挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

291/657

291

 今回、シャラザードが採った戦法をちゃんと説明できないといけない。
 あれはシャラザードが考えだしたものではなく、僕の意思で行わせたものだと思わせないとならないからだ。

 ではどう説明するのか。
 僕は町へ戻る前に、ちゃんとシャラザードに聞いておいた。

「月魔獣の大型種は通常よりも厚い装甲があります。小型竜だけならば、一点突破で少しずつ外皮を削る攻撃が最善だからです」

「ふむ。もう少し詳しく説明してくれるかな」

「通常の月魔獣でも、中途半端な外皮への攻撃は、厚い岩のような肌に阻まれます」
「そうだね」

「大型種は通常の月魔獣より、その外皮が厚く、小型竜の攻撃は一切受け付けないのです。多少表面を削ることができるくらいでしょうか」

 そうシャラザードが言っていた。
 以前僕も月魔獣と一対一で戦ったことがある。

 あのとき、僕の最大攻撃『闇鉤爪やみがづめ』でも、傷を与えるのがやっとだった。
 もし僕がひとりで月魔獣を倒すならば、一撃の威力を上げるか、同じ箇所に何度も何度も攻撃を叩き込める必要がでてくる。

 大型種の月魔獣と小型竜の戦いはまさにそれだ。
 強力な一撃が望めないゆえに、同じ箇所を何度も攻撃する必要があった。

 それがあの連続攻撃なのだ。

「面白い考えだね。大型種はまだ出たばかりだ。複数の中型竜と相打ち……私はそう聞いている。だがどうだ。小型竜でも倒すことができた。新しい発見だと思うが、どうかね」

「同じ事をしようと思えば、熟練の技術を持った竜操者が大勢必要でしょう。長い訓練をしなければ身につかないと思います」
 僕の主張にリトワーン卿は考え込んでしまった。

「すべての町の領主に、巨大な月魔獣の情報と警戒の呼びかけが行われたのはつい最近だ。寝耳に水の出来事で、私ども領主は大慌てで対策を立てる必要に迫られた。なにしろ、巨大な月魔獣がその一体だけだとは思えないからね」

 ウルスの町はまだいい。
 倒せる戦力があるのだから。
 他の町では、巡回する竜操者たちだけが頼みになってくる。

 通常戦力では太刀打ちできないので、今までの戦略の見直しを進めているところらしい。

「あの戦法は今回はじめて使ったので、他でも有効かは分かりません。今回だって確実に倒せる自信があったわけではないのです」

「なるほど。それはそうだろうね」
 過剰に期待されても困る。

 それでもかなり気にかかるらしく、細かい運用ふくめて、リトワーン卿はいろいろと質問してきた。
 僕も答えられる範囲で協力し、同時にウルスの町の戦力から対策できそうなことを教えることにした。

 もちろんすべてシャラザードの受け売りなのだが。



 リトワーン卿とずいぶん長い話をしてしまった。
 夢中になって話をしていると、秘書がやってきて、リトワーン卿にそっと耳打ちをした。

「レオン操者。どうやらもうパーティが始まっているらしい。ずいぶんと時間を取らせてしまったね。貴重な話をありがとう」

「いえ、お役に立てられたら幸いです」

「十分役に立ったよ。このあと、ぜひパーティを楽しんでいってくれ。私もあとでいく」
「はい」

 パーティと聞いてお腹が空いた。
 なかりの時間が経ってしまったようだ。

 僕は退出することにした。

              ○

 レオンが出て行ったあとの執務室。

「領主様、パーティの前に酒を嗜まれるのはいかがなものかと」
 リトワーンは、棚から酒の瓶を出したところで、秘書に止められた。

「固いこと言わないでくれ。飲まないとやってられないだろ」
「先ほどの話ですか?」

「そうだね。彼は自分の竜を通してすべての竜を操れる。これはどう見る?」
「それができたら、竜国は大混乱になりますね」

「彼の資質が善か悪か、竜国寄りか、他国寄りか。英雄願望があるのかないのかで行動が違ってくる。それに振り回されるのは、竜国の最強戦力である竜たちだ」

「竜迎えの儀での噂が真実だったというわけですね」
「最悪の形でね。彼の存在は不確定要素だね。いっそのこと排除したいくらいだよ」

「女王陛下に睨まれますよ」
「構わないよ。それで不安要素が消えるならば」

「それでもです。技国からも恨まれます」
「なるほど。そっちの方は考えてなかったな」

「なんにせよ、彼はまだ学生です。いかようにもなるかと」

「うーん、どうだろうね。しっかりとした考えを持っていると思うよ。それに彼、気づいた?」
「はい? 何がでしょうか」

「外見通りの人物じゃないかもしれない」
「……?」

「アンネロッタ嬢にそれとなく聞いたのだけど、彼女は竜国……いや、レオン操者の元へ婿入りする感じになるらしい」

「本当ですか? というよりも身分とか、大丈夫なんでしょうか」

「不思議だよね。だけどアンネロッタ嬢の口ぶりからすると、そう取れる。それと不思議なのは、竜操者の扱いに人一倍敏感な王族がそれを許していることだね。裏切って技国に流れたりしない確約があるのだろうか」

「……なるほど。技国で王族扱いされると分かれば、心は揺らぎますね」

「それを微塵も疑わないなんてありえる? 僕が王なら、あんな危険な竜を持っている彼を他国の重鎮なんかと結婚させないよ」

「たしかにおかしいですね」

「そういうわけで、彼にはなにかある。そう思うんだよね」
「調べましょうか?」

「そうだね。おそらく商国も動いているはずだから、そっちから調べた内容を買い取ってみたらいいんじゃないかな。予算は青天井で」

「か、かしこまりました。そのように致します」
 秘書が一礼して去っていった。

「彼が私の計画の邪魔になるのかそれとも……」

 リトワーンはだれもいない室内で、そうつぶやいた。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ