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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 通訳としてロザーナさんが同行することが決まった。
 ロザーナさんのことはよく知っている。

 長い捜索の旅路だが、これは幸先の良いスタートになったと思う。

「よしシャラザード、行くよ!」
『心得た!』

 アンさんやリンダを載せてシャラザードと移動したことは何度もあるが、ロザーナさんとは彼女の実家に戻ったとき以来だ。

「雲の上は気持ちいいわね」
 はやくもシャラザードの背に慣れている。流石だ。

 僕らは空の上を東へと進み、ポークニの町へ向かった。
 ポークニの町は、『潮の民』の情報をくれたクリスの出身地である。

 昼前にはポークニの町に着いた。
 雲の上を飛んでいたので分からなかったが、かなり速度が出ていたようだ。

 町の竜舎にシャラザードを預けようとしたら、意外にもシャラザードが嫌がった。

『主よ、我は海の上を一回りしたいのだが』

 シャラザードがそんなことを言うのは珍しい。

「僕らはしばらく町から出ないし、いいけど。でも、何するの?」
『なに、好きに飛び回ったあとは、海中深く潜ってみようと思う』

 竜って潜れたのか?

「いいけど、僕らが乗っているときには潜らないでね」
『もちろんだ、主よ』

 どうやら羽目をはずしたいらしい。
 僕が乗っているときや、荷物を積んでいるときに海に潜られた困る。

「じゃ、荷物は一度下ろすか」
『すまぬの』

 竜務員に頼んだら、荷物を下ろしてくれた。
『では行ってくるぞ』
 シャラザードは喜々として飛び立っていった。

「……レオンくん。なんか、行っちゃったけど?」
 そういえば、僕とシャラザードの会話は、ロザーナさんには理解できないのだった。

「シャラザードが海で遊びたいって言うんで、行かせたんだ」
「……はい?」

 ロザーナさんは呆気にとられて小さくなっていくシャラザードを目で追っている。
「海中に潜るっていうし、荷物は下ろしたんだけど」

「えっと……私の常識が間違っている? 竜って、そんなに自由だったかしら……」

 その認識で合っている。自由奔放なのはシャラザードだけだ。
 だがそれを言うと、僕がシャラザードを抑えられてないと思われるので、敢えて違う事を言う。

「僕らは僕らでやることがありますし、シャラザードは好きにさせようかと」
「そ、そうね……」

「じゃ、ロザーナさん。行きましょう」
「そ、そうね……竜って好きにさせる生き物なの?」
 ロザーナさんがブツブツと何か言っていた。


 僕らは馬車を使わず、歩いて町中を進む。
 王都に比べれば人が少なく、また浅黒い肌をした人が多かった。

「ここがその後輩くんが住んでいた町なのね。知っている人がいるのかしら」
「クリスは竜導教会の神官だから、あまり町中にはいなかったと思いますね……いや、いたかな」

 喜々として町民をカツアゲしてそうだ。そこまで酷くはないか。

「それでどこへ行けばいいの?」
「町の古老に話を聞きたいんです。引退した漁師なので、港のそばに住んでいるって聞いたけど」

「じゃ、港に行ってみましょう。私も海沿いの町で育ったけど、こことは随分と違うわ。ちょっと楽しみよ」
 なるほど。ロザーナさんの故郷は北方にあったせいか、もっと活気がなかった。

 しばらく歩くと視界が開けてきた。
 町並みが消え、目の前に真っ青な水面がどこまでも広がっていた。

「ちょっと臭うわね。私の町とは違うのね」
「潮のかおりってやつですね。僕はあまり嗅いだことのない臭いかな」

 海風とともに、鼻につく臭いがやってくる。
「あら、あそこ。なにか揉めているわ」

 僕も気づいていた。格好からすると、漁師と商人のケンカみたいだ。
「巻き込まれないうちに離れましょう」

 ロザーナさんの手を取って脇にそれようとしたら、その手が空振った。
「あれ?」

 思ったところにロザーナさんがいない。

「ちょっと、あなたたち。その手を離しなさい!」

「……あれ?」
 ロザーナさん、自分から関わりに行った?

「なんだおまえは」
「引っ込んでろ!」

 漁師たちの言い分は正しい。
 事情を知らないのに、ヘタに介入してもいいことはない。

「とにかくその手を離しなさい!」
 漁師のひとりを指して堂々と言った。ロザーナさん、強気だ。

 うん、これはあれだな。僕が穏便に収めて……。

「すっこんでろって言ってんだ!」

 ひとりがロザーナさんに手をあげようとしたので、僕はすかさず割って入って、その手をはたき落とした。
 小気味よい音が響き、男が手を押さえる。

 やっちまったと思ったときにはもう遅い。
 漁師のみなさんは戦闘態勢に入っていた。

「あちゃー」
 頭を抱えたくなった。町に着いたそうそうこれだ。

 今回は〈影〉の仕事ではないので、竜紋は隠していない。
 僕が竜操者だと気づけば、普通手を出さないものなんだけど。

 のんきにそんなことを考えている間に、漁師のみなさんは殴りかかってきた。
 ケンカっ早いことこの上ない。いや、クリスを見る限り、この町では普通のことなのか。

 さてどうしよう。〈影〉の指令中ならば膝を砕いてお終いにするのだけど、さすがにそれはできない。

 穏便に済ませるのは難しそうだ。

 前には屈強そうな漁師が三名。
 うしろにはろざーなさん。
 近くには商人……この人は戦闘はできなさそう。

 できるだけ穏便に……倒してしまおうか。

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