挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

233/660

233

 アンさんと衝撃的な会話をしたその日の夜。

 寮の庭に気配があった。
 襲撃者ではない。
 何度か感じたことがあるこの気配は、お姉さんのものだ。

 捕まえた襲撃者のことだろう。
 義兄さんではなくお姉さんが来たことは少し不思議だが、僕は黒衣に着替えて外に出る。

「なんですか?」
 わざとお姉さんの背後に現れた。

「きゃっ、いつ回りこんだのかしら」
 驚かせないでとお姉さんが言う。

「僕の担当は義兄さんになっていると思いましたけど」
「一応私もあなたの担当のひとりにはなっているのよ」

 そうだっけか。
 複数の担当がいる意味はあまりないと思うけど、義兄さんは学院の中に住み込みだし、それでかな。

「分かりました。それで今日の用事はなんですか?」

 庭の暗がりで僕とお姉さんが対峙する。
 今は月が出ていないので、ほとんど真っ暗だ。

「女王陛下から伝言があります。なるべく早いうちに顔を出すようにとのことです」
 ふむ、先日の件かな。
「承りました。明日の夜、向かいます」

「よろしくお願いします。それと捕まえた襲撃者の正体が判明しました。尋問で分かったことがありますので、今から伝えます」

「よろしくお願いします」

「まず、捕まえた商人の身元ですが、ハリム会頭の部下で間違いがありません。確認がとれました。解放するわけにもいきませんので、このまま処理することになりそうです」

「ハリムの部下で確定ですか。ロクなことをしないな、あいつは」
 ハリムは西の都の、五会頭のひとりだ。

 嫌なタイプなので、僕はもう二度と会いたくない。

「それとですね、行方不明の人たちですが、監禁している場所の詳細が分かりました。確認のために竜操者を派遣しました。確認しだい、現地の〈右手〉を使って救出作戦を敢行する予定です。一両日中には結果が分かるでしょう」

「救出作戦ですか。これで安心ですね」

「まだ無事かどうかは分かっていません。おそらく今夜忍び込んで状況を確認、明日には作戦が決行されるでしょうが、手練が混じっている場合は、外に応援を呼ぶこともありえます」

「なるほど。了解しました。他になにか分かったことはありますか?」

「ハリムの目的と楽園について少々……ですかね」
「楽園ですか」
 あの眉唾なやつだ。

「ハリムは『魔探またん』を追放して、彼が残したものを根こそぎ奪ったようですね。ですが本当に大事な情報は暗号化していたようです。さすがというべきでしょうか。つい最近、それの解読に成功したということです」

「暗号……アンネラはそのことを知っているのかな」

「分かりませんが、追放の詳細についていま調べている最中ですが、暗号化されたものはわざと残したことも考えられますし」

「ああ、そうか。罠、もしくは嫌がらせとかですか」

「ニセの情報も考えられますし、無駄な労力を使わせるつもりだったのかもしれません。逆に、自分が成し得なかったことを託したとも考えられます」

 どちらにしろ、暗号を書いた本人はもうこの世にいない。
「それで解読した中身は?」

「尋問した商人が知っていたのは三つですね。『楽園』、『霧の民』そして、『大転移』」
「なんか三つともまったく関係がないように思えますけど」

「どうでしょう。楽園は場所でしょうね。霧の民は人。大転移は時間か時期を表すのでしょうか」
「場所と人と時間か。どうだろ、なんか解釈が違ってないかな」

「これ以上は分かりませんでした。ハリム会頭が詳しい話を教えていないようでしたので」
「アンネラに聞いたら分かるかな」

「拐った人たちも知らなかったからこそアンネラさんを襲撃したわけですし、可能性としてはどうでしょうか」

 本当に重要な情報ならば、掴まった商会の番頭さんあたりが知っているはずだ。
 商会を継いだとはいえ、アンネラが知っていて、他の商会員がだれも知らないのはおかしい気もする。

「なるほど。今度、アンネラに聞いてみるよ」
「それがいいと思います」

「そういえば……」
「どうしました?」

「霧の民で思い出したけど、たしか去年の入学式が終わった頃だっけか、同室のアークが変なことを言っていたなと」
 ふと一年前のことを思い出した。

「なんと言っていたのでしょう」
「霧の民はもともと竜国の民だったと」

「それは初耳です。私が知っている霧の民は、天蓋てんがい山脈に住んでいて、魔道使いになるための草を採取する一族だというくらいですね」

 近年は魔国に吸収されて、純粋な霧の民はもういないと言われている。

「霧の民は旧王都から西へ向かった人たちだってアークは言っていたね」
「アークさんは、あの伊達男みたいな人ですよね」

 お姉さんは何度もアークに花束を届けたことがある。
 たぶん相手の女性はみな違ったんだろうな。あまりいい印象を抱いていなさそうだ。

「アークはヒューラーの町出身なんで、旧王都に詳しいんだよ」
「ああ。たしか旧王都は、ヒューラーの北にありましたね」

「そういうこと。まっ、別に関係がある話じゃないと思うので忘れていいと思うよ」

「念のため、頭の隅に留めておくことにします。……私からの報告は以上になります。では女王陛下への謁見、忘れずにお願いします」

「分かった。必ず明日いくことにするよ」
「それでは、女王陛下のために」

「ああ、女王陛下のために」
 僕はお姉さんと別れて部屋に戻った。

 救出作戦が成功したら、アンネラに話ができる。
 そのとき、ついでにアンネラのお父さんが書いた暗号についても聞いてみようかな。

 暗号化されたものについて、どうやって話を切り出せばいいのか分からないけど。

「それと霧の民か」
 これもアークにもう一度話を聞いておくかな。


 そんなことを考えながら僕は寮に戻って就寝した。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ