただしいですが、感想返信からはじめていきたいと思います。
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