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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第4章 竜国政争編

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第4章 竜国政争編になります。

はじまりは『日常』のヒトコマから。。。
 商国の五会頭のひとり、スルヌフが死んだ。
 騎竜である中型の飛竜とともに雷に打たれ、そのまま海中に没した。

 公式には行方不明となっている。
 竜国の非難を受けて、商国がそう発表した。

 火事のあった夜である。
 あの日、王都を飛び立った中型飛竜の姿は、多くの人が目撃していた。

 夜間飛行で現在位置を見失い、遭難したと思われている。

「かなりの人が外に出ていたから、僕も危なかったな」

 飛竜を追いかけるようにしてシャラザードで飛び立ったが、それを目撃した者はいない。

 闇夜の黒竜は視認できなかったようだ。
 目撃者がいれば、行方不明との関連性を疑われることになったので、よかったと思う。

 なんにせよ、竜国はひとまずの落ち着きをみせた。
 もちろん、水面下では商国に対して圧力をかけている。
 草の根的な活動で、いまも商国商会は肩身の狭い思いをしている。

 僕はというと、授業の遅れを取り戻しつつ、『ふわふわブロワール』でアルバイトをして過ごしている。

 僕にも平穏が戻ってきた……そう思っていたところ、思いがけない情報が僕の耳に飛び込んできた。

「新しいパンですか?」
 ロブさんの作るパンをひいきにしている、とあるお客さんのひと言。

 それが僕の興味を引いた。すごく引いた。引きまくった。

「そうなんだ。そこでしか食べられない希少なパンでね。ダニエの町へ行くのがいつも楽しみなんだ」

「ダニエの町ですか……たしかクロウセルトの衛星都市のひとつでしたよね」

「よく知っているね。北方の中でも辺鄙すぎて、なかなか知っている人が少ない町なんだけどね」

 商人はそう言うが、学院の授業で地理は習っている。
 竜操者にとって、町の名前と場所を覚えるのは必須事項なのだ。

 とくに陰月の路から近い町は重要度が高い。
 そのことを告げるわけにもいかないので、僕は曖昧に笑って済ませた。

「そこに行けば、新しいパンを食べられるんですか?」
「もちろんだよ。けど、ここからだと陰月の路を通過するから、行くのは厳しいんだけどね」

 この商人はダニエの町出身らしい。
 年に数回、地元に商品を届けているという。
 最近、その町のパン屋が新しいパンを開発したらしい。

 まだ他の町にはそれほど知り渡っておらず、知っている人は少ないという。

「どんなパンか教えてください!」
 食いついた僕に、商人はニヤリと笑った。

「実際に食べないことには、うまく伝わらないな。それに故郷のパン屋が開発したものをね、王都で軽々しく口にしていいものなのか」
 情報は力。そう思ったわけではなかろうが、商人は思わせぶりなことだけ告げて、去っていった。



「……というわけで後学のため、明日さっそく行ってこようと思います」

 明日と明後日は、学院の授業も休み。
 一日中アルバイトができると喜んでいたが、新しいパンの噂を聞いてしまったからには、じっとしていられない。

 まだ見ぬ新しいパン。
 その正体をぜひ確かめてみたい。

「分かった。それも勉強のひとつだしな。竜操者だし、シャラザードっていうあんなすげー竜を従えているのに、パンの勉強がなんで必要なのか分からねえが、行きたいってんなら、行ってこい」

「ありがとうございます」
「しかしダニエの町ったら、遠いぞ」

「シャラザードなら朝出発しても、午後には着きますので余裕です」
「そ、そうか……速いんだな」

「ええ。余裕をみて一泊してきますけど、往復だけなら一日でできます」
「………………」

 ロブさんの許可はもらった。
 あとは寮に外泊許可を得ればいい。
 浮かれた気分で帰ろうとしたところ。

「ねえ、レオンお兄ちゃん。わたしも行っちゃだめかな?」
 普段おとなしいクシーノが僕のすそを握った。

「クシーノも行きたいの?」
「うん。シャラザードにも乗りたい」

 なるほど。王都の民ならば竜に乗りたがるのも分かる。
 ただしシャラザードというのは、いささか変わっているが。

「そういえばクシーノはシャラザードを怖がらなかったね。お父さんがいいって言ったら一緒に行けるよ」

「……ってレオンお兄ちゃんが言っているけど、いいかなぁ?」

 上目遣いでロブさんを見るクシーノ。
 ちょっとあざといが、効果は抜群だ。

「ま、まあ……勉強になるし」
 娘に甘い父親がそこにいた。

「レオンお兄ちゃん、いいって!」
「そうだね。じゃ、一緒に行こうか」
「わあい!」

「……ちょっと待って!」

 今度は姉のミラから待ったがかかった。
 腕を組んで、戦闘訓練の教官のように立っている。
 心なしか威圧感がある。どうしたんだ?

「私も一緒に行く」
「ミラ……家の手伝いと学校は?」

 ミラは地元の学校に通って、それ以外の時間はパンの配達をしている。
「学校は休みよ。それにクシーノが行くなら私も行くの!」

 がるるると擬音が聞こえてきそうなほど、こっちを睨んでいる。

「そんなこと言ったって、ミラまでいなくなったら、ファイネさんの負担が増えるだろ」
「なによ、私を連れていかない気?」

「待て、ミラ。その伸ばし棒に手をかけるな。それは危険だ。なんていうか、危険過ぎる」
「ねえ、連れていくの? いかないの?」

「分かった、連れていく! 連れて行くから、それは置け。……そう、ゆっくりと。息をゆっくりと吸って……はい、吐いて」

 ミラを落ち着かせていると、となりでロブさんが大きく息を吐いた。
「済まんな、コイツも連れてってやってくれ。言い出したらきかん」

「ええ、大丈夫です。伸ばし棒にさえ手をかけなければ」

「配達は……まあ、なんとかなるだろ。せいぜい一泊だしな。それよりミラもクシーノも王都を出たことがないんだ」

「心配なんですね、分かります」
 さすがに娘ふたりを送り出すのは辛いのだろう。

「ああ、姉妹そろって行動が読めんからな。何かしでかさないかと、心配で眠れんかも」
 意外と信用がなかった。

 なにはともあれ、僕はミラとクシーノを連れて、急遽北方にあるダニエの町へ行くことに決まった。

というわけで、新章です。

『第1章 魔国蠢動編』では、竜国を狙う魔国が暗躍する様を書きました。
魔国十三階梯が宿泊地と王宮を同時襲撃し、あやうく第1章で話が終わりかけました。
ですが、魔国が裏でどんなに動こうと、レオンくんとパパが相手では、勝ち目はありません。

『第2章 技国内乱編』では、アンさんが初登場です。
レオンくんが誘拐されたアンさんを取り戻しに行った先で、クーデターに巻き込まれました。
……みなさんは、このクーデターが内乱だと思われたでしょうか。

でも実は、誘拐が解決したあとが本番でした。
序列1位が序列3位に攻め込んだ事件こそ、内乱だったわけです。
これもレオンくんとパパが無双して、無事収束しました。

そして『第3章 商国陰謀編』。
今度は打って変わって、陰謀です。水面下で計画が練られて、表に出てくるのは、すべて準備が終わって実行に移された時のみ。竜国は後手に回ってしまいます。

それを操っていたのは、商国五会頭の『麦野』、兵を提供した『銀檻』と、一筋縄ではいかない連中ばかり。
竜国商標の流出は避けられましたが、本当の陰謀は、それではないことも分かりました。

そして『第4章 竜国政争編』です。
魔国、技国、商国と続いてようやく竜国がメインの回です。

すでに種はまき終わっています。どんな物語になるのか。
実際に読んで、確かめて貰えたらと思います。

物語の彩りとして、「大転移」と「楽園」の両輪も健在です。これらが物語にどう絡んでくるのか。
いろいろ予想してみてください。

クオリティを下げずに、1日2話更新を続けていきたいと思います。
応援よろしくお願いします。
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