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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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「なあに、あなた。そんなコネがあるの? たしかに以前もらった情報も早くて正確だったけど」

 以前リンダに伝えた情報というと、大転移のことを言っているんだろう。

「これリンダ。あまり詮索するんじゃない。いくらレオンくんだっておいそれと情報元はしゃべれないだろう」

「まあ、それはそうね。……で、なにその銀板って」
 リンダがズズッと顔を近づけてきた。

「竜国商票は緻密で精巧なもので、真似できるとは思えない出来映えなんだ。どうやって作っているのかと不思議だったが、三枚の銀板か。なるほど」
 ヨシュアさんがしきりに頷いている。

 とりあえず、女王陛下。
 あれって、ものすごい秘密情報じゃないか!

 気軽に話すから、普通に知られている情報かと思ったわ。
 竜国商会幹部のヨシュアさんですら知らない情報って、どうなんだ。

「僕が聞いたのは、三枚の銀板を少しだけずらして掘るってことだけですよ」
「どういうこと? 私も竜国商票は見たことあるけど、なんで三枚も必要なのよ」

「リンダ。彫り師だってできることとできないことがある。竜国商票に描かれている線は、一本一本が髪の毛の半分以下の集合線なんだよ。あれを彫ろうと思っても、版の溝の幅があるからね。不可能だ」

「……だから三枚も?」
「おそらく彫り師が細く彫れる限界が、あの三倍なんだろうね。だから線と線の間に二本の線を入れる場合、別の板に彫って重ね合わせるしかない」

「うわっ、それってすごいめんどうじゃない」
「それくらい手間をかけるからこそ偽造できないんだろう。でもよく板を重ね合わせる技術があったな。そっちも不思議だ」

「それは技国から買ったようです」
「すごいなそれは。急に決まった竜国商会だけど、準備だけは以前からしていたということか……」

 ヨシュアさんが考え込んでいる。
 竜国商票もまた、軍部が臨時発行する軍票の実験的意味合いらしいので、商館ここと同じだ。

「それがあれば、竜国商票が作り放題ね」
「ここにはないぞ。製造は王宮内でやっているから、できあがったものがここに届くだけだ。だから貸付部署の者たちも銀板は見たことないはずだ」

「それもそっか。でも、竜国商票をわざわざここに持ってくるの? 面倒じゃない?」

「王宮の奥底で作られて、一旦ここに保管されるんだ。ここには戦い抜くための金塊なんかを保管する場所があるからな。その部屋に積んであるって話だ。それで毎日窓口からの要請で必要枚数を取り出している」

「なるほどね。じゃ、その保管室に行けば……」
「厳重すぎる警備があるから無理だろうな。竜国商票とはいえ、お金と同じ価値があるんだ。しっかりと守られているさ。ここの警備と合わせて、盗み出すのは不可能だろう」

 山と積まれた竜国商票。およそ一年分が保管されているらしいが、難攻不落のこの商館ならば、保管場所として安心できる。

「それで竜国商票を受け取った商会は、それをもとに商売を始めるわけよね」

「竜国商会に入っているならば、それはお金と同じ扱いになる。店を開くのも、品物を購入するのもすべて竜国商票があればできるからな。ただし、王都はそろそろ飽和状態だ。いま新規の商会は他の町で店を開くことが多いようだな。毎日かなりの数の馬車が地方に向かって進んでいるって聞いたぞ」

「へえ……地方ね。それで商国の動きはどうなの? ソールの町だと拮抗している感じだったけど」

「王都だと商国がかなり不利だな。そういえば、五会頭のひとりがテコ入れに来たようだぞ」
「直接? だれが来たの?」

「悪い噂が流れて商国に戻っていたんだが、つい最近舞い戻ってきたんだが……」
「悪い噂って……もしかして」

 リンダが声をひそめた。

「西の五会頭の一人。『豪商』のスルヌフだ」
「あちゃー」

 スルヌフ・エイドスは、リンダもよく知っている。
 なにしろロザーナさんの結婚相手だった人物だ。

 竜国の北を中心に商売をし、船を出す変わりにロザーナさんと結婚しようとした。
 リンダの調査を僕が影ながら引き受けて悪事を暴き出したことがある。

 あのとき少しだけ戦った呪国人は、隠密戦闘に長けていた。
 なかなかの強者を側近に雇っている侮れない人物だ。

「スルヌフの飛竜が王都を飛んでいるのが目撃された。狙いは分からないが、竜国商会に敵対するためだとみていいだろう」

「やっかいな相手ね。スルヌフの飛竜は珍しい中型竜なのよね」
「速さに特化した飛竜らしいな。昔、竜操者の家族親類ごと引き抜いて話題になったな、そういえば」

 スルヌフの飛竜は中型竜なのか。
 そんなに大きな竜をどこで飼っているんだろうか。

「飛竜はスルヌフの屋敷にいるんですか?」

「レオンくんは竜操者だから、そこが気になるみたいだね。スルヌフは王都内でも閑静な場所に広い竜専用の屋敷を持っていてね、そこに飛竜はいるはずだ。通常は夜間にこっそり飛来してくるんだが、時間調整を間違えたのか、それともわざとか、昼日中ひるひなかにやってきたらしい」

 それも計算づくだろうねとヨシュアさんは言った。

 悪い噂の多い『豪商』スルヌフ。
 屋敷に潜入したことがある僕には分かる。
 あれは噂だけではない。実際、悪事に手を染めている。

 判明したものだけは王城に届け出ることができたが、あんなものはごく一部だ。
 スルヌフの執務室で見つけた二つの木箱。

 あれに何が入っているのか。僕は中を見ていない。
 スルヌフが大事にしているものだ。
 あのとき見ることができなかったのが本当に悔やまれる。

 そして今回王都にやってきた目的。
 それは一体、なんなのだろうか。

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