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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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『なんとも退屈なものだな』

 捜索を開始して三回目。
 九日が経過したところで、シャラザードが飽きた。

 予感はしていたし、よく持った方だと思う。

「始める前に言っただろ? これは根気がいる作業だって」
 視界いっぱいに広がる海。

 見渡す限り、海。
 海以外になにもない世界だ。
 これで自由に飛び回れたらそれなりに暇もつぶせるのだろうが、それはできない。

 地図に漏れがあっては困るのだ。
 同じ高さと同じ速度で捜索してこそ、こうやって簡単に捜索範囲が出せる。

 つまり、いくらシャラザードが飽きてきても、思い通りにはさせられない。

『そろそろ月魔獣狩りをしたいぞ』
「言うと思ったよ」

『まあ、これはこれで面白かった。……よし帰ろう』
「待った!」

 ターンを始めようとするシャラザードに僕は最初の切り札を切らなくてはならなくなった。

「いいかい、シャラザード。これは大事な任務だ」
『分かっておる。だからこうして付き合ったではないか』

「大事な任務……つまりやり遂げれば褒美がもらえる」
『我は関係ないな』

「ところが大ありなんだ」
『……ふむ』

「褒美はなんと……月魔獣狩り放題」
『なんと!?』

「狩り放題だ。好きな場所へ行って、好きなだけ狩ることができるんだ」
『好きにしていいのか?』

 シャラザードの巨体がわなわなと震えている。

「いいぞ。ただし、条件がひとつだけある」
『なんだ?』

「褒美と言っただろ? 『潮の民』の向かった先を見つけてからだ。失敗したらなし。つまり、ここで放棄して戻ったら、今までの苦労がパーだ」
『パーか』

「パーだな。そして大事なのはその期間」
『期間? どういうことだ?』

「褒美で最大百日好きにしていいらしい」
『ふおおおおおおっ!』

「バ、バカッ、速度を下げろ。等速が乱れる」
『……す、すまん。我としたことが。少々興奮した』

 少々どころではなかったが、そこはスルーしよう。

「ところがな、早く見つかればいいが、そうでなければ……」
『なければ?』

「一日捜索が伸びるごとに、自由にできる日が一日減っていくんだ。今日は九日目だから、褒美の残りはあと九十一日となる」

『なんだと!? それは卑怯ではないか?』
「おまえがサボらせないための措置だな。真面目にやって早く見つければそれだけ伸びるんだ」

『ううむ……騙されてないか?』

「そんなことないさ。げんに地図はかなり埋まっている。この調子でいけばすぐに見つかるさ。そうなれば、狩り放題だ」

『狩り放題か?(ゴクり)』
「狩り放題だな。どうだやる気になってきたろ?」

『うむ。我はハナからやる気だぞ』

 このあとはおきまりの、さあやるぞ、行くぞ、見つけるぞとうるさかったので、黙らせた。

 なんにせよ、これでしばらくは持ちそうである。



「……しかし、すごい約束をしたものね」
 その日の夜。海の上。

 波間にシャラザードは漂い、すでに眠りに入っている。

 僕とロザーナさんはシャラザードの背中でそろそろ寝ようかという時間だ。

「飽きるのが分かっていたし、どうやって集中を続けさせようか悩んで、女王陛下に相談したんです」

 知恵を絞って、シャラザードに好きなことを約束させることに落ち着いた。
 これで駄目ならば、他には部下を持たせる案も残っている。

 飴ばかりでも駄目なので、言うことを聞かなかったら、狩り禁止などいくつか策を用意している。
 なるべく使いたくないが、しょうがない場合は遠慮なく使わせてもらうつもりだ。

「早く見つかるといいわね」
「そうですね。実際には船は遭難、沈没してどこへも到達できなかったということもあるんですけどね」

 そうなった場合、徒労となってしまう。
 どれだけ探しても見つからないのだから。

「でも、一度戻ってきたのでしょう?」
「そうなんですよね。ちゃんと記録に残っているので、『楽園』はあるはずなんですが、嘘という可能性も……」

 戻ってきたのは、家族を心配したからだ。
 つまり本当は『楽園』を探し当てないで逃げだし、それをごまかすために嘘をついて帰還したということも考えられる。

『楽園』自体が嘘だった場合、すべては帰還した者の作り話だったとしたら、僕らは何のためにここにいるのだろうか。

「でもそれはないわね」
 意外にもロザーナさんはそう言い切った。

「どうしてです?」
 この捜索に参加するにあたって、ロザーナさんは極秘裏にさまざまな情報を与えられている。

「だって、確証があったからこそ『魔探』が隠したのでしょう?」
 道理だった。
 五会頭のひとり『魔探』が一番『楽園』の情報に近づいていた。

 眉唾なままであれば、あれほど意味深な謎の残し方はしないだろう。

 そして信憑性はどうであれ、僕らのやることは変わりない。
『楽園』を見つけるか、この地図をすべて埋めるまでは、帰還できないのだ。

「明日も早いから、そろそろねましょうか」
「そうね。じゃ、レオンくんもここへ来て。一緒に寝ましょう」

「…………えっ?」
「こんな海の上じゃ、私、怖いの」

「えっ?」
「怖いの」

「じゃ、じゃあ、近くで」
「~~♪」

 こうして夜も更けていった。
 ちなみに、明け方近くまで僕は眠れなかった。

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