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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 襲撃者の処理はお姉さんたちに任せた。
 僕ができることは何もない。

 女王陛下への報告もしてくれるという。
 問題は、今回のことをアンネラにどう説明するかだ。

「もう少し状況が分かってから話した方がいいかな」

 軽く尋問して得られた結果だけでは、不確定要素が多すぎる。
 ぬか喜びさせてあとでがっかりさせるのも忍びない。

 翌朝、管理人さんが手紙を持ってきた。
 アンさんからだ。

 いま気づいたけど、アンネラとアンネロッタ。なんとなく読みが似ている。
 そんなことを考えながら、手紙を読む。

「えーっと、できるだけ早く会って話がしたいか。今日は大丈夫かな」

 予定を確認した。
 演習が入っているとだいたい夜までかかってしまうが、今日は終日空いている。

 授業が始まると、王都の外へ出る機会が減るからか、この長期休み帰還中になにかと演習が入っている。

 拐われた人たちのことも気になったが、アンさんも僕に話があるようだ。
 誘拐については、今はどうしようもないことだしな。

 アンさんへの返事には、今日会えると書いた。
 あとで王宮に迎えに行こう。



「お時間をいただきまして、ありがとうございます」

 久しぶりに会ったアンさんは、どこかよそよそしかった。
 式典に参加してばかりなので、その雰囲気を引きずっているのかもしれない。

「リンダから聞きました。ずいぶんと忙しかったみたいですね」
「はい。それでも昨日でほとんどが終わりました。学院の入学式が終わったらゆっくりできると思います」

 そういえば、アンさんは入学式で祝辞を述べるんだっけか。

「周囲の目が変わったんじゃないですか?」
 リンダは避雷針ができたと不適切なことを言っていたが。

「そうですわね。でもそれは覚悟していたことですし」

 名前がアンからアンネロッタに変わり、昨今話題の兎の氏族に連なる者だったと判明したわけだ。
 それを知った周囲の反応はどんなものだったのだろう。

「今後は親善大使としての仕事は増えるんですか?」
「事前に出席して欲しいとの声をいただいております。大きな催しを優先して引き受けようかと思っていますわ」

 学業に差し障りない範囲で頑張るそうな。
 アンさんは優秀だから、平気なのだろう。

「無理しないで下さいね」
「ありがとうございます。……それでですね、今日お会いしてお話したかったのは」
 アンさんが真剣な顔をした。

「何か起こりましたか?」
 アンネラのこともあって、不安が頭をよぎる。

「あの……わたくしたちの、その、こ、婚約発表なんですけど」
「……はい?」

 アンさんがもじもじしながら切り出した話は、僕が予想していないものだった。

 先日、僕の両親へ挨拶した話は、すでに氏族に伝えたらしい。

 技国の方でも、アンさんの留学と婚約のことはそろそろ公表するつもりがあるらしい。

 留学の件は防犯上のこともあり、ずっと伏せられてきた。
 王立学校内に私的なボディーガードを置けないため、どうしても秘密が漏れるのを防ぎたかったのだという。

 兎の氏族内のトップに近い人たちしか知らされなかったが、それはもう過去の話。
 竜国のバックアップだけでなく、強力な竜を持つ竜操者が後ろ盾になっていることが分かれば、滅多な手出しはできなくなるとの判断が成されているらしい。

 だが、まだ公式に発表はされていない。

「もしかして、発表するんですか?」
 まだ早いのではなかろうか。

「その方向で話が進んでいるようです」
 政治的な思惑もあるので、僕らの一存ではどうしようもないらしい。

「属性竜ならば、町一つ落とせると。でしたら、タイミング的には早いほうがいいのではないかと意見が出ているのです」

 アンさんの安全を考えると、ということらしい。
 アンさんに何かあったら、報復で僕が町を壊滅させるということだろうか。

 この温厚な僕がだ。
「つまり、シャラザードの存在が抑止力になるということですよね」
「はい。シャラザードさんの噂も技国に届いていますので……」

 どんな噂だろうか。

「……分かりました。詳しいことが決まったら、一度知らせてもらえると助かります」
「はい。一応、四月になったら発表するつもりだと聞いています。兎の氏族のすべての町にです。それと各氏族へも」

 つまり技国全体に向けて、公式発表するという意味らしい。
 大事おおごとだ。

「それとですね。先日、実家から手紙が届きまして、八月の長期休暇のときに内輪でパーティをしたいと」
「内輪ですか?」
 どのくらいの内輪だろう。

「内輪です。兄の結婚式よりかは小規模になると思います」
「どんだけですか!」

 あれより小規模って……あれ自体がかなりの規模だから全然安心できない!

「それで日取りはこっちで決めるから、レオンくんとご両親の許可を早めにとっておけと言われました」
「………………」

 なるほど。
 うん、今から準備して八月か。
 氏族長はギリギリだと言うんだろうな。

「でも今年は技術競技会の年ですよね。良いんですか? 忙しいと思いますけど」

 技術競技会は八年に一度開かれる祭典だ。
 今年の十月に行われる。

 内輪とはいえ、八月に婚約パーティをやっていていいのだろうか。

「競技会の会場は大山猫の氏族の領地ですから、わたくしたちは行くだけですし、研究開発は別の部署がやっていますので、問題ないと思いますわ」

 そういえば、序列一位は大山猫の氏族だったな。
 女王陛下が言うには、今あそこは商人たちが逃げ出して、内情はもうボロボロらしいけど。

「分かりました。僕の方は問題ありません。八月の長期休暇中は、月魔獣狩りに行くか、パン焼きを一日中するつもりでしたので」

「ありがとうございます。そのように伝えておきます。ご両親の方には実家から直接話が行くと思いますわ」

「分かりました。僕からも手紙を書いておきます」

 しかし婚約か。四月か。
 すぐだよ!

 実際の結婚はまだ先だけど、えらい事になったと正直思っている。

 世の中の男性諸氏は、こういうときどうしているんだろう。
 僕の場合は、苦笑いと困惑、そして照れくささが同居している感じだが。

「それとですね……」
「はい」

 まだ何かあるのだろうか。

「そのうちレオンくんの絵姿とか、黒竜――シャラザードさんの模型も作って売りだそうかと祖父が申してまして……」
「………………」

 祝い事なので、かなりの売り上げが見込めるらしい。
 さすが技国。
 ものづくりに定評がある……って、僕の絵姿とシャラザードの模型。

 売り出すのか……マジで?

 アンさんの顔を覗き込むと、どうやらマジらしかった。
 毒を食らわば皿までの気持ちで、僕はそれも了承した。

 そのうち、シャラザードの姿絵を写しに来るらしい。


 まあ、いいんだけど、シャラザードの顔、怖いよ?

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