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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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「中型の飛竜か、珍しいな」

 中型竜はその巨体ゆえにあまり王都にいない。
 いても居場所が限られると言えばよいだろうか。

 戦力として期待されているため、陰月の路にいることが多い。
 単独で王都の上空を飛ぶのは珍しい。

「おっと、それよりも、逃げた襲撃者を探さないと」

 僕が商館に来たときには、敵はもう逃げ出した後だった。
 そのことから、襲撃の順番は以下のような感じだと分かる。

 まず商館を襲う。
 ここを襲撃した情報が漏れてはまずいので、大人数で行ったと推測できる。
 見張りの兵を含めて、だれ一人逃がさないようにしたはずだ。

 出入り口が一カ所しかないのだからそこを固めていれば情報が漏れるのも防げる。
 その間に何人かが商館に入り、竜国商票のありかを捜索する。

 これが一番時間がかかったはずだ。
 出入り口の橋を押さえてあるとはいえ、いつ気づかれるか、気が気ではなかっただろう。

「そのせいで、仮眠していたひとりを見逃したわけだしな」

 すべての部屋の中をくまなく捜索していれば、取りこぼしもなかったはずだ。
 だが、そのおかげで僕にも情報が手に入った。

 敵の狙いは地下の保管庫だった。
 竜国商票を運び出して馬車にでも積み込んで解散。

 襲撃時は全員馬車に乗っていたのかもしれない。
 そして帰りは竜国商票を満載に積んだ。
 襲撃者のほとんどは徒歩となっただろう。

「彼らは火付けをしたのかな」

 火の手があがれば、どうしても注意がそっちに向く。
 何か普段と違うこと――夜の王都を馬車が大急ぎでかけることがあっても、火事のせいだったと結論づける。

 敵は次々と火をつけてまわり、王都を混乱させた上で逃げる。
 そんな感じだろうか。

 では、竜国商票を乗せた馬車はどこへ向かったのだろうか。
 夜で目立たないとはいえ、見ている人がいるかもしれない。

 姿を見られれば、これだけ大規模な襲撃計画でも瓦解する。
 竜国商票を運び入れる場所は一番気を遣うはずだ。

 絶対にバレない場所。
 もしくは捜索されても大丈夫な場所。
 それは一体どこか?

「一番いいのは、一旦竜国の外へ出してしまうことだよな」

 そうすれば手が出せない。
 ほとぼりが冷めた頃――来年になったら持ち込めばいい。

 そんなことを考えていると、遠くから気配がやってきた。
「お姉さんか」

 僕は分かりやすいように、橋の上に立った。
 すぐに気づいて、お姉さんは僕の前にやってきた。

「僕が来たときにはもう脱出した後だったよ。どこへ逃げたか考えているところ」
「やはりそうですか。捕まえた一人を尋問しました。火付け前に商館襲撃にかかわったようです」

 やはりそうか。

「だとすると逃げた場所も分かった?」

「いえ、そこまではまだ。ですが王宮を襲撃した者から、五会頭のひとり、『銀檻ぎんかん』がかかわったことが判明しました。傭兵を貸し出しただけのようですけど」

 ここへきて五会頭か。

「とすると、盗まれた竜国商票も五会頭の誰かが持って行ったとか?」
 そんな大事なものならば、人任せにするとも思えない。

「そうです。最近王都に来ました『豪商』スルヌフがつい先ほど、王都上空の飛行許可なく飛び立ちました」

「僕も見た。あの中型飛竜、あれスルヌフのだったのか」
「そうです。私も見ましたが、向かった先は王都の東。最短で海に出るものと思われます」

 商人が使う飛竜は海上を移動すると聞いたことがある。
 申請を出す上で楽だからとか。

「ということは、海を南下して商国に?」

「その可能性が高いと思われます。中型の飛竜は、小型竜よりも速いですし、すでにかなり時間が経ってしまっています。もう間に合わないかもしれません」

「間に合わないって……商館が襲撃されて竜国商票が盗まれた。そしてスルヌフが飛び立ったってことは」

「はい。竜国商票を載せているのでしょう。いま〈右手〉と〈右足〉を集めている最中です。スルヌフの管理する郊外の館に踏み込む手はずを調えていますが、肝心の竜国商票は空の上だと思われます。飛び立つ前に押さえられればよかったのですけど」

 なんということだ。
 どうやら竜国はまた出し抜かれたらしい。
 いや、まだ間に合うか?

「シャラザードなら追いつけます」
「あの黒竜ですか? ですが、相手は中型の飛竜ですけど」

「シャラザードは小型飛竜の二倍出せますので、中型飛竜より速いです。いまなら商国に着く前に追いつけるかもしれない」

「まだ可能性があるのですね。でしたら女王陛下には伝えてます。すぐに追いかけてもらえますか」

「分かりました。敵の思惑を外してやります」

 スルヌフはロザーナさんを狙ったばかりか、今日はリンダの父親まで殺そうとした。
 仲間に手を出したこと、このままにしたくない。

 奴が王都上空に姿を見せたのも、中型飛竜ならば『絶対に追いつかれない』自信があったからだ。
 残念だったな、その慢心を打ち砕いてやる。

 シャラザードは態度は横柄だが、それに見合った実力は持っている。

 問題は海に出てから。
 海上だと、捜索するのは大変だ。

 出たとこ勝負で探した場合、かなり分が悪い。
 もう少し飛んでいれば、ルートを予想できたのだが。

 いや、今更そんなことを言ってもしょうがない。
 スルヌフが商国に入る前に絶対に見つけるんだ。

 竜国商標のことだけじゃない。僕は怒っている。
 後悔させてやる。必ず。

「じゃ、お姉さん、行ってきます。女王陛下には、安心するよう伝えてください。商国に入る前に必ず追いついてみせます」
 そう言って僕は闇に溶けた。

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