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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 リンダとはいつものレストランで会うことになった。
 すでに何度も利用しているので、中に入ると何も言わずに個室に案内された。

 ここは落ち着いたお店で、防音もしっかりしている。
 密談にはちょうどいい。

「お待たせ」
 リンダが遅れてやってきた。

「遅れるなんて珍しいね」
「新しい商売の運用も兼ねて、情報網の整備をね。その確認に時間がかかったのよ」

「……また変なことしてない?」
「失礼ね。……でもまあ、初めての試みだから、奇異に感じる人はいるかもね」

 リンダは情報伝達の遅さと不正確さをなんとかしたいとずっと言っていた。
 以前からああでもないこうでもないと試行錯誤中だったのだが、最近伸展があったようだ。

「結局どういう形にしたの?」
 最初にリンダから話を聞いたのはロザーナさんが卒業する直前だった気がする。
 あれから半年。

 リンダは何を思い、どう動いたのだろう。

「聞きたい? 聞きたいわよね。というわけで、説明してあげるわ」

 南方に商売を広げるにあたって、王都にいるリンダの元に届く情報は古くて不正確だったりする。
 それをどう克服したのだろうか。

「やっていることはちぎり紙(・・・・)の応用ね」
 ちぎり紙とは、商人が丁稚でっちなどを使いにやるとき、内容を忘れないように捨て紙にメモをしてちぎって渡したことが始まりとされている。

 投げ文とは違って、同じ商会内の連絡で使うため、隠語を使ったり、暗号化したりすることもある。

「今までと変わらないんじゃない?」

「それを制度化させた感じかしら。書式を統一してルートを共通化させることで複数の商会でも対応できるようにしたの」
「………………ん?」
 意味が分からない。

「つまりひとつの商会だけじゃなくて、ちぎり紙を運ぶ専用の人たちを組織したわけ。そうすることによって、少額の投資で素早く届けることが可能でしょ」
「それをリンダがやったの?」

「そうよ。どうがんばっても迅速に届けることを考えたら、ひとつの商会だけじゃ費用がかかってしょうがないもの」

 よくよく話を聞いてみると、加入した商会ならば少額で特定の町までちぎり紙を届けることができるらしい。

 普段僕らが使っている手紙と同じ程度の値段でできないか試行錯誤した結果、ある程度のめどが立ったという。

 値段も抑え、手紙よりも迅速に届く。
 ただし決められた町と町だけ。

 その条件下ならば運用可能であるという。


「ちぎり紙しか運ばないから、早いのよ」
「なるほど。手紙の場合は物資と同時だから荷物が揃うまでは出発しないし、荷馬車で運ぶから日数がかかるしね」

 馬車で五日の距離でも途中の町に寄っていくうちに日数がどんどん過ぎていってしまう。
 各町に荷馬車が荷をおろして商売してまた別の荷を積んで出発する。
 そんなことを続けていくと、十日、十五日かかってもおかしくない。

 そもそも緊急の用事があるならば、人を雇って届ければいいのだから、文句は言えない。

 リンダの発案は、その中間といったところだろうか。

「最初は一日一便だけど、参加する商会が増えたら二便に増やしてもいいし。その辺は運用しだいかしら」

 王都と結ぶ町はまだ少なく、魔国との境にあるウルスの町、僕の出身地であるソールの町、港町として栄えているアクリの町だけだ。

 今後は技国との交流を考えてダネイやチュリスの町も視野に入れているという。

「なるほど。町を絞ればその分経費も抑えられるわけね」
「封をして表に決まった書式を書くようにすれば間違えないし、いい案だと思うのよ。というわけでいま、試用期間中なわけ」

 リンダも着々と前に進んでいるようだ。
「頑張るね。応援するよ」

「もう少ししたら成果を報告できると思うわ。……それで今日は何の用事?」
「ああ、そうだったね」

 今日は僕がリンダを呼び出したのだ。
 しかも内密に話したいと言ったら、ここを指定された。

「最近竜国はいろいろときな臭いし、いい話じゃないのかなと思うんだけど」
「うーん、そうだね。いい話じゃ……ないかも」

「気になるわね。とっとと話しなさい」
 リンダが顔を近づけてきた。

「分かったよ。時間もないし、話すことは多いんだ。だから簡潔に話すけど……その前に」
「なあに?」

「今からいうことは他言無用だよ。絶対に」
「分かったわ。わたしも商人ですもの。言っていい話とそうでないものの区別は付くわよ。……で、話って?」

「分かっているならいいんだ。じゃ、話すね」
 僕は息をひとつ吐き出してから、語り始めた。 


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