挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

229/655

229

 行方不明事件を調べるため、すぐに竜導教会へ行ってみた。

 アンネラは入寮するまでここで暮らしていた。
 竜操者としての常識を身に付けるため。そして戦場に耐えられる体力を付けるため。

 アンネラの父親は商国から追放されたと言っていた。
 何があったか分からないが、父の跡を継いで商会を切り盛りしようと頑張っていた矢先に竜紋が発覚してしまっている。

 本人は竜が商売に使えると喜んでいるようだが、実際どうなるか分からない。

 僕もパン屋になる夢があるが、いまは先延ばしになっている。
 できることならなりたいが、周囲がそれを許さないだろう。

 アンネラにとって、竜操者の先の道が望んだものになるのか。
 それは僕も分からないし、アンネラ本人もまだ何も分かってないだろう。

 竜導教会のガイスン本部長は留守だった。
 学院の入学式も近いし、王宮でも多くの儀式がある。
 本部長職は忙しそうだ。

 かわりにレジィの町に向かった竜操者に会わせてもらった。
 オータンという、まだ若い竜操者だ。

「用事があったのは別の町だったのですが、レジィの町は通り道だったので帰りに寄ったのです」

 アンネラの商会仲間は王都に来たら、この教会を尋ねる予定になっていたらしい。
 手紙もこの教会を通してやり取りしていたらしい。

 尋ねてくるはずの者たちが行方不明。
 不審を覚えたのは教会の人も同じだったという。

「レジィの町を発ったのは十日以上前です。正確には十二日前になります」
「馬車で移動した場合、何日くらいで着きますか?」

「四日といったところでしょうか」
「なにかトラブルで遅れているということは考えられますか?」

「それはないですね。街道は他の馬車も通りますし、だれかひとり町に走らせればいいのです。トラブルを知らせることは可能だと思います」

 それはそうだ。
 アンネラの仲間は十人以上いる。
 全員が同時に動けなくなることも考えにくい。

「途中に町がありますよね。そこは寄りましたか?」

「いえ、寄っていません。王都に向かう街道も複数ありますし、町も同じです。小さな村も入れれば、それなりの数になりますからね」

「なるほど、それはそうですね」

「馬車は二台に分乗して出発したそうです。商人ですから荷も載せてあるでしょうが、二台連なった馬車なら、覚えている人がいるかもしれませんね」

「そうですね。ありがとうございました」
 僕は礼を言って教会をあとにした。

 竜国の街道は安全だ。
 町から町へひとっ飛びできる竜がいるのだ。悪人は逃げられない。

 それに貧乏商人を襲う理由も分からない。
 これがアンネラ本人が行方不明ならば竜紋関連かなと想像がつくが、そうではない。

 狙われたのは商人たちの方だ。
 考えても分からないので、夜を待って女王陛下のもとへ向かうことにした。

 こんなとき全赦ぜんしゃは便利だ。

               ○

「珍しいわね」
 女王陛下はコロコロと笑う。

「女王陛下もおかわりなく」
「あらお上手だこと。……それでどうしたのかしら。レオンはよほどのことがない限りここには来ないわよね」

 見透かされている。
 と言っても〈右手〉は頻繁に女王陛下の御前に顔を出すことはないのだけど。

「先日見つかった竜操者アンネラについて、お骨折りいただき誠にありがとうございます」

「いいのよ。竜国のためですもの。レオンが見つけてくれてよかったわ。何も知らない状態で竜が現れたら大変ですものね」

「その通りかと思います。……それで今回、アンネラの周囲に問題が発生しました」

「何が起きたのかしら」
 女王陛下に促されて、僕は行方不明の件について一通り話した。

「………………」
 女王陛下は何かを考えている。

 再び動き出すまで長い時間がかかった。
 それほど重大事だったのか?

 十数人が行方不明というのは大事だが、女王陛下がそれほど長い間考えこむことではない。

「レオンはアンネラ・ディーバの名前を聞いてなにか思うところはあるかしら」

 アンネラのフルネームを女王陛下が告げた。
 だが正直、なにも思い浮かばない。

「いえ、寡聞にして……申し訳ありません」
「そう。『魔探またん』に心当たりは?」

「……いえ。いや、どこかで聞いたことがあります」
 どこだったかな。

「『魔探』のディーバ……西の都の、五会頭のひとりだった男よ」
 西の都……商国だ。アンネラは、父親が商国を追放されたと言っていた。

「父親は五会頭のひとりだったのですか!? ……あっ、ハリムの前か」
 思い出した。たしか技国でチラッと聞いたことがあった。

 ハリムは僕が敵認定した俳優みたいな伊達男。
 名前をハリム・イーヴァと名乗っていた。商号は『華蜜はなみつ』。

「知っているようね。ディーバ商会に取って代わったのはハリム商会よ」
 なんてこった。本当にアンネラは五会頭の娘なのか。

 追放されて、落ち延びた先で小さな商会を開いた?
 そう考えると、アンネラもずいぶんと流転したものだ。
 五会頭の娘から小さな商会の主。そしていまは竜の学院に通う竜操者。

「ディーバ商会が何をやって凋落したのか、表向きの理由でないものがあるのかしら。これは調べた方がいいわね」

 女王陛下はそこまで言って黙りこんだ。

 僕は最初、竜国が規制緩和をして反発した商人たちが暴走したのかと予想した。
 女王陛下のもとに集まった情報では、商国由来の商人たちが団結する動きはあるものの、暴力的なものは見られていないとのことだった。

 よほど追い詰められないかぎり、そういった手段に出ることはないだろうと。
 つまりアンネラの仲間が狙われたのならば、それなりの理由があるわけだ。

「妾も気になるけど、事故の線もまだ残っているのよね。その辺を含めて調べさせましょう」
「よろしくお願いします」

「いいのよ、もしかすると『魔探』の遺産が見つかるかもしれないものね」
「……えっ?」

 女王陛下との謁見はそれで終了した。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ