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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 王都を離れ、北へ向かって進む。

『ついでに月魔獣を倒してからゆくか』
 シャラザードが嬉しげに声をあげる。

「おまえはいつもブレないな」
『当たり前だとも……ほれ、見つけた』

 シャラザードは目がいい。
 僕にはまだ分からないが、右に首を巡らせたので、そっちで月魔獣を見つけたらしい。

「どうせ今日中には着くからいいけど。少しだけな」
『心得た!』
 進路を変えて、シャラザードを月魔獣のもとへ向かわせる。

「雷は使うなよ」
『承知だ、主よ』

 三体の月魔獣が見えた。
 忠告しなくても、周囲に危険を撒き散らす技は使わないと思う。

 ただし、「好きにやれ」と言うと、シャラザードは時々とんでもない被害を出す技を使うので、一応、この手の忠告は続けていきたい。

「……これで全部かな?」
 視界にいた月魔獣はみな倒された。
 僕が見る範囲にはいないが、シャラザードだと分からない。

『うむ、他にいないようだな……我は満足できたぞ』
「そうか……よかったな」
 これでシャラザードの機嫌がよくなる。月魔獣も減って万々歳だ。

「時間を食ったから先を急ごう」
『うむ……だが、遅れたのは主が月晶石を取っていたのもあるぞ』

「……うっ、まあそうだけどね」
 せっかくの収入源なのだから、いいじゃないか。

 こうして僕らは再び旧王都を目指し、真夜中になってようやく到着できた。
 つまり、寄り道し過ぎたのだ。

 頭上にはエイダノの月が輝いているが、近くにカイダの月がなければ月魔獣は降りてこない。
 僕は旧王宮の裏手にある広場に、シャラザードを降下させた。

「さて到着はしたけど……どうするかな」
 初めての旧王都。僕はどうすればいいのだろうか。



 しばらく待っていると、人がやってきた。見張りが見えたので、連絡が行ったのだろう。
 竜舎はこことは離れた場所にあり、そっちに移動してくれと言われて、そこまで移動した。

「ようこそいらっしゃいました」

 ヒフさんやガイスンさんもそうだけど、忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の人たちは、どうしてこう丁寧な言葉を使うのだろう。

 ほとんどが高い身分を持っていることと、この中では上下関係がないことが理由らしいが、いまだ慣れない。
 最初、ヒフさんが丁寧な口調で話しかけてきたとき、驚いたものだ。

 すでに見張りを残して就寝しているというので、僕も寝ることにした。
 半日以上移動してきたので、疲れている。

「客室を用意します」
「いや面倒だし、ここでいいよ」

「ここって……竜舎ですけれども」
「慣れているからね」

 父さんには、どこでも寝られて、疲れを取れるようにしておけと訓練させられた。
 この程度のことはまったく苦にならない。

 それと、いかに忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)とはいえ、まだ安全を確認したわけではない。

 もちろん信頼できる人たちだとは思っている。
 ただし、それと警戒を一切しないこととは別なのだ。

 僕は見張りの人にもここで休むことを告げ、シャラザードの隣に腰を下ろした。

『行かんのか?』
「念の為ね。僕は潜るけど、いい?」
『うむ、好きにせい』

「じゃ、好きにさせてもらおう」
 僕はシャラザードの影に潜った。

 シャラザードの影以上に安心できる場所はないと思う。

               ○

 翌朝、シャラザードの影から出ていくと、竜舎の外が騒がしかった。
「なにかあった?」

『人が来たので、追い払っておいた』
「………………」
 優秀過ぎたみたいだ。

 僕が到着したことを聞いて、様子を見に来た人たちがいたが、シャラザードが近寄らせなかったみたいだ。
 そこまで警戒する必要はなかったのだが、言っておけば良かったかな。

「はじめましてですな、ロボス・シードイルです」
「お世話になります、レオン・フェナードです」

「同志から、『楽園』の情報をお伝えするように言付かっております。それでよろしいでしょうか?」
「はい。お願いします」

「では、中へどうぞ。元々私どもは旧王都の古い史料を発掘し、編纂へんさんする事も業務のひとつとして考えております」

「伺っています」
「女王陛下は、旧王都に眠る古い史料に殊の外興味を示され、研究をはじめるよう、仰ったのが最初です」

「そうだったんですか。では女王陛下の前は」
「ありませんでした。史料編纂をはじめて、今年でちょうど十年になります。ゆえに未解読、未整理の史料はまだまだ多いですが、作業は順調に進んでいると自負しております」

 そもそも忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)というのは、女王陛下が創設したものらしく、発足してまだ十数年しか経っていない。

 十代の若さで王位に就いたことで、領主たちが好きにやり始めたのがきっかけらしい。
 まず、裏切らない味方を集め、しかるのち反撃したそうな。

 どのような反撃をしたのかは、聞かなかったが。

「ここが史料編纂室です。どうぞ中へ」
 巨大な書庫だった。目につく範囲でも、数百、数千もの本が所狭しと積み上がっている。

「すごいですね」
「数だけはあります。……ただし、これを読める者がほとんどおりません」

 いまの竜国が形作られてから五百年ほど。
 ここはそれよりも前の時代の遺産だ。

 当然言葉も違う。
 さらに難解なのが、身分によって習得する言語が違っていること。

「たしか、公用語というのがないのでしたね」

「ええ、征服者と非征服者の使う言語が始まりだったようです。その後、国が拡大してゆくにしたがって、征服者が貴族に、非征服者が征服者にかわりました。より下層な者が使う言語が、一番後に征服された種族と考えられています」

 この多くの本は、一体どれだけの言語で書かれているのか。
 頑張れば、古代の言語を習得できるだろうか。
 無理だな。途中で諦めそうだ。

「来たようです」
 小柄な老婆が歩いてきた。

「紹介しましょう。この史料編纂室の長ケイリー・ズワイン女史です」

 老婆は僕の前まで来ると、小さな背を丸めて、会釈した。
「なんでも、『楽園』の情報を知りたいとか」

 ややしわがれた声。
 ケイリーさんの瞳には強い好奇心の色があった。

「ええ。レオン・フェナードと申します。よろしくお願いします」


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