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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 領主にかけさせた催眠術を解除させた。

 その瞬間、領主の身体は糸の切れた人形のようにくずおれた。
「……おい」
「解除した。本当だ」
「………………」

 しばらくすると、領主に動きがあった。
 意識を取り戻した領主は首を傾け、考え事をしているように見えた。
 領主は最初こそボウッとしていたが、しだいに状況が飲み込めてきたようだ。

 続いて僕を見て、次に商人を見る。
 そして床にうずくまっている呪国人を見下ろした。

「どういうことだろうか……長い眠りから醒めた気がする」

「どういう状況か分かりますか?」
「私は……そうか、操られていたのだな」


「はい。覚えていますか?」
「ああ……いや、記憶はあるが、鮮明ではないようだ」

 意識混濁していたときの記憶はあるようだが、半覚醒状態でうつらうつらしていたときの感覚に近いらしい。
 詳細までは覚えていないのだとか。

 いくつか質問をして確認したところ、記憶が飛んでいる部分も見られなかった。
 よかった。これで話が通じなかったら、大変だった。

「後のことは任せていいですか?」
「どういうことだね?」

「この町には、様子を見に来ただけですので」
 ソールの町に魔国人が増えた理由を知りたかっただけなのだ。

「分かった。我が町のことだ。しっかりと対処しよう」

 領主は使用人を呼び、商人と呪国人が引っ張られていった。
 僕もそれを見送った。

「そなたのことは深くは聞くまい」
 僕が〈影〉と分かったので、深入りを避けたようだ。

 賢明な判断だが、別段指令で動いているわけでないので、ただ面倒を避けたかっただけだったりする。

「では失礼します。明日にでも別の者が来ると思います」
 そう言って僕は領主館を後にした。

 シャラザードに「遅い」と文句を言われつつ、僕は明け方近くにようやくソールの町に戻ることができた。
 今日はこのままパンの仕込みだ。ほとんど寝る暇がない。

               ○

「なるほどな。呪国人を使ったか。だが領主の立場を長期間操れるとも思えん、遅かれ速かれ露見しただろうな」
 父さんに事情を説明したら、呆れていた。

「短期でも効果があると考えたのかな」
「商人は捨て駒のようだし、そうだろう」

 呪国人に至っては、金で雇った男みたいだし、捕まろうが処理されようがどうでもいいのかもしれない。

「領主は正気に戻ったんだな?」
「うん。大丈夫だと思う」

「ホーリスの町の〈影〉には俺が知らせておく。おまえは本来の目的に戻れ」

「分かった。……と言ってもどこから手をつけていいのか分からないんだけどね」
 リンダは早起きして馬車で出て行った。

 被害に遭った商人に会いに行くと言っていた。
 僕はシャラザードと一緒に襲われた現場の確認だっけか。

 朝の仕込みを終えて、僕はリンダからもらった地図を広げた。
 被害報告のあった場所にバツ印がついている。

 街道の安全をはかるため、問題がおこると現場に立て札をたてる。
 飛竜対策に、地面に大きな印を付けたりする。

 商人や竜操者たちは、立て札や印を見て何があったのか理解し、警戒を深める。

「隠れられそうな場所はないし、竜が巡回していれば発見されている。かといって、町にも不審な出入りはないんだよなぁ」

 地図を眺めても、おかしいところは見つからない。
 被害があった日時と場所から複数の集団が関わっていることは分かるが、そういう集団がどこにいるかは皆目見当がつかない。

 そもそも隠れられる場所はあるのだろうか。
「数十人単位……バックアップを加えると百人規模になってもおかしくないんだよなぁ。どういうことだろ」

 そもそも十人やそこらで、竜国の通商破壊ができるとは思えない。
 被害が無視できない規模になるならば、大きな集団でなければおかしい。

 だからこそ、何の手がかりもないのが不思議だ。
「とりあえず、初日は上空から探すか」

 運良く襲撃の現場を発見できればよし。
 そうでなくても、上空からならば手がかりが見つかるかもしれない。



「……と考えていたけど、甘かったかな」
 シャラザードに乗って空から地上を見下ろす。

 街道は行き来する馬車がときおり見える。
 馬車だけではない。大きな荷物を背負って歩いている人も多い。

 竜国の商人だけでなく、工場目当てにやってきた魔国人も多数含まれているだろう。
 彼らに不審なところはない。ゆっくりとだが、目的をもって街道を進んでいる。

『主よ、どうなのだ?』
「とくに変わったようには見えないな」

 リンダからもらった資料によると、被害を受けた商人たちに共通点はない。
 商国商会に属してないことだけは共通か。
 襲われた時間もバラバラだ。

『どうする? 別の場所に行くのか?』
「そうだね。一通り見て回ろうか」

 襲撃のあった場所を実際に確認しておきたい。
 といっても、街道上で襲われているから、別段変わったところはないのだけど。

 シャラザードと一緒に多くの襲撃現場を見て回った。
 町や村から離れているが、見通しの悪い場所ばかりではない。

 襲撃者たちはどこから現れてどこに消えたんだろう。
 荷を奪われ、馬車を壊された商人たちは歩いて助けを求めに行った。

 途中で馬車に拾ってもらったこともある。
 町に行けばすぐに竜操者が派遣されるため、どこへも逃げられないと思うのだけど。

 一通り見て回ったが、手がかりは見つからなかった。

 家に戻るとリンダが待ち構えていた。
「ただいま」
「おかえり。ねえ、どうだった?」

「だめ。現場を全部回ったけど、襲撃者につながる情報は見つからなかったよ。隠れられるような場所はないし、そもそも複数の場所で襲われているからね」

「そっか、進展なしか。ありがとう。大変だったでしょ」
「シャラザードがいるからすぐだよ」

「便利ね、シャラザード。一家に一体いると重宝するわね」

「あれが各家庭にいたら大変すぎだよ、餌代とか」
 各家庭にシャラザード……そんな集団を思い浮かべて、僕はげんなりした。

「それで明日はどうするの?」
「被害場所がバラけているから、どこかで網を張ることもできないし、今度は町の中を調べようかなと思っている」

 街道とその周囲には不審なものは見つからなかった。
 近くの町や村はまだ行っていないので、そこを調べてみようと思う。

「わたしは引き続き聞き取り調査をするわ、また明日、がんばろうね」
「ああ、がんばろう」

 その日僕は、早めに就寝した。
 昨日からの寝不足がたたって、すごく眠かった。

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