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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 森を抜けて、街道まで出る。
 人の姿が見えたので、そこへ向かう。

 案の定、近くに破壊された馬車と後ろ手に縛られた商人たちが困った顔をして佇んでいた。

 馬車と人を掴んだまま下りてくるシャラザードを、商人たちは呆然とした顔で見つめていた。



「助かりました。本当に」

 男たちが馬車に積み込んだ荷物は、この商人たちから奪ったものだった。

 いきなり矢を射かけられ、馬が狙われたらしい。
 すぐに囲まれ、拘束される。
 あとは馬車から荷物を下ろして馬車を破壊して去って行く。

 早業だったという。
 襲撃から撤収まで、ものの十分程度らしい。

「ずいぶん慣れた襲撃ですね」
「はい。私もそう感じました。顔を隠して終始無言。目で指示を出しているものですから、これは初めてでは無いなと感じました」


 シャラザードが持ってきた荷を確認してもらったら、間違いないという。
 商人の馬は殺され、馬車は破壊されてしまったので、報告がてらシャラザードに乗せてアジウエントの町に向かった。

 町を守る兵に事情を話し、捕まえた男たちを引き渡す。
 商人たちが襲われた場所と、男たちが荷の積み込みに使った場所も教える。

「そこの木に馬が三頭、繋いでありますので、回収してください」

 町の兵はそれを請け負ってくれた。
 あとで分かったことも知らせてくれるという。

「じゃ、僕はソールの町に戻ります」
 シャラザードと一緒に町中へ入ってしまったので、実はかなり目立ってしまっている。

 シャラザードを使役する竜操者がソールの町出身である事実。
 これが知られていたので事がすんなり運んだのは良かった。

 さて、今回の出来事をよく考えてみる。

 荷を運ばない商人。
 馬車の中には、強盗に扮することができる男たちがいた。
 街道を馬車で進み、獲物を見つける。

 襲撃は馬車からそれなりに離れた場所。つまり、関連があると思われないよう注意していた。
 馬を殺して馬車を壊せば発見が遅れる。その間にまんまと逃げおおせられるわけだ。

 馬車の荷台には盗んだ荷物。
 人は手荷物を持って、通常の旅人か商人に扮する。

 見とがめられても、持っている荷物は自分のものだから疑われることもない。

「そりゃ見つからないわけだ」
 強盗団がいるのではなく、突如出現するのだから。

 そしてリンダからもらった資料。
 短期間のうちに複数の場所で被害が起きている。
 抵抗した者は怪我することはあっても、死者はいまのところ出ていない。

 生き残った者の証言では、言葉を発することなく顔も隠しているので、襲った者の正体はまったく分かっていない。
 ただし、何人かの証言で、剣の構え方が魔国の兵の型に似ているというのがあった。

 ただし、そんなものは誰でも真似できるので、重要視はしていない。

 そして襲撃者の数。一度に十人を越えること。
 それが複数の箇所で起こっていることから、同じような連中が複数いることが分かっている。

 この盗賊家業。
 捕まるまで、手口を変えることはないだろう。

「父さんに言って、町を出る馬車を全部チェックしてもらった方がいいのかな」

 根絶させるために徹底的にやる必要がある。
 だけど、察知されれば別の手を考えてくるかもしれない。

 嫌な手を使ってくる。本当に。



 ソールの町に戻って父さんに事情を説明する。
「人を増やして当たるしかないが、すでに別の町に向かっている可能性もあるな」

 魔国から労働者が流れてきたことに便乗してやってきたのであって、この周辺で活動しなければならないわけではない。

 より襲いやすい場所があればそちらに行くだろうと、父さんは予想した。

「どうしたらいい?」
「四六時中、すべての街道を見張るわけにもいかないからな。かといって襲撃者はそれなりに訓練を積んだ者たちで、数も多い。半端な者が調査したら二次被害が出る」

 十数人を取り押さえるならば、その倍は欲しい。
 そんな集団をいくつも作れるわけがない。

「捕まえた者を尋問して口を割らせるとか?」

「俺ならば他の連中の動きは知らせないな。知らないものは答えようがないから」
「そっか。とすると、打つ手はないよね」

 商人たちを疑えば、それだけ竜国の信用が下がる。
 野放しにすれば、被害がふくれあがる。

 現状、場当たり的な対処しかできていない。

「一応、方法はあるぞ」
「どんな?」
 意外だ。敵のやり方をみる限り、抜本的な方法はないと思えるんだけど。

「黒幕を叩く」
「………………」

「まあ聞け。今回の手口を見る限り、魔国が従で商国が主だ」
「そうなの?」
 なんで分かるんだ?

「馬車と商人、そして街道の情報など、商国の方が多くのものを供出している。魔国は兵くずれを貸し出しているに過ぎない」
「そうだね」

「それに奪った荷は商国商会が買い上げた……形になっているんだろう。深く関わっている証拠だ」
「なるほど」

 明らかに盗品と分かるものを余すところなく買い上げるなら、上層部に商国のお偉いさんがいることは確実だ。

「奪った荷はさすがに竜国内で捌けないからな。商国に持って行くだろう。どこかに隠すことも考えられる」

「アラル山脈に食糧を保存するための洞窟を作ってあるよ」

「そこが一番適しているな。ほとぼりを冷ますのにちょうどいい。……というわけで、輸送や保管を含めて、これまた商国が関与しなければ難しいだろう。そこまで考えると、どっちが主導しているか分かってくる」

「うん、僕も商国が絵を描いたような気がしてきたよ」

 魔国が手伝わなければ傭兵を雇っただろうし。
 その場合、商人に偽装するのはなかなか難しそうだ。

 とすると、父さんが言うように黒幕を叩くのが現実的か?
 でも黒幕ってだれだ?

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