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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 ここまできたら、もう洗いざらい話してしまいたい。
 というわけで、僕が魔道を使うこともすべて話してしまった。

 話したのは、「影に潜れること」くらいだが。

 アンさんの興味は、僕が魔道使いであることではなく、どうしてそうなったかの方が強かった。

「父も魔道使いです。祖父もそうだと聞いています。もともと父は魔国出身でしたので、向こうで代々魔道使いの家系だったようです」

「たしかに、魔道使いの血は遺伝するといいますけど……」
 先祖に魔道使いがいればいるほどと、その子孫が魔道使いになる確率があがる。

 それゆえ、魔国にはいまも古い時代から延々と血を守ってきた一族が存在している。

「ちなみに母は竜国人ですし、姉は魔道使いでもありません。一般人です」

「そうだったのですか。もともとレオンくんの実家は魔国出身だったのですね。いろいろ納得です。では、あちらに親族がおられるのですか?」

「どうなんでしょう。祖父とは断絶状態みたいですけど……これで話せるのは以上だと思います」

「分かりました。……本当に驚きです」
「やはりそうですよね」

「でも話してもらえて嬉しいです。わたくしも家の都合で本名はずっと名乗れませんでしたので、おあいこでしょうか」

 アンさんも苦労したのだと思う。
 おあいこかどうか分からないけど、これで僕らの間に秘密はなくなった。

 それでふと思い出した。

「そういえば、幼なじみのリンダですけど。彼女は今の話を知らないんです」
「そうなのですか?」

「僕が魔道を使えるようになったのは、リンダが王都に引っ越した後でしたし、〈影〉として活動を始めたのもここ数年のことですから」

「そうだったのですね。……わたくしは思うのですけど、早い時期にリンダさんに話しておいた方がよいかと思います。なにしろ、わたくしたちは、運命共同体なのですから」

 なるほど。たしかにそうかも知れない。

「そうですね。頃合いを見て、話そうと思います」
「はい」

 こうしてアンさんとの話し合いは終わった。

「それでアンさんが狙われた件ですけど、一度女王陛下に相談した方がいいと思うんです」
「そう思いますか?」

「軍事式典があったから狙われたのか、もともと狙われていて、たまたま軍事式典に出席したために、あそこで狙われたのか分からないですので」

「なるほど。王都でも狙われる可能性があるとレオンくんは考えるのですね」
「ええ。城の中は安全でしょうけれども」

 僕はアンさんと相談して、女王陛下に今後のお伺いをたてることにした。

 すると、念のためアンさんは王城に宿泊し、王立学校へ秘密裏に調査隊を派遣して不審な人物が出入りした跡がないか調査することになった。

 ウルスの町で捕らえた暗殺者たちから情報が得られれば、また状況は変わるが、今はまだ一番安全な王城内にいるのが望ましいという結論に落ち着いた。

 僕もその方が安心できる。

               ○

 レオンとアンネロッタが王都に戻った翌日。
 一日遅れで、護衛の者たちが戻ってきた。

「ごくろうさま」
 報告に赴いた〈影〉にサヴァーヌ女王はねぎらいの言葉をかける。

「それで首尾はどうだったのかしら」
「パーティでの暗殺事件については、いまだ詳細は分かっておりません。ウルスの町で引き続き尋問が続けられるそうです」

「そう。だったらいいわ。それと内調の方はどうだったの?」
「両人の結婚の話を知っている者はだれもいませんでした」

「あら意外ね。城内にだれも放ってないのかしら」
「竜の速度に追いつけないということはないでしょうか」

「情報を商人が馬車で伝えるの? そんな時間のかかる不確かな手段は採らないわよ」
「見たところ、知らないふり(・・)をしている可能性は低いように思われました」

〈影〉の報告に女王は考え込む。

「魔国の動きは何か分かった?」
「多数の高官が来ておりました。例年にない規模です」

「そう。大規模な軍事式典を開いたのは四年ぶりかしらね。でも四年前はそんなことなかったはず。参加者の顔ぶれは?」

「多くは高級官僚でした。軍人の姿はありません」
「そっちはパレードの方に興味があるのでしょう。式典にいないからといって、来ていないとは限らないわけだしね」

 その言葉に〈影〉は深く頷く。

「それと、ひとつ気になったことがございます」
「何かしら」

「ウルスの町の外壁ですが、かなり強化されておりました」

「あの町の防衛強化は優先課題だったはず。ようやく実行に移したのでしょう」
「そうかも知れません」

「そういえば、パレードの最中に大型の月魔獣が出たようだけど、反応はどうだったのかしら」
「竜操者が七名亡くなりました。後のパーティでは、参加者の多くが大転移との可能性について話しておりました」

「当然よね」
「それ以外に目立った話は……パーティの途中で暗殺騒ぎがありましたので、そのせいで他に話題が出なかったようです」

「運がいいやら悪いやら。他には?」
「報告は以上になります」

「ありがとう。下がっていいわ」
「はっ」

〈影〉の気配が遠ざかっていく。

 女王は頬に手を当て小首を傾げる。

「城内にいるのは確実なのだけど、はて、どこの間者なのかしら。少し探らせましょう」
 もちろん今のは独り言なので、周囲に控えた〈左手〉の面々はなにも答えない。

 あとでそのことを聞いた〈左手〉筆頭のヒフは、女王陛下のつぶやきに恐れおののいたという。

 竜国は密かに蠢き始めた。

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