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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 女王陛下と話をすると、相変わらず肝が冷える。
 これ以上怖い話を聞きたくないので、多少強引でも話題を変える。

「そもそも僕がソールの町へ向かったのは、竜国商会から依頼されたからでした」
「そうだったわね。でも片付いたのでしょ?」

「はい。ですが他の町にも商人に扮した強盗団が複数いるのは確実ですし、残りが竜国内のどこへ向かったかも分かっていません」

「そうね。手配をしておきます」
「ありがとうございます。少し気になったのですが、今回の通商破壊は共済保険が狙われたと思います。それにしては大規模過ぎます」

 僕が気になったのはそこだ。
 リンダから依頼されたのは、共済の支払金申請が増えて、ヨシュアさんの手が回らないので、代わりに調べて欲しいというものだった。

 被害が増えれば支払金が膨れあがるので、掛け金も高くなる。
 掛け金があがれば、加入者は減る。

 そうなれば共済保険が立ちゆかなくなってくる。
 それが狙いなのかと思っていた。

 だが、事はそんな小さなことではない。
 竜国商会そのものを攻撃しているように思える。

「そうね」
 女王陛下はしばし考える仕草をみせた。
 珍しいことだ。

「最近は通商破壊だけでないものね。品薄になりそうな物の大量買い占め、悪しき噂が巷間を流れ、商国商会が特定の品目の流通を制御している」

「お、大がかりですね」

「ええ……これだけ多方面からの攻撃を考えたのは誰かしら」
「まさか、たったひとりが絵を描いているというのでしょうか」

 外枠だけでない。国の中身まで把握していないと大胆で繊細な絵は描けない。
 そもそも事態がここまで進んでようやく全体像が見え始めてきたのだ。

 まさか、最初から計画されていたとでも言うのか。

「可能性はあると思わない? これは偶然ではなくて、はじめから計画されていたって」
「ですが……そうすると、女王陛下が行った政策すら考慮して計画に組み込んだことになりますが」

 竜国商会の設立や、物流を商国から取り戻す取り組み。
 それすらも織り込み済みとでも言うのだろうか。

「妾はそれを画策しそうな人物に心当たりがあるのよ」

 そういえば、前回女王陛下から聞いた。
 商国には世が世なら、希代の軍師、もしくは将軍となりえる人物がいると。
 絶対に敵対するなと言われた……五会頭のひとり。名はたしか。

「フストラ・エイルーン……『麦野ばくや』ですか?」
「あくまで可能性の話よ。でもあり得そうなのよねー」

 この話題も駄目だ。またしても竜の尾を踏んでしまった。
 静かに暮らす僕には無用の話題。すぐに変えねば!

「そ、そういえば、僕のパトロンが言っていましたが、いま竜国商会の中で一番忙しいのは、貸付かしつけ部署だろうと」

「そうね。竜国内で新規に商売を始める人が多くて助かっているわ」
「儲かっているようですね」

 良かった。話題が移ってくれた。
「竜国議会の予算案にはなかったことなので、お金はないのだけどね」
「はい?」

 不敬にも、問い返してしまった。
 お金がないってどういうことだ? 貸付部署だよな。
 お金がないのに貸したのか?

「竜国商票(しょうひょう)を臨時発行したのよ」
 竜国商票――それはなにかと聞いたところ、実際のお金と同じに扱える金券らしい。

 竜国商票で買い物ができるが、その期間は年内のみ。
 来年度からはちゃんと予算が組まれるので、それまでの措置だとか。

「つまり申請をした商人たちはお金ではなく、その竜国商票を借りたのでしょうか」

「そういうことね。それを持ってくれば順次お金に交換することにしたの。ただし、交換開始は来年になるけど」

 臨時にお金が必要になったときの措置として、かねてから考えていたらしい。
 それを今回試験的に導入したようだ。

 商人が申請書類を出して、それに見合ったお金を貸し付ける。
 ただし実際のお金ではなくて竜国商票だ。

 ただしそれが使えるのは、竜国商会に入っている商会の中だけ。

 つまり自分たちの中だけで通用する金券を発行したのだ。
 そんなこと、よく考えつくなと思う。

 つまり女王陛下は、現時点で実際のお金を一切使うことなく経済を活性化させたことになる。
 もちろん年があけたら、そのツケを支払うことになるが、それまでの間に経済が活性化すれば、損はしない。

 策士だな。そう思う。

「使用する銀板は三枚あるのよ。どんな職人でももうこれ以上限界って細さの線を描かせたのね。それを微妙にずらしたのが三枚。重ねて印刷すると、だれにも真似できない文様もんようの竜国商票ができあがったわ」

 技国から購入した独自技術で、ピッタリ印刷できる機械と併用することで、唯一無二の竜国商票印刷機械ができあがったのだそうな。

 ふと女王陛下はまじめな顔をした。
「そういえば大転移だけど、来年起こることはまだ内緒にしていたのよ」
「はい。当然だと思います」

「でも魔国と商国に漏れているわね」
「……!?」

「身近に裏切り者がいる。そう判断したの」
「まさか……」

 大転移のことを知っているとしたら、重要な地位にいる者か、僕ら〈影〉のように女王陛下の側近くに控えている者しかいない。

「両国の動きから判断したのだけど、おそらく事実。そこでレオン」
「はっ、はい」

「身辺には十分気をつけなさい。他国に通じる者は、どこかにいます。より一層の注意を」
「かしこまりました」

 僕は深々と頭を下げ、謁見は終了した。


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