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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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 ここ数日、僕の生活に平穏が戻ってきた。
 朝起きてパン屋のアルバイトに行く。

 その後、学院の授業を受ける。
 シャラザードに請われて月魔獣狩りをすることもある。

 演習は相変わらず『ぼっち』だが、もう慣れた。
 中型竜が小型竜と集団行動して危ない場面を何度か見ているので、しょうがないのだと思う。

 そして僕はいま、みんなと別かれてひとり、寮に戻ってきた。
「……どうしたんだ?」
 購買部の前を通ると、義兄さんが声をかけてきた。

「軍事式典参加の調整があって、今から王城へ行くんだ」
 訓練着では失礼にあたるというので、着替えに戻ったのだ。

「ウルスの町のあれか。出発はいつだ?」
「式典は十日後だけど、王都を出るのは五日後だね」

 シャラザードだけならば一日で飛んでしまうが、女王陛下の『狙い』で、僕はアンさんを乗せていかなければならない。

 そしてアンさんには護衛が必要……これは王女殿下の時と同じで、往復の際、飛竜で編隊を組まなければならないのだ。

「途中で一泊するのか」
 義兄さんは察してくれた。

「そういうわけだから、行ってくるよ」

 今日は編隊を組む竜操者と顔合わせだ。
 その後は、式典で受け持ちの説明が待っているらしい。パレードだな。

 僕は義兄さんに見送られて部屋に戻った。
 黒衣は……持って行かなくていいよな。



 竜操者たちとの顔合わせは順調に済んだ……わけではない。
 道中をともにする竜操者はアンさん専用の人たちだった。

 これまで固定されたメンバーだったらしい。
 たしかに顔ぶれがコロコロ変わると、警備上やりにくいのだろう。

「……で、僕の顔に何かついているのかな?」

 先ほどから、射殺さんばかりに僕を見つめる一人の竜操者がいる。
 名前はデスレ・ロディス。歳は二十三歳というから、僕より六つ上だ。

「納得いかない」
 デスレの押し殺したような声が紡ぎ出された。どこから音を出しているのだろう。

「納得いかないって言われてもねえ……」
 息を吐く。こればっかりは、どうしようもない。

「おい、デスレ操者。相手はソウラン操者を叩きのめした奴だぞ。突っかかるのも程々にしとけ」

 飛竜編隊の隊長、ドージン・ハイアスが間に割って入るが、デスレは引き下がろうとしない。
 目はいまだ、僕に狙いを定めたままだ。

「ふー、やれやれ」
 僕は嘆息した。

「……まったく、これが逆恨みってやつか」
「んだと!?」

「おい、デスレ! 止めんか!」
 ドージン隊長の静止も間に合わず、デスレは僕に殴りかかった。



 事のおこりはこうである。

 王城に着くとすぐに、僕はドージン隊長率いる飛竜編隊を紹介された。
 アンさんを守って飛ぶ六名の竜操者だ。

 デスレだけが中型竜で、他は小型竜。
 その関係で、アンさんは普段、デスレの竜に乗って移動しているらしい。

 と言っても、ここ一、二ヶ月のことだが。

 アンさんは性格がいい。やさしくて、気配りもできる。
 気品があり、所作は洗練されている。

 分け隔てなく接するため、アンさんのファンがたくさん王城内にできていた。

 僕は知らなかったが、僕とアンさんがそのうち結婚するという話が王城中を駆け巡っていた。女王陛下のたくらみ通りである。

 もちろんドージン隊長も、デスレ操者もすでに知っている。

 そして、ここが重要なことだが、デスレ操者はアンさんに心酔していた。
 それはもう、崇めるほどに。

 初対面のときから、「納得いかない」、「相応しくない」などと言ってきたので、僕は相手にしなかった。

 飛竜編隊の編成だが、王女殿下を運んだときと同じように、僕が先頭を飛ぶ。
 アンさんを乗せるのもデスレから僕に変更。

 ドージン隊長からその発表がなされて以降、デスレの機嫌がそれはもう悪くなった。

 練習飛行をしたときに、デスレだけわざと隊列を乱す飛行をしたので、列に戻るようシャラザードに命じた。

 もちろんデスレの飛竜はそれに従う。
 それも不満だったらしく、地上で僕に突っかかること、突っかかること。

 さすがに辟易して、デスレ操者の近くに寄らなかったが、これまた運悪く王女殿下がやってきた。

 シャラザードが目立つから、王宮のどこかでで見かけたのだろう。

 僕と王女殿下が親しげに話し、アンさんとの結婚話で散々僕をからかったあと、帰っていった。
 デスレの殺気は隠すつもりがないくらいまで膨れあがっていた。

 アンさんのいる決定的な場面で暴発されても困るので、僕は対処することにした。

「……で、僕の顔になにかついているのかな?」

 あとはお決まりである。
 殴りかかってきたので躱し、足を引っかけて転ばす。

 膝を砕こうとしたところで、ドージン隊長の止めが入った。
 ここでお終いらしい。

 少し冷静になれればよし。
 駄目ならば、どこかでもう一度……と少々過激な事を考えていたら。

「決闘だ! 決闘を申し込む!」
 デスレの方がもっと過激だった。

「おい、デスレ操者。決闘とは穏やかじゃないぞ」
 決闘は正式な立会人をつけて行う、大がかりなものだ。

「いいや、俺は決闘を申し込む!」
 翻すつもりはないらしい。

「デスレ操者はああ言っているが、レオン操者はどうするね?」
 できれば辞退して欲しい。そんな雰囲気が見て取れる。

 だけど、ここで引いても事態は好転しない。というわけで。
「やりますよ。そのかわりできるだけ早い方がいいですね」

 ドーラン隊長は、なんとも情けない顔をした。

「……分かった。上へ掛け合っておこう。決闘内容についての希望はあるかね」

「では素手で」
「本気か?」
「……ええ。なにか問題でも?」

「いや」
 ドージン隊長は僕とデスレを交互に見た。

 デスレ操者は筋骨隆々。ここにいる竜操者のだれよりも大きな身体をしていた。

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