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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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「おい、失敗だ。逃げろ!」
 駆け込んできた男に馬車の中にいた者たちが驚いた。

 御者が慌てて外に出る……その前に僕は姿を現した。
「お勤めご苦労さん」

 怪我をしながら僕をここまで導いてくれた男の首を掻っ切る。
 誘導役を全うしてくれたことに感謝だ。

 男から噴き出した血に驚愕したのは四人。うちひとりは御者の格好をしている。
 魔道使いのローブを着ている者は他にいない。ここにいるのはどんな連中だ?

 御者の心臓に小剣を突き刺し、一番若い男の首を斬った。
 残ったのは壮年の男が二人。いまだ驚愕から立ち直れていない。

 魔道使いでないのならば、脅威ではない。
 二人は両膝を砕くだけにとどめておいた。


「……さて、義兄さんを呼ぶか」
 痛みにのたうちまわる二人を無視し、外に出て合図を送る。
 そっと義兄さんが入ってきた。

「周囲を探ったが、ここを見張っている気配は感じなかった」
「三人殺して二人残したけど、ここにいた人たちって素人っぽいんだよね」

「たしかに荒事に向いていなさそうな雰囲気だな」
 生きている二人は上品な服を着ている。一人は口ひげを生やして、商人のような感じだ。いや、商人なのか?

「今度は僕が周囲を見ているよ」
「分かった。尋問はおれがする」
 義兄さんは一人を荒々しく起こし、馬車の座席に座らせた。

「さて、学院の寮を襲った理由を話してもらおうか」
「な、なんのことだ? 我々はただ……ぎゃぁっ!」

 義兄さんの質問にとぼけようとしたので、僕が手首折った……つもりだったが、義兄さんも反対側を折ったようだ。

「骨はいくらでもあるんだ。どれだけ折れたら正気を無くすか、実験してみるか?」
「ちなみに僕は止めないからね」

 僕と義兄さんの言葉に両手首を折られた男は震え上がった。
「もう一度折ろうか」

「了解。どこを折ればいい?」
「好きな所でいいぞ」

「……ってくれっ! はっ、話す……話すから折らないでっ!」
 意外と早く落ちた。

「嘘ついたら折る。言いよどんでも折る。包み隠さず答えろ」
 男はコクコクと頷く。
 残りの男は、隣で震えている。そんなに骨を折られるのが怖いのか?

 男たちの狙いはアンネラで間違いなかった。
 死んだ魔道使いは、結界魔道の使い手で、結界破りの第一人者らしい。

 高額で雇って連れてきたが、毎晩学院の結界破りに挑戦し、抜けるのに五日もかかったとか。

「それでアンネラをどうするつもりだったんだ?」
 義兄さんの質問に、男たちは顔を見合わせる。
「折るよ」

「言う……言います」
 観念したようだ。
 暴力に接し慣れていないのが丸分かりなので尋問も楽だ。

 尋問に慣れている人は、世の中にそれほど多くないと思うけど。

 分かったのは、彼らは商人で、その中でも下っ端だということ。
 ふたりは、西の五会頭のひとり、ハリムが経営する商会のひとつに属していた。

 狙いはディーバ商会の会頭。
 竜国に向かった時点で『魔探またん』のデュラル・ディーバが亡くなったという情報は得てなかったらしい。

 レジィの町にディーバ商会があることを突き止めてデュラルの確保に向かったら、本人は数年前に死亡。
 商会も王都に向かって出発した後だったという。

 途中の街道で襲い、近くの町で軟禁しているという。
「ディーバの娘が商会を継いだというので、教会に行ったんだ」

 教会を待ち合わせ場所にしていたからそれは分かる。
 だが、ここでも一足違いで、アンネラは学院の寮に入ってしまった。

 しかも結界が強力で手だしができない。呼び出しもできないし、そもそも顔を知らない。
 寮に潜入して、管理人から部屋の場所を聞き出して連れ出すつもりだったらしい。

「これがその逃走用の馬車なわけか」
 どうりでおんぼろの割には大きな馬車を用意したと思った。

「アンネラを狙った目的は?」

「『魔探』が持っている地図だ」
「地図?」
 なんだそれは。

「もう少し詳しく話せ」

「詳しいことは知らされていない。最近商国で楽園の地図の欠片が持ち込まれた。楽園は『魔探』が探していたし、『魔探』が残りの欠片を持っていると言われている。だからそれを奪って来いって言われたんだ」

「だれにだ?」
「…………」
「言え。ここまで喋ったんだ。全身の骨を折られてぐにゃぐにゃになりたいのか?」

「…………会頭だ」
「ハリムのことか?」
「……そうだ」

 やっぱりハリムか。
 あれは敵だな。今度会ったらしっかり排除しよう。

「ハリムが楽園を捜している。その地図の欠片をディーバ商会が持っている、そうだな」
「そうだ」

「楽園とはなんだ?」
「知らない。私も初めて聞かされたし、『楽園の場所を記した地図』と言えばデュラルに通じると言われた」

 かなり情報集めが杜撰だけど、ハリムがその楽園の地図の情報を得たのがつい最近なのかな。

「よし、あとは専門の者たちに任せても大丈夫だろう」
 義兄さんがそう言うので、僕らは尋問を切り上げた。

 僕が寮に戻ってお姉さんに事情を話す。

「あら、でしたら報告が必要ですね。今から王宮に行って来ます」
「お願いします。ついでに外の死体もお願いしますね」

 お姉さんは頷いて行ってしまった。

「……それにしても楽園ね。なんだそれは」

 楽園についての情報を得るために人さらいまでするのか。
 そんな眉唾な話に本気になる大人がいるとは。

 楽園の価値がどのくらいあるのか分からないけど、五会頭が犯罪をしてまで求めようとするのだろうか。


 その考えが、僕には理解できなかった。

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