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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 竜操者の第二次暗黒時代。
 それはいかに竜を食わせるか、苦難の歴史だった。

 アークの独白が始まった。

「竜操者を全員軍属にすることはなくなったけど、そのうち問題になったのが、竜の餌代なんだよね」

 それはいまも昔も変わらないと思う。
 竜はよく食べる。本当によく食べる。

「授業でサラッと教えてくれたね。最初すべての竜の餌代は、竜国が負担していたって」

「そう。だけど魔国との戦争があって、復興の途中にある竜国には、餌代は重い負担としてのしかかっていたわけさ。授業では教えなかったけど、軍部の反発もあったみたいだね」
「軍事費の問題かな」

「そういうこと。兵たちも我慢しているのに、竜操者だけ優遇されている。そう感じたらしい。しかも、軍属でない竜操者たちの餌代も出しているんだ。軍部だって文句もいいたくなるだろうさ」

「それは分かる」

 月魔獣との戦いは竜操者が行い、魔国との戦争はとりあえずなくなった。
 これから軍部の影響はますます小さくなる。

 軍事費の削減を言われるかもしれない。
 ただし、竜の餌代は固定費だ。ならば、なにを削るのか。

「軍部が議会を動かして、軍属でない竜操者たちの支援を取りやめるよう、働きかけたわけだ。それが半分認められて、軍属でない竜操者は一部の支給金だけしかもらえなくなった」

「餌代を全額欲しければ、軍属になれってことかな」
 でもそれじゃあ、餌代を人質にとって、全員軍属にしようとした頃に戻ってしまう。

「当然、軍属でない竜操者は竜の餌代を賄えない。そのため、裕福な商人や貴族たちの支援を得ることにした」
「それがパトロンか」

「いや、違うんだ。当時なんの規制もなかったから、だれでも好きに支援できた。というわけで、魔国や技国などに竜操者が流れてしまったんだ」

 それまで軍属でない竜操者たちは、遊んでいても竜の餌代は国が支給してくれる。
 竜を使って一儲けしよう。そんな竜操者が多数出た時代だったらしい。

 そんなときに支援金を減らされた。
 だったら我が国に来ませんか? 優遇しますよということで、他国に流れてしまったのだという。
 当時の議会、頭が悪いんじゃなかろうか。

「困り果てた竜国は、餌代を元に戻すか、別の案を考えるしかなくなった。でも、元に戻しても、この流れは止められそうにない。そう思った竜国は、思い切った策に出たんだ。竜の餌代を全面的に支給しない。つまり、逆転の発想だね」

 すべての竜の餌代を面倒みれば、軍部から文句が出た。
 一部だけ面倒みたら、軍属以外の竜操者たちが竜国を離れた。

 ならば、軍属も軍属以外も平等に、竜国はすべての面倒をみるのを止めようということになった。

「ふつう、みんな逃げて行くんじゃない?」

「だから手を打ったのさ。それがパトロン、そして王立学校の存在、最後に竜操者の地位向上だ」

 竜操者の餌代を完全に民間に委ねる。そのかわり、竜国がそれを管理し、パトロンたちにも利益が出るようにする。
 つまり、竜を竜操者とパトロンで共同所有しましょうというわけだ。

 竜国はパトロンの手綱さえ握っておけば、流出は避けられるし、パトロンは竜操者でなくても、竜を共同所有することができる。

 竜国と竜操者とパトロン三者に実益がある。

 ただしパトロン選びは慎重に行わなければならないし、竜操者の地位を向上させ、そのパトロンになることが名誉であると国民が理解しなければならない。

 こうしてパトロン制度の原形ができて、長い年月をかけるうちに完成されていったのだという。

「竜迎えの儀なんかは昔はなかったらしい。ここからひとりひとり竜を得に向かったらしいからね。だけど、ああいう国民を喜ばせることも必要だと何代か前の王が実施したらしい」

「あの見世物は、そういう経緯できたのか」

「詳しく話すと長くなるけど、こんな感じだ。ところでアンネラさん」
「……はい」

「この歴史からわかるように、パトロンの責任は重い。だから国も本気になって制度を作って運営しているんだ。なんとかなりそう、頑張れば大丈夫かもというくらいの気持ちならば、パトロンの審査は通らないし、たとえ通っても失敗すれば排除させられることになる。そうなったら、いくらキミが商会の会頭だとしても、竜のパトロンは、国が決めた別の者が担うことになる」

 それが一番あり得る話だとアークは言った。

 アンネラはさすがに理解したらしく「もっと真剣に考えてみます」と答えた。

「まだパトロンを決めるまで八ヶ月間はある。じっくり悩むといい」
「はい。助言、ありがとうございます」

「それと……」
「まだあるんですか?」

「昔はね、パトロンに相応しくない人が不審死を遂げたことが多かったんだ」



「………………………………」
 アンネラの顔が引きつっていた。
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