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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 翌日、僕らは陰月の路に向かって出発した。
 隊列を組んで進むのだが、竜によって足の速い遅いがある。

『退屈だな』

 出発してすぐにシャラザードがそんなことを言い始めた。
 いつもの三分の一以下の速度だから仕方ない。

「頼むから、団体行動を乱さないでくれよ」

「どうしました?」

 僕の後ろに乗っているレゴンが不思議そうに訪ねてくる。
「シャラザードがもっと速く飛びたがっているんだ。……まったくこいつは、周りに合わせようとしないんだから」

「そうなのですが。……自分はこれでもかなり速いなと思っているんですけど」
「普通でももっと速いかな。この三倍くらい。全速力だと同乗者が気絶するくらいは出すんだよ」
「それは……」

 気絶したくなかったのか、レゴンはそれ以降無言だった。

 午後には目的地周辺に到着した。
 長期演習にはいくつかの目標が設定されていて、たとえば他人を乗せたまま長距離移動できるのか、隊列を維持できるかなどが判断される。

「レオン竜操者は減点だな」
 昨年も参加した壮年の竜操者にそんなことを言われた。

 はじめはおとなしくしていたシャラザードだったが、あまりの遅さに耐え切れず、勝手に列を離れて曲芸飛行をはじめてしまった。

 こういう場合、好きにさせておいた方が後々いいので、僕はとくに何も言わなかった。
 他の竜と離れて行動しなければいいと思っていたが、それだけでは駄目らしい。

 シャラザードはどうもこういうときの堪え性がない。
 僕も無意味な行軍に意味を見出さなかったので強く言わなかったのだが、行きの途中で減点されるとは誤算だった。

 僕の認識不足もあったので、大人しく減点を受け入れる。
 あとは、どうシャラザードに言い聞かせるかだ。

『主よ、向こうに月魔獣がいるぞ』
「相変わらず目がいいな。教官に伝えてくるよ」

『そんな面倒なことをせずとも、我らならすぐだぞ?』
「演習だからね。それにシャラザードはいつも狩ってるじゃないか。ここは譲ってやろうよ」

『ふーむ……主がそういうのならば、仕方がないな』
「どうしました?」

「シャラザードが月魔獣を見つけたらしいので、教官に話してくる」
「いるのですか?」
 レゴンは驚いている。

「たぶんかなり遠くだね。シャラザードは目がいいんだ」
「………………」

 教官にその話をすると、案の定、みなで狩りに行くことになった。
 シャラザードは不満に思っているかもしれないが、何も言わない。

 シャラザードが示した方角に四体の月魔獣が固まっていた。
「昨晩落ちてきたのかな」

 昨日の夜、エイダノとカイダが垂直に交差した。
 あの時、かなりの降下があったと思われる。

「集団戦行くぞ。第一隊から第三隊まで準備!」
「「はいっ!」」

「第一隊は一番左のを狙え。第三隊は右だ」

 四体のうちの半分を二回生だけで倒すらしい。
 小型竜六体で月魔獣一体を囲む。

 残りの月魔獣は同行している本職が相手をするようだ。

 戦闘が開始され、みなが見守る中、月魔獣に少しずつダメージを与えていく。

『時間がかかるようだが』
「まあね。でも、もうすぐ終わるんじゃないかな」

 最初の一体が倒れるまでが長かった。
 それ以降は危なっかしいところもなく、最終的にはすべての月魔獣が撃破された。

 みなが歓声をあげて勝利を祝う中、僕だけが別の気持ちに支配されていた。
 大転移が来たら、ここにいる同級生たちのどれだけが生き残れるのかと。

『危なっかしいな、主よ。それに時間がかかり過ぎる』
「安全に倒すことが第一だからね。時間はしょうがないよ」

『複数の月魔獣が現れた場合、どうするのだ?』
「倒せそうならば切り離して一体ずつ相手にする感じかな。無理ならば応援を呼びにいく」

『ふむ……まあ、ここにはここのやり方があるしな』
 達観したようにシャラザードがつぶやく。

 以前シャラザードが聞いたことがあるが、元いた世界では竜操者の技量が高かったらしく、小型竜一体で月魔獣を一体相手にしていたらしい。

 竜操者の身体能力が優れていたのか、人と竜の結びつきが強かったのか分からない。
 少なくとも小型竜には、月魔獣と互角にやり合えるポテンシャルがあるらしい。

 シャラザードからすれば、歯がゆいのだろうが、竜の数が少ないのだから冒険もできない。
 多少効率が悪くても、無理をさせるわけにはいかないと思う。

「その分、シャラザードには頑張ってもらわないとな」
『もちろんだ、主よ。我に任せておけば、地上の月魔獣はすべて殲滅してくれようぞ』
「期待しているよ」

 そう返した僕もまた、シャラザードの力を完全に引き出せているとは思えない。
 戦いはいつもシャラザード任せなのだから。

 近いうちにやってくる大転移に備えて、僕も成長できる機会を逃してはならない。

『だがそのうち、嫌でも戦う必要がでてくるのであろうな』
 僕の心を代弁したかのように、シャラザードがぽつりと言った。


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