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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 一回生は座学をしている。
 去年のこの時期は、勉強と体力づくりを交互にやっていた記憶がある。

 僕らはそろそろ竜の扱いに慣れてきたと判断されたようで、列を作って移動しながら速度を変えたり、急停止、急加速などの編隊行動を中心に行っている。

「こらぁ、二列目! 遅れてるぞ!」

 教官の怒声が飛ぶ。
 小型竜を三体一列にして走らせているが、僕はそれを見学していたりする。
 仲間はずれじゃないからね。シャラザードは参加できないのだ。

「……ヒマだ」
『うむ。では狩りに行くか』
「授業中だよ!」

 中型竜とシャラザード(属性竜)は大きさが違うので、一緒に訓練できない。
 戦場では、単独で月魔獣を狩るので、そもそも隊列を組む必要がない。

 ではなぜ見学をしているのかと言えば、何かのおりに一緒に行軍をすることがあるからである。

 前進と後退がほぼ完璧にできるようになった後、教官の声が響いた。

「よし、間に中型竜を入れる」

 小型竜三体の後ろに中型竜を一体挟むように交互に並び、先ほどと同じ訓練を再開する。

「……あれ? 僕は」
 僕だけポツンと残されてしまった。

 属性竜をあの中に混ぜるつもりはないらしい。
 教官の怒声が響く中、いつまで待っても、僕とシャラザードにお呼びがかからなかった。

 日が沈み、同級生たちがいい汗かいたなと笑い合う中、僕は非常に微妙な顔をしていたとおもう。
 仲間はずれじゃないからね!
 でも少し寂しい。


「なに? ……一緒に訓練したいだと?」

 翌日、僕の訴えを聞いた教官の声は、とても嫌そうだった。
 なにアホなことほざいているんだ、そう言いたげな顔をしていた。

「見ているだけだと退屈ですし」
 こんな訓練が数日も続けば、ヒマで死にそうになる。

「だけどな、アレが斜行しゃこうしただけで小型竜が死ぬぞ」

 竜を得たあと、僕らは最初、まっすぐ歩かせる訓練だけを延々とやらされる。
 そうしないと、人や建物が危険なのだ。

 中型竜より大きいシャラザードの場合、小型竜どころか中型竜すら斜行に巻き込まれると大変なことになる。
 教官が中々許可を出したくないのも分かる。

 分かるのだが、ヒマを持て余しているのだからしょうがない。
 途中に座学さえなければ、陰月の路に月魔獣を狩りに行きたいくらいだ。

「この後の授業だけでも一緒にいいでしょうか?」
「この後か……竜走りゅうそう竜相撲りゅうすもう竜尾引りゅうびひきだぞ」

「迷惑かけませんので」
「………………まあ、やってみるか」

 やった。これで、ぼっちとはおさらばできる。

 ウキウキした僕とは反対に教官の顔は渋いものになっていた。

「……というわけで、竜走だ。アーク、一緒に競争しよう」
「おれの走竜とかい? キミのシャラザードは複合型だから走れるとは思うけど、勝てるかな?」

 地上を走らせたら、走竜に敵うものはない。
 まるで羽が生えたように走竜は地上を軽快に走るのだ。

 だがシャラザードには一歩の大きさがアドバンテージにもなっている。
「多少の体重差なんか吹き飛ばすさ」

 走る距離は五キロメートル。
 この距離ならば、トップスピードの差が勝敗を分ける。

「よーい………………」

 ――ピィイイイイイ

 笛の合図に、シャラザードが飛び出した。

 すぐに風を切る音が聞こえてくる。
「いい調子じゃないか、シャラザード」
『身体がなまっていたところだ。まだまだ行けるぞ』

「それは頼もしいな」
 疾走するシャラザードは、すぐにトップスピードまで加速した。
 アークはどうなのかと隣を見ると……。

「……ん?」

 アークを乗せた走竜は、スタート直後で派手に横転していた。
 シャラザードのダッシュで地面が揺れたのだという。

「竜走は禁止!」
 スタート直後の地響きで、バランスを崩してひっくり返ったらしい。

 怪我がなくてよかった。
 そう言ったら、教官から「怪我をさせなくてよかった」だからなと訂正された。

「竜相撲なら……」
「禁止に決まっているだろ」

 同じ種類の竜どうし、頭をくっつけた状態から押し合う競技だが、中型竜より大きなシャラザードの相手になりそうな竜がいないので、参加すらさせてもらえなかった。

「残るは竜引きだけど……」
 竜が尻尾どうしを絡ませて互いに引っ張る競技である。

「中型竜二体な」

 シャラザードの相手は、中型竜の走竜と地竜である。

 三頭の竜の尻尾が絡まり、開始の合図が鳴る。

「いけ、シャラザード!」
『任せろ!』

 どうもシャラザードは、こういう勝ち負けのあるものが好きらしい。
 ぐっと踏ん張るが、こっちは中型竜より大きいとはいえ、足は二本。向こうは、地竜と走竜。足の数は六本である。

 それはもう地面を蹴る力が違う。
 シャラザードの身体が後ろに傾いた。

「がんばれ!」
『もちろんだとも!』

 シャラザードは踏みとどまり、身体を前方に傾ける。

「………………」
『………………ぐぐぐ』

 ピタリと止まった。力が拮抗しはじめた。

「もうひと息だ!」

 大きく息を吸い込んだシャラザードは、前傾姿勢になり、両腕で大地をつかむ。
 その後、四足の状態で振り切った。

 振り返った僕がみたものは、空中に投げ出された中型竜二体の姿だった。

 激しい音と地響きを残して中型竜が転がる。
 乗っていた二人の竜操者たちはそれより前に投げ出されていたので、無事である。

「ふぅ……怪我しなくてよかった」
「怪我をさせなくて良かっただろ?」

 教官の目は笑っていなかった。

 もちろん、この後の実技もすべて見学で、僕はぼっち訓練を言い渡された。
 反論は……認めてもらえなかった。

 そして同級生たちが遠巻きに眺めてくる。
 仲間はずれじゃない……よね?

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