挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

245/657

245

 学院で座学と訓練の日々が続くなか、夜は女王陛下からの指令を受ける日が増えた。
 王都の〈右手〉たちも連日大わらわらしい。

 そんなある日、授業が終わったあとで竜導協会のガイスンさんに呼ばれた。

 座学の講義に、竜導協会から神官が派遣されることがある。
 ガイスンさんもまた、学院に入る資格を有していたのだ。

 人気のない場所で、ガイスンさんは『楽園』に関する情報が集まったと告げてきた。

「もうですか。随分早いですね」
 正直、もっと日数がかかるのかと思っていた。

「優秀な者が揃っているからでしょう」
 ガイスンさんは重々しく頷いた。

「僕はどこへ行けばいいのですか?」
忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の本拠地である旧王都に向かってもらいます」

 旧王都は、何度かアークの話に出てきた。
 そういえば、以前時計塔でガイスンさんと初めて話しをしたときにも言っていた気がする。

「やっぱり、旧王都は忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)が使っていたのですね」
「ふむ……レオン殿は何か知っておられたのですか?」

「友人がヒューラーの町出身なんですが、旧王都は外から入る手段がないわりに、飛竜がよく飛んで行くと言っていたもので」

「なるほど。なかなか鋭い御仁ですな。表向きは、王族が管轄する軍事拠点ということになっております。竜導協会や操竜会の上層部にはそう説明してあります。一般の民は、そのことすら知らないでしょう」

 なるほど、秘密の軍事拠点と言われてしまえば追求できなくなってしまう。
 王族管轄となればなおさらだ。

 ヘタに探ろうとすればスパイ容疑で拘束される。

 アークがあそこに何かあると疑っていたが、学院を卒業してもアークはその事実を知ることはできないな。

 もちろん僕も忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の本拠地だと、他人に話すことはできない。
 アークには可哀想だが、未知の場所と思っていてもらおう。

「行ったことはありませんが、ヒューラーの町の北にあるのでしたね」

「そうです。旧王都は高い塀で囲まれていますので、飛竜でしか入ることができません。その中にある王城跡が、私たちが本拠地にしている場所です」

 いよいよ、忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の本拠地に行くのか。
 もともとこの集団に属することになったのは、〈左手〉のヒフが話を持ってきたからだが、女王陛下の意向が働いていることは疑いない。

 どんな人たちがいるのか、気になる。それとちょっと緊張してしまう。

「そういえば、忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)では、旧王都から出た史料の研究をしているんでしたね」

 すっかり忘れていたが、ヒフがそう言っていたのをいま思い出した。
 ヒフと寮の外でそんな会話をした記憶がある。

「そうです。楽園についての史料は、そこで研究されていたもののひとつだと思われます」
 だからこんな短期間で調査できたのか。

 大転移まであと一年……いや、こうしている間にも時間は過ぎているのだ。いつその兆候が現れてもおかしくない。

「分かりました。すぐに向かいます」
「お願いします。学院の方は私の方でうまくやっておきます」

「ありがとうございます。しかし……」
「なんですかな?」

「あちこち出歩いてばかりだなと思いまして」
「ああ、なるほど。ですが、今後もこういう機会は増えると思います。今のうちから慣れておくといいでしょう」

「……そうですね。がんばります」
 ガイスンさんは僕を操竜会で出世させようとしている。

 操竜会を代表する立場のひとりになって、女王陛下を公の場でも支持する人材としたいのだ。
 もちろん今すぐではない。

 十年、ひょっとすると二十年先の話かもしれない。
 次代を担うための布石くらいに考えているのだと思う。

 だけど、静かな暮らしを望んでいる僕としては、できるだけそういう立場は遠慮願いたいのだ。


 ガイスンさんの話があった翌々日。
 僕は竜導協会からの特殊任務で、王都を離れることになった。
 名目上は。うん、間違ってはいない。

 ちなみに僕が学院で座学と訓練に明け暮れているここ何日かの間だが。
 商国商会の動きはより活発に、そしてより悪辣になってきている。

 義兄さんが言うには、やや竜国が不利な状況らしい。
 目的が分かっていても潰せないのが痛いのだとか。

 僕も指令で何度か商人たちの動向を探ったが、あからさまに法を逸脱している者は出てこず、さらに首魁とおぼしき者も存在していなかった。

 みな責任の一部を負担し、だれかが倒れてもすぐに別の者が引き継げるような制度が確立されていた。

「あれじゃ、一人や二人を処理しても警戒させるだけだな。より深く潜られると、まだ目をつけていない連中が中心になって動くことになる。手を出さずに監視している方がいい」

 そう義兄さんは、顔をしかめていた。

 正攻法で来ているようで、大金を使って地元の商会を乗っ取ったりする動きがあったので、この前調査の指令が来た。
 僕が調べてみたところ、正規に契約書を交わした買収劇だった。

 手口は分かっているのだけど、資金力やこれまでの繋がりを利用した包囲網に、うまく介入できない感じだ。

「特定の国を持たない強みだな、これは」
 領土を守る必要がないことで、攻撃に専念できている。

 こんなとき〈右手〉の仕事をせずに王都を離れるのは後ろ髪を引かれる思いだけど、『楽園』の情報を早く得ておきたいのも事実だ。

「なるべく早く戻ってくるよ」
「頼んだぞ。王都はいま人手不足だからな」

「分かった。お土産はなにがいい?」
「敵の首を二つ三つ」

「今からいく場所には敵はいないと思うな」
 義兄さんは僕が忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)に入っていることを知らない。

 ゆえに、表向きの理由をもう少し詳しく話してある。

 地方の竜導教会から史料が見つかり、『楽園』に関する情報かもしれないので、行って確かめてくる、そう話してある。

「敵がいないと思っても、気を抜くなよ」
「分かった。じゃ、行ってくる」

 僕は義兄さんに後をまかせ、シャラザードとともに王都を出発した。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ