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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 月魔獣と戦うために開発した魔道は、一応の成果が見込めた……ような気がする。
 対人には向かない。威力と隙が大きすぎるのだ。

「しかしレオンは、去年もそうだけど、よく月魔獣に当たるな。好かれているんじゃないか?」
 アークの言葉に苦笑せざるを得ない。

 好かれていることはないだろうが、運が悪い……いや、事前に発見できて運がいいのか。
 どちらにしろ、縁があるようだ。

 シャラザードにとっては喜ばしいことだろう。

「だったら毎日、僕が歩哨に立ってもいいぞ」
「やめてくれ。毎晩襲撃を受けたら、寝られなくなる」

 アークが心底嫌そうに言うので、笑ってしまった。

 僕とアークが軽口を叩いているが、一回生たちの表情は硬い。
 どうも夜間の襲撃で、精神的な余裕がなくなってしまったようだ。

「昨年のおれたちもあんな感じだったな」

 アークがしみじみ言うので頷いておいたら、「レオンは違ったけど」とハシゴを外された。
 一回生の中で僕だけ余裕な表情をしていたので、去年は密かに注目されていたらしい。今知った。

 そういえば、変な視線を感じたなと思い出したが、あれがそうだったらしい。



 演習の二日目は、陰月の路の北側へ向かう。
 月魔獣が出るかもしれない中を突っ切るのだが、昨年の記憶を辿れば、この往復で月魔獣と遭遇したのは一回だけだった。

 どちらかと言えば、陰月の路に沿って移動するほうが危険度が高い。

「そんなに気をはらなくて大丈夫だよ」
 休憩時間に、固まって青い顔をしている一回生たちにそう言った。

 返ってくる笑顔がぎこちない。

「昨日、月魔獣を初めて見て……自信がなくなりました」
 そう言ったのはまだ少女といっていい年齢の一回生だ。十五歳になったかどうかだろう。

 気の弱そうな外見をしている。
 今朝、月魔獣を見て青い顔をしていたのを覚えている。

 同級生たちが「飛行型だからまだ小さい方だから良かったよな」と話している輪の中から一人離れていったので覚えていた。

「僕ら二回生はすでに何度か月魔獣を狩りに来ているけど、最初はみんなそんなもんだと思うよ。だから、必要以上に気にしなくても慣れるまで待てばいいんじゃないかな」

 実際、最後まで慣れない学院生もいるらしいし。
 その場合、軍属になってもいいことはないので、伝令要員として竜国中を走り回ることになる。

 危険はないが体力的に辛い仕事らしい。
「慣れる……大丈夫でしょうか」
「今年は見学だけだし、じっくり見ておくといいね。年が明けて、自分の竜を得てからでも遅くないよ」

 否が応でも竜はやってくる。
 拒否できないのだから、気持ちを前向きにした方がいい。

 結局このあとは、陰月の路を移動しつつ月魔獣を見つけて狩るという生活が続いた。
 僕はというと、シャラザードがさすがに我慢できなくなってきたらしく、荒れてきたので単独行動を許してもらった。

 一回生が言うには、荒ぶるシャラザードは月魔獣より怖いらしい。
 ちなみにシャラザードが狩る姿を他の二回生が見ると自信を無くしそうなので、遠くまで狩りにいっている。

 そして遠征の半分が過ぎた。

「ようやく宿泊施設に入れる」
 アークが伸びをする。
 いまは本日最後の休憩中である。
 このあと移動して、目的地に着けば今日はお終いとなる。

「ようやくベッドで寝ることができるね」
 僕の場合、鍛えてあるので体力はまだ余裕があるが、他の学院生たちはそろそろ限界が来ていた。

 ここからは宿泊施設で五日間過ごす。
 夜にベッドで寝られるだけ嬉しいのだろう。みなの顔に笑顔が戻ってきた。

 今年使用する宿泊施設は、かなり大きなものだった。
 昨年の反省を踏まえて、砦化されたところが選ばれたようだ。

 ここは僕らが学院を卒業した後でも、よく使う施設となる。
 ここから月魔獣を捜索して、発見次第処理するための前線基地。

 ほどほど陰月の路から離れていて、安全度が高い。
 説明を聞いて、疲れが顔に出ている一回生たちもホッとした表情をしている。

 宿泊施設に到着して竜の世話をしようかとブラブラしていると、見知った少女が近づいてきた。

「レオン先輩、お疲れ様です」
 アンネラは元気いっぱいだった。

「そういえば、商会で移動や月魔獣は慣れているんだっけか」
「さすがに月魔獣には慣れてはいませんけど、商会を維持するためには危険な道も通ります」
 アンネラは苦笑している。そういえばそうか。

 普通の人が避けて通る陰月の路近くを通行することで、いろんなアドバンテージを持てる。
 ただし、月魔獣に出会った場合は荷物を捨てて逃げるしかないので、効率的かどうかは分からないが。

「明日からは編隊訓練しながらの移動になるね。ようやくチームプレイらしきものが見られるよ」
「わあ、楽しみです」

 拐われた仲間も開放されて今は無事でいる。
 そのことでアンネラの心にも余裕が出ているようだ。

 しかし、竜を得ていない身で、危険な演習を楽しみと言える根性はすごいな。
 まあ、一回生を連れて月魔獣を見学させる演習だ。来年は狩る立場なのだから、今年くらい物見遊山気分でもいいだろう。

 本当に危険なときは、現役の竜操者も出てくる。
 真に危険なことは起きない。この演習は安全だ。

 その時まで僕は、本当にそう思っていた。


 だが僕は……僕だけが知っている情報をもっとよく理解しておけば良かったと後になって思った。


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