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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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「さてそろそろ楽園の話をしましょうか」
 ケイリーさんが最後のお茶を飲み干した。

「はい」
 いよいよだ。
 僕がここに来た理由。
 旧王都にあった『楽園』の情報を持ち帰らねばならない。

「王族とそれに付き従う者たちは、別の町に落ち延びたことが分かりました。王族排斥運動は、他の町には関係なかったことから当然でしょう。そこから詳しい史料は出ていないため、足取りは途絶えます。なにしろ、ここには旧王都で起こった史料しか保管してません」

「それはそうですね。もし、知りたければその落ち延びた町に史料が残っているでしょうし」
 アークが言うには、一時的にヒューラーにも滞在していたようだし、探せばまだ見つかるかもしれない。

「うむ。それで王都の民たちは、冷静になって考えました。果たしてあれで良かったのかと」

 王族を追放したが、あとを任せられるような人はいない。
 政治を市民の手に委ねたところで、難しい舵取りができるわけでもない。

「誰かが王位についたのですか?」
 ケイリーさんは頷いた。

「利害関係の対立のせいか、一年のうちに三度も変わっているようですが」
「そんなに……」

 短期間でコロコロ変わっては、継続的な政策などもないだろう。
「最初から末期症状ですね、それ」

「そう思った者が多かったのでしょうな。王族を連れ戻して、もう一度王位についてもらおうと言い出す者たちが現れました」


「連れ戻したのですか?」
「いや、もう月日が経ちすぎたようです。近隣の町にはいないことが分かりました」

 捜索隊が一度戻ってきたらしい。

「可能性はふたつ。ひとつは東へ、もうひとつは西へとあります」

 王族は、まず旧王都から南へ向かって進んだらしい。
 アークが住んでいたヒューラーの町がある方角だ。

 それより南へいけば陰月の路がある。
 東か西のどちらかへ行ったと推測したらしい。

「王族探しの旅はふた手に別れました。何年かして、探しに出た者がひょっこり戻ってきたのです。王族はいま『楽園』におり、戻るつもりはないから、その場所も教えたくない、そう言ったようですね。これが最初に見つけた『楽園』に関する記述となります」

 ついに来た。
 王族というくらいだから、当初は良い暮らしをしていたのだろう。
 そこから流狼の身になってついの棲家を見つけたわけか。それが楽園。

「よほど気に入ったのですね」
 ケイリーさんは苦笑いした。

「なにしろ、尽きることのない食糧と家畜になりそうな獣、広くて平坦な大地が広がっていると記述にはあります。働かなくても食べていける理想の地だと」

 なるほど。
 そんな場所があったら、帰りたくもなくなるだろう。

 事実、王族たちを見つけた捜索隊も戻ってきていない。
 唯一、残してきた家族を心配したその者だけが戻ってきた。

「わたしが知っている限り、楽園に関する記述はこのくらいです。あとは、少々予想が入りますが、よいですか?」
「はい」

「当時の陰月の路からすれば、南へは行けません。つまり、現在の商国や技国は楽園と一切関係がないと思えます。とすれば、東か西になります。西には魔国がありますが、当然そこにも人が住んでいます」

「そうですね。そんな近くにあるとは思えないです」

「とすれば天蓋山脈ですが、実はここの可能性が低い」
「竜操者の天蓋山脈踏破のことですか?」

 竜国は一度、天蓋山脈の果てを知ろうと探検隊を派遣したことがある。
 どこまでも続く山を越え、たしかに平らな地を発見したが、そこはただの荒れ地だった。

「それもありますが、忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)に所属する竜操者たちは、北嶺地帯と天蓋山脈に関しては、地図作製のため、何度も飛行しています」

「……なるほど。では東ですか」

 天蓋山脈の踏破は不可能だ。
 王族が侵入できる場所ではない。

 万一向かったとしても、山脈の山を二つか三つ越えたくらいまでしか到達できない。
 その範囲ならば、霧の民や竜操者の移動範囲であるため、とっくに見つかっている。

 結局、北嶺地帯も天蓋山脈もそのような発見報告はないという。

 ヒューラーの町から東へ行けば、すぐに海に当たる。
 それ以上先は行けないのだが……。

「船……でありましょうか」
 王族たちは船をつくり、大海原に漕ぎだした。

「では楽園は東の海の先にある可能性が高いと?」
「わたしはそう睨んでいます。もっとも東に行ったという記述もないのですが」

 クリスの出身地ではなんと言ったか。
 古老が口伝で残したというしおの民の話。
 あれも船で海に消えて行ったと言っていた。

「東の海に楽園が」

 アンネラの父『魔探』が残した暗号。楽園についての情報は、東の海の向こうについて書かれていたのだろうか。

 だとすれば、どの位置からどのくらいの距離に進んだところに島がある、そのような情報なのかもしれない。

「ケイリーさん、ありがとうございます。もしかしたら楽園の場所が分かるかもしません」
「そうですか」

「さっそく女王陛下にお伝えしてきます」
 ハリムが誘拐までして手に入れようとした楽園の情報。

 ただの眉唾ものではないのだろう。きっとなにか確証があってのことに違いない。

 だが、肝心の楽園の場所が分かっていない。
 それゆえ、乱暴な手段に出て、竜国に知られることになった。

「この情報はハリムに渡らないようにしなければ」

 ハリムの企みが楽園絡みであることは分かっている。
 絶対に先に楽園を見つければ!


 僕はシャラザードに飛び乗って、一路王都を目指した。

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