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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 女王陛下の元から戻った翌日の朝。

 一回生も今日から授業が始まる。
 その前に僕はアンネラに昨晩聞いたことを伝えた。

「無事なのですね」
 すぐに伝えようと思ったので、寮のロビーでアンネラを待ち伏せたのがいけなかった。

 朝っぱらから目に涙をためたアンネラに、寮の一回生や二回生たちが好奇の目で僕らを眺めた。

「あっ、あああ……」

 昨日、希望を見出したことで寝付けなかったのだろう。
 もともと目にくまができていた。

 心労も溜まっていたと思う。
 アンネラは両手で口元を抑え、嗚咽を繰り返して、その場に膝をついた。

「……大丈夫?」
「あああああああ……」

 僕が声をかけた瞬間、感極まってアンネラが大泣きした。

 僕はアンネラを抱き上げて寮を飛び出し、庭の片隅まで避難した。
 どう考えても、あのままでは悪目立ちする。

 しばらく経つと、アンネラは泣き止んだ。
 感情が落ち着いてきたようだ。

 このまま放っておくわけにもいかず、途方に暮れていたので正直助かった。

「レオン先輩、ありがとうございます。ありがとうございます」
「僕はただ伝えただけだから」

 襲撃にも救出にも僕は一切かかわってない。
 だから感謝されるようなことは何もしていないのだが、アンネラには関係ないのだろう。

 しばらく感謝の言葉は続き、僕はそれを受けながら、ちょうど授業が始まった頃だなと頭の中で考えていた。

 ふと見ると、アンネラがこちらを見ていた。

「考えてみれば、レオン先輩はいつそのことを知ったのでしょう。昨日の段階ではまだ知らなかったですよね」
 するどい!

 さてどうしよう。
 下手な言い訳はできない。かといって、どう説明したら……。

 じっと下から見上げてくるアンネラに、真実の欠片を混ぜながら話すことに決めた。

「学院の規則はゆるいからね。夜中に外へ出かけてもそれを取り締まる規則はないんだ」
 うん、嘘は言っていない。

「では先輩は昨晩……」
「ちょっと抜けだして外に行って来たんだ」

 アンネラはボケっと僕の顔を見て破顔した。

「先輩って、そういうタイプだったんですか。見かけに寄らないですね。だって、寮には門限が決まっていますから、実際にはそれを破ったことになっていますよね」
「まあね」

 一応、寮の鍵を閉める関係上門限というのが設定されている。
 だが、演習の多い僕らは、夜中に帰ってくることもあるし、早朝出かけることもある。
 だからそれほど気にされていないのが実際のところだったりする。

「それで先輩は夜に抜けだして……そうか、向かった先は操竜場ですね。知り合いの竜操者がいるって昨日言ってましたし。それで情報が早いのですね」

「そのへんは秘密ということで」
「なるほど、操竜場へは忍び込んだのですね。分かりました、秘密にしておきます」

「うん、それでだけどね。全員無事は確認されたんだけど、衰弱しているらしいので、近くの村で静養中なんだって。だから、全員の体調が戻ったら、王都に向かって出発するらしい」

「無事ならば、どんなに遅れたって大丈夫です。待っていられます」
「そうだね。そしてここが重要な話なんだけど、今回彼らが狙われたのは、ディーバ商会だからだったんだ」

「…………わたしの商会だからですか?」

「そう。アンネラのお父さん、『魔探』が残した暗号が原因というのかな。それが誘拐の発端になった」

 僕はいい機会だと思って、『魔探』が書いた暗号文が西の都に残されていたこと、それを次の会頭であるハリムが手に入れたこと、最近ようやく暗号文が解読できたことを伝えた。

「わたし、暗号文なんて知りません」

「たぶんそうだと思った。だれかに伝えることができるならば、わざわざ暗号で残す必要はないと思うしね。だけど、ハリム会頭はそうは思わなかった。最初、『魔探』の行方を捜したらしい。ディーバ商会を見つけて接触しようと思ったら、きみは竜導教会に入ってしまっていただろう。だったら、商会員をと思ったら、町を引き払って王都に向かって出発したという。慌てて拐ったようだね」

「そうだったんですが。……じゃあ、商会のみんなが拐われたのはわたしのせいだったのですね」
「それはどうだろ。キミも商会員もあくまで被害者だと僕は思っている。悪いのはハリムという商人とその手先となって動いている連中だ」

「暗号……でもお父さんがそんなものを残していたなんて」

「そうだね。どういう意図があったのか分からないけど、ハリムはまだキミを諦めていないかもしれない。この学院内ならば侵入者は入って来られない。だからキミは、ここから出ない方がいいけど、何かの罠でおびき出されることも考えられる。もし出ることがあったら、僕に言ってほしいんだ」

 そうしたら守ってあげられる。僕はアンネラにそう言った。

「分かりました。他ならないレオン先輩の言葉です。必ず守ります。絶対にひとりでは学院の外に出ません!」

 まるで宣言するようにアンネラは告げた。

 ちなみにこの後授業に向かったが、一回生と密会して大遅刻したということで教員から大目玉を食らった。

 解せん。


さて大転移ですが、4年後ではなく、早ければ今年の終わりにはやってきます。早いですね。

竜国も魔国も準備が足りているのか、他国はどう動くのか。
商国の陰謀は、どこまで進んでいるのか。そして目的は?

そもそも大転移までにすべての準備が間に合うのか。その規模は?
今後、そのあたりを楽しんで貰えたらと思います。


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本作はノリの良いスチャラカSFです。
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よろしければ、お手に取ってもらえればと思います。

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ではでは
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