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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 女王陛下にケイリーさんから聞いた話を伝える。
 ついでに同室のクリスから聞いた、潮の民についても言い添えた。

「作物も家畜も豊富にあるなんて……まさに楽園ね。でも、本当なのかしら」
「それについては史料にあったとだけ。検証はできていません」

「そうよね。実際に探してみないことには分からないものね。……でも『魔探』はどうして途中で止めたのかしら」
「実権を失ったからではないでしょうか」

 五会頭ならばできたことでも、商国を追放されてしまえば使えない力はいっぱいある。

「そんなものかしらね。それでレオン」
「はい」

「探しに行ってくれるわね」
「はい?」

「適任でしょ」
「……は、は、はい」

 報告の途中から「あまり話が外に漏れると困るわね」とか「遠くにあるなら竜が最適ね」など、聞こえてきていた。
 危ないので相づちをうってなかったのだが、そう来たか。

「でも、東の海に島なんてあるのかしらね。でもレオンなら行けるわよね」
 女王陛下はのんきにそんなことを言っている。

「一応、学院の授業があるのですが」

「そうね……長期休みがいいかしらね」
 八月の長期休みは、パン屋で修業したかったんだが……。

「捜索といっても、どの程度すればよろしいのでしょうか」

 ここだけはしっかり聞いておきたい。
 見つかるまでと、何年もかかる捜索を言われたら大変だ。

「うーん、どうしようかしら。まだ期間があるし、準備ができた頃に考えましょう」
「長期休みの期間は一ヶ月ほどですね」

 一応、そう釘をさしておく。延長はなしだ。
 なにしろ昨年の長期休みは、ほとんど技国で過ごしたのだ。

「そうね。とりあえず一ヶ月分。見つからなかったら、その後で決めましょう」
「……分かりました」

 たしかに大量の飛竜を動員して捜索なんてしたら、いろいろ話が漏れてしまうので仕方ないのだろうが、これも忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の役目か。

 なんとなく腑に落ちないものを抱えつつ、僕は女王陛下の前で闇に潜った。

               ○

 寮に帰ったら、リンダからの手紙が溜まっていた。
 何があったんだ?

 しょうがないので、すぐに会う段取りを取った。

「ちょっと、どこに行ってたの?」
 待ち合わせ場所にやってきたリンダは、開口一番、それである。

「月魔獣関係でシャラザードと陰月の路まで行っていたんだ」

「そっちに飛び立っていったってのは知っているわ。王都であんな大きいのがしょっちゅう北に向かうから、情報はよく入ってくるもの」

 シャラザードは目立つからな。
 けど有名になっていたのは知らなかった。

「それでどうしたんだ? すぐに会いたいって書いてあったけど」
 返事がないのに続けて手紙を書くなんて、何があったかと思ってしまう。

「そう、そのこと! 商国商会の逆襲が始まったのよ」
「はっ?」

「パパが言うには、これはまだ序の口だろうって」
「ま、待って! 順を追って説明してくれるかな」

 ここんとこ、色んな話が目白押しで、情報を整理する暇すらない。

「前にパパが同業者からの風当たりが強いって話したでしょ」
「その話は聞いたな。中型竜より大きいシャラザードのパトロンになったんでやっかんでいるだっけ?」

「そう。だからパパはうまく立ちまわって、みんなが嫌がる役を率先して引き受けたり、あまりおおっぴらにはパトロンのことを宣伝しなかったりと、結構気を使っていたのね」

「そうなんだ。ご苦労さま?」
「パパの苦労はどうでもいいんだけど」
「どうでもいいんだ」

「いいのよ。それでパパも第一線にはいなかったから気づくのが遅れたらしいんだけど、商国商会の逆襲が始まったわけ」

 リンダの話をまとめるとこうだ。

 竜国からあからさまな嫌がらせを受けた商国の商人たちは、物流を止める手に出た。
 だが、それはとっくに分かっていたので、逆にそのシェアを奪うようになったらしい。

 密かに買い上げた商品の流通を止め、流通を混乱させようとしたが、ヨシュアさんがその動きを偶然見つけたことで存在が知れ渡った。

 そうなれば、あとは他にそういった品物がないか探すだけで済む。
 結局、商国の買い占め作戦も思ったような効果が得られなかったという。

「逆に、王都ではどんどんと商売が侵食されていったことで焦ったようなのよ。思い切った手に出たわ。これにはわたしもビックリ」

 はじめは、商国商人たちの団結と組織の強化で対抗していたが、ジリ貧であることを悟ったのか、竜国商人の信用毀損きそんに乗り出したらしい。

 人を使って悪いうわさを流し、不安を煽る。
 購入した商品にイチャモンをつけて商売を成り立たなくさせる。

 流通の過程でわざと事故を起こし、商品や部品を届かなくさせる。
 その他、思いつく限りの悪行が王都で行われたらしい。

「さすが商人ね。自分たちがやられたら嫌なことをよく心得ているわ」
「それ、警邏けいら兵に通報したらいいんじゃないの?」

「捕まるギリギリのところをうまく突いているのよ。芸術的なほど境界スレスレね。言い逃れができるような逃げ道をちゃんと確保してやっているわ」
「ひどい話だな」

「でしょう? でもそれだけじゃないのよ。問題はここから」
「まだあるの? 信用毀損だけでも結構なダメージだろうに」

「商国商会の嫌なところは、同時攻撃で焦点を絞らせないところにあるのね」

 商人の取り込みや切り崩し、さらには怪文書や嘘の噂話で、竜国側の離反工作まで行っているらしい。
 自分たちで煽ったあとで、不安につけ込んで商人を取り込むのだからタチが悪い。

 自作自演だ。

「そんなことになっていたんだ」
 忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)で僕が飛び回っていた間に、王都はひどいことになっていたようだ。

「パパは偶然にも一線から身を引いていたので狙われなかったのね。それだけが理由じゃないのだけど……ううん、一緒ね。それでパパは竜国商業組合の幹部に推薦されちゃったのよ!」

「はい!?」
 さすがにそれは意味不明だった。

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