挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

260/660

260

 リンダを竜の発着場で下ろし、シャラザードを学院の竜舎まで連れて行く。
「ありがとう、シャラザード。疲れたかい?」

『まったく疲れておらんぞ。このまま月魔獣狩りに行けるくらいだ』
 相変わらず、シャラザードの体力は底なしだ。

「ならいいけど。体調の不具合が出たらすぐに知らせてくれよ」
 竜はめったなことでは病気にかからない。
 それでも気をつけるに越したことはない。

 病気にかかっても自然治癒させるしかなく、安静にさせることで治す。
『それよりもまた、血湧き肉躍る戦いがしてみたいものよ』

「この前やらかして評判がさらに下がってしまったんだ。勘弁してくれ」
 僕とシャラザードがソウラン操者と一騎打ちしたと、世間では噂されている。

 その時の出来事が、王都の民の間で囁かれはじめた。
 噂の中に真実は欠片しか含まれていないが、戦ったのは事実だ。

 イケメンの顔に瑕疵かしをつけてしまったのは悔やまれる。
 大丈夫だろうか、ソウラン操者。

「……そのうち僕が襲いかかって怪我をさせたとか出回るんだろうな」

 なんとなくだが、そんな未来が見える。
 ソウラン操者の青竜も、いまは怪我を治すために集中しているという。

 どこかでモリモリ食べて、適度な運動をしていることだろう。



 僕は夜を待って、女王陛下の元へ赴いた。

「あなたって本当に飽きさせないわね、レオン」
 どうしてソウラン操者と一騎打ちをしようと思ったのと、笑いながら聞いてきた。

「そんなつもりはなく、ただシャラザードの訓練をお願いしただけでして……」
「別に、だれとどこで戦おうとも構わないのだけど、あれはあれでファンが多いから気をつけなさい」

 ソウラン操者は王城内でも人気が高い。
 それを傷物にしたとかで、若い女性が僕憎しで団結し始めたとか。

「……気をつけます」
 そう答えてみたものの、何をどう気をつければいいのだろうか。

「それで、ソールの町に行ってきたんですって?」
「はい。竜国商会からの依頼で、通商破壊の調査に赴きました」

「原因は特定できて?」
「商国商会の手の者が暗躍しておりました。街道で襲われていますので、町中の〈影〉では把握しきれなかったことでしょう」

 このところ、ただでさえ人の出入りが多いのだ。
 町の外にまで目を見張らせていられるわけがない。

「その通商破壊のこと、聞きましょう。詳しく話して」
「はい。ソールの町に着いたところから順番にお話したいと思います」

 工場が完成していないにもかかわらず魔国から大量の人がやってきたこと。
 その中には、食い詰めたスラムの住人や、恩赦で出てきた犯罪者も混じっていることを告げた。

「彼らが真っ当な労働者になるとは思えませんでしたので、原因を調べるため、魔国領に一番近いホーリスの町へ赴きました」

 そこで領主に催眠術をかけて傀儡かいらいにしようとした商人と呪国人を見つけて拘束したことを話した。

 すでに魔国からやってくる人を無条件で受け入れてしまった現状があること、今後は正気に戻った領主が引き締め政策をとって、徐々に治安や町民の不安を解消するために動くと言っていた話などを伝えた。

「なかなか大変なことになっているわね。誰が絡んでいるのかしら」

「そこまでは分かりません。ディオンと名乗る老人の関与がありました。時間もありませんでしたので、父に状況を話して、現地の〈影〉に調べてもらっています」

 商人も呪国人も捨て駒の匂いがする。
 いくら絞っても、あれ以上の情報が得られるとは思えない。
 黒幕は商国内から出てすらいないのではなかろうか。

「しかし……レオンが動くと、なんでそんなに陰謀に当たるのかしらね」
 疫病神なの? と聞かれたので、偶然ですと答えておいた。

 たぶん、偶然だ。
 なにしろ僕は、静かに暮らす事を望んでいる善良な一般民なのだから。

「流民の問題がひとまず片付いたので、ようやく通商破壊の原因を調べに向かいました」
 町を出て街道を見て回ったが、不審なものは発見できなかったこと。

 別の町を転々としている最中に、荷を乗せずに人だけ乗せて出発した馬車を見つけ、空から様子を窺っていたら、奪った荷を運び入れる現場を目撃したことを語った。

「商人に化けた強盗団というわけね。でも、奪った荷をどうする……そうね。商国商会でさばくルートがあるのでしょう」

 さすが女王陛下だ。
 これだけの情報でおおよその事態を察してしまっている。

「その通りだと思います。それと実際に襲ったのは魔国の兵ではないかと思われます」
「どうしてそう思うの?」

「襲われた商人たちの話では、構え方のクセがそれに似ていたと。現役ではないかもしれませんが、訓練を積んだことがあるのではないかと」

「商国と魔国が手を組んでいる可能性はあるわね」
 どんな仕返しをしようかしらと、女王陛下はあでやかに笑った。

 こういうときの女王陛下は、ロクな事を考えていない。
 何が一番、相手が嫌がるか、それを想像しているのだ。

「ひとつ疑問なのですが」
「なあに?」

「魔国と商国がなぜ手を組んだのでしょう」
 根本が分からない。商国は軍事力を持たないため、攻めず、攻められない。

 だが、魔国から兵を借りて事を起こせば言い訳ができない。
 証拠が固まれば、攻められても文句は言えないと思うのだ。

「そうね。それは『楽園』の情報が原因かしら」
「『楽園』ですか? あの眉唾の……」

「いかに眉唾でも、『楽園』は飢えることの無い広い土地。国ひとつ分の価値に相当するのよ。他国を戦争で奪うのと、だれのものでもない広大な土地を手に入れるのと、どっちが簡単で、楽かしら」

 まだ見ぬ豊穣の土地。魅力的ではある。
 眉唾であることは疑いないが、史料には残されていた。
 史料では旧王族たちの末裔が住んでいるはずだ。もっとも滅びている可能性もあるが。

「では商国の目的は『楽園』の土地?」
「その可能性が高いわね。魔国だってそう。大転移を逃れるために新しい穀倉地が必要でしょうし」

 それで手を組んだわけか。
 商国だけでは手に入らない。そこで魔国を巻き込んで竜国と相対しつつ、裏で捜索を続けている。そんなところか。

 いま竜国内は通商問題で手一杯だ。
 女王陛下が密かに調べさせているが、魔国や商国はその先を行っているかもしれない。

「しかし地方の体たらくには困ったものね。もう少し締め付けた方がいいかしら」
 とんでもないことを言い出した。

「地方議会が反発するのではないでしょうか」
「でも任せられないでしょ」

 他国の思惑が分かってない以上、王都との間に温度差が生じているのはしょうがない。
 それゆえ、地方は商国と魔国にいいようにされている現状がある。

「その場合、どうされるつもりでしょうか」
 怖いので聞きたくないが、知らないでいるともっと怖い。

許認可権きょにんかの一部を取り上げるのはどうかしらね」
「反乱がおきますね」

 許認可権なんて、利権の温床だ。
 取り上げたら、美味しいとこだけ王都が持って行ってしまうのかと、大反発がおきてしまう。

「後でやりやすくなるわけだし、悪いことだけでもないのよ」
「………………」
 後って、それ反乱を起こさせた後の話だよな。

 女王陛下は、大転移の前に不満分子をあぶり出して、逆に中央集権を強固にするつもりだ。
 やっぱり聞かなきゃ良かった。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ