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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 学院が長期休みに突入した。八月いっぱいまでは休校だ。
 これは王立学校も同じである。

 この休みの間に、多くの者が故郷に帰る。
 僕が寮の一階におりていくと、いつにも増して人がいた。

 休みの初日だからだろう。帰郷する学院生たちが大きな荷物を抱えて佇んでいる。

 僕の準備はすでに整っている。
 といっても帰郷ではない。捜索だ。

 シャラザードとともに『潮の民』を探す旅が今日から始まる。
 女王陛下からの指令がくれば出発だ。

「招集がかかったわよ。すでに通訳が王宮で待っているわ」
 花屋のお姉さんが、花束を届けにきたついでに話してくれた。

 待ちに待った指令だ。
 だけど、花を持ってきた「ついで」でいいのだろうか。

 本来の目的を察知されなくていいのか。
 いやそれよりも聞き慣れない言葉があった。

「通訳? どういうことです?」
 通訳とは珍しい。
 四つの国では同じ言葉が使われている。

 地域的特性で、多少違う言葉を使う人たちもいて、一部の商人は通訳を連れ歩いていることもある。
 だが、なんで今回の捜索に通訳が必要なのだろう。

「私も分からないけど、そう言われたの。何でなのかしらね」
 お姉さんもよく分からないようだ。

「指令が出たんで向こうで聞いてみます」
「そうね。その方がいいわ。私は配達があるから」

 軽く手を振ってお姉さんは去っていった。僕も出かけることにする。
 シャラザードに乗って王宮に向かった。


 城の竜舎に降り立ち、やってきた竜務員に要件を告げる。
 すぐに荷物が運びこまれた。

「これ、載せるんですか?」
「そうです。常備用の食糧や着替えなどが入っています。他は拠点にいけばありますので。積み込んでいいですか?」

「そうですか、分かりました。大丈夫です」
 シャラザードは海に浮かぶので、数日間は海上を捜索できる。

 しかも飛竜の倍は速く飛べるため、一日の捜索範囲はかなり広がる。

 数日に一度は海岸に戻ってくるし、こんなにたくさんの荷物は要らなさそうなのだが、これも念のためなのだろう。

 シャラザードの巨体ならば、馬車一台分の荷物を積んでもまったく問題ない。
 海が穏やかならば、本当に海上で生活できるかもしれない。

 もっとも、シャラザードの食事をどうするのかという問題もあるが。

「いま通訳を呼んでおりますので、もう少々お待ち下さい」
 そういえば、通訳を用意したと言っていたっけ。

 ひとりの方が楽なんだけどな。なんで通訳なんだろう……まあ、いいか。

「おまたせ」

 やってきた通訳は……ロザーナさんだった。

「……なんで?」

「そのなんで(・・・)は、何に対しての疑問なのかな?」

 いたずらが成功したように笑うロザーナさんに、僕は息を吐いた。
 僕に知らせず、当日になって顔見せとは……きっと、女王陛下が企んで、ロザーナさんが乗ったに違いない。

「もちろんなぜ通訳が必要なのかってことと、それがロザーナさんなのかなと思って」

「そうよね。レオンくんが知りたいでしょうし、教えてあげましょうか」
 ロザーナさんが笑った。久しぶりに見る笑顔だ。

「あのね、『潮の民』は旧王都の出身なの。そして今にいたるまで記録が残っていない。つまり、今使われている公用語が通じない可能性があるのね」
「そういうことですか」

 公用語が使われていない可能性は考えてなかった。
「それがひとつ目の答えかな。もうひとつの答えは、私が古代語を扱えるからかしら?」

 疑問形になっているが、ロザーナさんは才媛で普通に古代語が使える。
 いまの公用語は古代語をかなり簡略化したものらしいので、古代語が使える事自体すごいのだ。

 そういえば、ロザーナさんは古代語の研究者になるって言っていた。
「もしかして、古代語の研究のために参加したんですか?」

「それだけじゃないのよ。レオンくんがいると聞いたからね。だったら参加しない手はないわ」
「ありがとうございます。僕もロザーナさんが協力してくれたのは嬉しいです」

「うふふ……それに私が住んでいた町には古代語の名残りが残っているので、いろんな意味で適任でしょ。女王陛下から話が来たときやったと思ったわ」

「そういえば、ロザーナさんの実家って北方方面でしたね」

 陰月の路近くで、竜紋限界から外れた場所。
 それゆえ、ロザーナさんは、町のために竜操者のパトロンにどうしてもなりたかったという背景がある。

「ということで、よろしくね、レオンくん」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 ロザーナさんがウインクしたけど……『潮の民』を見つけるまで最長で約一ヶ月間。ロザーナさんとふたり旅が決まった。

 これ、アンさんが知ったらむくれる(・・・・)んじゃなかろうか。

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