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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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『楽園』探しに出発するには、まだ時間がかかる。
 というよりも、バックアップ体勢が出来てからでしか動けない。

 女王陛下が言うには、港町の近くに僕が使う拠点を用意してくれるとか。それも複数。

 拠点には住居や竜舎のほかに、食糧や日用品、シャラザードの世話をしてくれる人も手配してくれる。結構大掛かりだ。

「その間に、こっちはやれることをやっておくか」

 唯一の手がかりであるしおの民について調べたい。
 といっても、クリスに話を聞くだけだが。

 クリス・ファンダルダは、ヒューラーの町の衛星都市であるポークニの町出身だ。
 神官職のまま竜紋が発露し、このたび学院生となった。

 彼が住んでいた港町に残された口伝。
 クリスが言うには、潮の民と呼んだ一族は、西からやってきて東の海に消えた。
 そのことをもう少し詳しく聞いてみたい。

「知ってるのは、船を作って出て行ったとこまでなんッスよ。結構大掛かりッスよね、船を作るなんて」

「そうだな。そもそも船なんて簡単に作ることができるのか?」
 小舟とはわけが違う。
 外の海は荒れると言うし、必要だからってホイホイ作れるものなのだろうか。

「船大工が町にいるから、手伝って貰ったのかもしれないッス。でもよく分かんないッス」
「そうか。旧王都から来たなら、お金は持っていただろうしな」
 船を作らせたか、買ったのかもしれない。

「やっぱ、古老ころうから直接聞いた方がいいと思うんスよ。自分が知ってるのは、町が津波に何度かやられているんで、大事なことは口伝で残しているってことと、その中の話のひとつに潮の民についてあるって事だけなんスよね」

 それ以上のことは知らないらしい。
 又聞きではこれが限界か。

「津波で口伝ね」
「書き残してもみんな波に押し流されちゃうんで、苦肉の策ッスかね」

 ポークニの町は港町だけあって、高台のような場所が近くになく、どうしても大規模な津波が来ると、町が半壊してしまうのだという。

 津波が来ると分かると、取るものもとりあえず避難するので、そういう口伝は大事なのだろう。

「やはり直接行って聞いてくるしかないか」
「そうッスか。自分はイオーズじいさんから聞いたッス。でも、わざわざ行く必要があるんスか?」

「好奇心みたいなものかな。海に消えた人々がどこにいるのか、それを探し出したら、もしかしたら竜国のためになるかもしれないからね」

「そういうもんッスかね。よく分かんないッス」

 クリスからは、これ以上詳しい話は聞けなかった。
 町に行ったら、イオーズさんに直接聞いてみることにしよう。

 あまり大きな町じゃないらしいし、探せば分かるだろう。

               ○

「なんだか、最近ずいぶんと忙しいようだね」

 就寝しようと思ったら、アークにそんなことを言われた。
 忙しいかな。忙しいかも。
 あまり授業に出られていないし、こうしてアークとゆっくり話す機会も少ない。

「シャラザードだと単独でしか活動できないからかな。いろんな用事が降ってくるんだ」
「中型竜を得た同級生たちも訓練は別だし、そういうものなのかね」

「僕の場合は少し違うかもしれない。月魔獣とは関係ない用事で出かけることもあるし」
「特殊竜も大変だね。そういえば、このところ王都が騒がしいのは気づいたかい?」

「商人たちのこと?」
「そうだね。他国から商人がやってきたおかげで買い物の幅が増えた反面、小さな衝突が起こっているらしい」

 嘆かわしいことだとアークは言った。

 人が増えればいさかいが増える。
 それは当然だが、リンダから商国商人のやり方を聞いた後だと、どうしても作為を感じる。

 わざと諍いを生じさせている人たちがいるんじゃないかと。

「気のせいかもしれないけど、義兄さんの耳には入れておこうかな」
「どうしたんだい?」

「いや、ちょっとね。なんとかならないかなと思って」

「そうだね。しかし、女王陛下はどうしてこの時期に新規参入の規制を緩和したんだろうね。いまのままでも充分発展していたのに」

 アークの言いたいことは分かる。
 市場が混乱したのを目のあたりにすると、「なぜ、どうして」と思うのは普通のことだ。

 一年後に大転移がくることを知らなかったら、僕だってそういう反応をすると思う。
 だとすると町の諍いも、それが根本にあるのだろうか。

 数日後、僕はリンダを伴ってソールの町へ出発した。
 前回で懲りたらしく、さんざん「ゆっくり飛びなさいね」と言っていた。

 ソールの町だけでなく、地方のどの町もそれぞれの領主の裁量によって治められている。
 地方議員が町民の暮らしに目を光らせ、領主に伝える。

 王都に比べれば、支配者と被支配者の距離は近い。
 だから、王都ほどの混乱は起こっていないと思っていた。
 到着早々、その考えが甘いと気付かされた。


 竜国の南部は、かつてないほどに混乱していた。

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