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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 女王陛下は捜索を約束してくれた。
 これは大きな助けだ。組織的に動いてくれれば、情報も集まってくるだろう。

 翌朝、僕の知り合いが行方不明の人たちの捜索をしてくれることをアンネラに告げた。
 知り合いというか、女王陛下だけど、間違ってないよな。うん。

「ありがとうございます、レオン先輩」
「事故か事件かも分からないけど、可能な限り調べてくれるらしい」

「本当ですか? きっと見つかりますよね」
「そうだな、大丈夫だと思う」

 なにしろ、女王陛下が探すと言ったんだ。
 表だけでなく、裏も使うだろう。

 各町にいる〈影〉は、不審な者たちをいつも目を光らせている。
 きっと見つけ出してくれる。

「そこで聞きたいのだけど、いいかな」
「はい、なんでしょうか」

「アンネラのお父さんは『魔探』で合っている?」
「…………!? 知っていたんですか?」

「捜索を頼むときに聞かされた。たぶんそうじゃないかって」
「はい……私の父は西の都の、五会頭のひとりでした。商号は『魔探』で合っています」

「だとすると、行方不明はそれ絡みの可能性があるんだ」
「えっ、でも、父はもう亡くなったし、父はもう商国に足を踏み入れることはできないんですよ」

「それでもだ。竜国の首都付近で、大規模な盗賊団はいない。はっきり言えば、十何人も行方不明になる事自体、現実ではありえないんだ」

 月魔獣ならば必ず被害の痕跡が見つかる。
 十数人がだれも逃げられないような盗賊団もありえない。

 商人どうしのあいだで話題になっていないならば、他の可能性を考えるべきだ。
 ピンポイントでアンネラの仲間を狙ったと考えるのが自然だ。

 だがどうして? その答えは『魔探』が関係しているのではないか。僕はそう思っている。
 女王陛下もだ。

「本当に何か心当たりはないかな。これは大事なことなんだ」
「いえ、まったく……ごめんなさい」

 表情から、アンネラに心当たりがないのは分かる。
 だが本当にそうだろうか。

「もし何か思い出したら教えてほしいんだ。それが行方不明の人たちを助けることに繋がるかもしれない」
「そうですね。がんばって思い出してみます」

 僕はアンネラと別れた。

 三日後にはもう、学院の入学式だ。
 なんとかそれまでに見つけたい。

 そんなことを思っていると、おあつらえ向きの者がやってきた。



 その日の夜。
 寮の外に気配を感じた。

 押し殺したような気配がひとつ。
 もうひとつは気配がたけっている。

 一人は隠す気がゼロだ。
 このふたつの気配はお姉さんのものではない。
 以前現れた〈左手〉のヒフとも違う。

「あれ? ひょっとしてこれは」

 僕は黒衣に着替えてそっと闇に溶けた。

 闇の中から見ると、寮の庭木の影に二つの影。
 一人はゆったりとした灰色のローブ。魔国の魔道使いだ。

「もうひとりは……殺気を抑えられないのか。荒事専門の人かな」
 実力をみせつけるためにわざと殺気を抑えない人がいる。

 変に実力を隠す人より扱いやすいが、侮れない実力を持っているのもこういうタイプだ。
 事情を聞くために、どっちを残せばいいかな。

 普通は事情を知っている方、つまり魔道使いを残すのだけど。
 僕は魔道使いの後ろに回り込み、そっと姿を現した。

 気配を消したままの僕に、魔道使いはまだ気づかない。
 音を立てずに、剣で魔道使いの首を薙いだ。

 月明かりのない闇夜。
 真っ黒な血の匂いで、もうひとりの男が異常に気づいた。

「よっと!」

 剣の腹で首筋を叩き、怯んだ隙に片足の膝を蹴りぬいた。
「ぐわぁっ」

 よし、気絶していない。
 肩を押さえ、膝を乗せる。
 そこで腕を取った。ここまでは一連の動作だ。

 腕を取って分かった。かなり筋肉質の男だ。
「声を出さないでね。出すことこうだから」

 片腕を折った。
 うめき声を上げたので、顎を蹴りぬく。

「あれ? 結構頑丈?」

 気絶させるつもりで蹴ったのだけど、耐えられた。
 骨を折った痛みで耐えたかな。

 仕方がないので、首の裏をかかとで蹴る。
 それでようやく男は気絶した。

「……さて。縛って、義兄さんに連絡を入れるか」
 義兄さんの部屋は寮の一階にある。



「……というわけなんだ」
「それで男はそのままなのか?」

「たぶん一時間か二時間で気づくと思う」
「よし、分かった。一応シルルに知らせてくる」
 そう言って義兄さんは出て行った。

「さて、時間が空いちゃったな。どうしようかな」

 学院の敷地には結界が張ってある。
 ここに入って来られるのだから、僕が最初に首を切った男、相当な魔道使いだったはずだ。

 襲撃者の狙いはたぶんアンネラ。
 それ以外だったらびっくりだが、一応違う場合も想定しておこう。

 およそ一時間後、気絶させた男が目を覚ました。
 最初周囲を確認し、自分の身体を動かそうとして困惑する。

 ロープで縛っておいたし、男の片腕と片足は折れて使いものにならない。
 男はずるずると庭を這いずって、死んだ魔道使いのもとへ行く。

 一生懸命口で魔道使いのローブの下をあさり、ナイフを見つけると、それでロープを切った。
 うん、予想通り。

 立ち上がった男は痛みで顔をしかめてから、木々の中に消えていった。
 目的が達せられないと思って逃げたのだろう。

 僕と義兄さんがそれを追う。
 急遽呼びだされたお姉さんは寮で待機だ。

 襲撃の第二陣が来ないとも限らない。来たら花火で知らせることになっている。
 ここの結界を抜けられるとは思えないけど、それは念のため。

 学院を脱出した男は人のいない方へと進んで行き、古びた馬車の中に入っていった。
 仲間が近くで待っていたようだ。
 場所は分かった。

 僕は義兄さんに合図して、ひとりで向かった。

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