挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

226/657

226

 学院の長期休み中は有意義に過ごしたい。
 というわけで僕は、一日中『ふわふわブロワール』でパン屋のアルバイトをしている。

「これお願いね」
 ミラは僕に大量のパンを手渡す。配達に行けというのだ。

「ずいぶん多いな」
 背負いカゴと手提げカゴ、それに頭の上に乗せるカゴもあった。

「母さんが会合に出ちゃって、クシーノひとりで店番なのよ。あの子は優秀だから大丈夫だと思うけど、わたしもすぐに帰ってやらなきゃ。じゃ、お願いね」

 ミラはリヤカーを引いて行ってしまった。ミラもまた配達である。

 この所、王都に流入してくる人が増えた。
 女王陛下が新しい商人を優遇したことで、最初に魔国から多くの商人が集まった。

 特需にめをつけて職人もやってきた。
 活気づけば、そのおこぼれにあずかろうと、様々な労働者たちがやってくる。

 つまり、王都はいま、人でごった返しているのだ。
 活気あふれる都市というやつである。

「……で、問題は食糧か」

 人が増えて、治安の悪化と食糧不足が表面化してきた。

 治安は町の警邏兵を増員して事にあたるらしい。
 犯罪が割にあわないと分かれば減るだろう。

 問題は食糧だ。食堂は急に増やそうとしても準備に時間がかかる。
 町の露天などで対応しても抜本的な解決にはならない。

 職人や労働者が増えたが、彼らはただ消費するだけの存在である。
 食糧の確保とそれを売る店を増やすことは急務だと思える。

「新しい店ができても、雑貨を売る店だったり、服を売る店だったり、貴金属を扱う店だったりだからな……配達がが増えるわけだ」

 最少人員で王都に来ているので、交代で食事もままならない。
 ゆえに配達に頼るしかない。

『ふわふわブロワール』にもその余波はやってきた。
 どれだけ配達が増えたかというと、この数日でミラの許容量を越えてしまった。

 どうしても食事時というのは決まってしまう。
 配達が集中する朝や昼はてんてこ舞いだ。

「こんにちは、『ふわふわブロワール』です。ご注文のパンを届けにまいりました」
 僕が訪れたのは、金属加工品を売る店だった。

 数日前にオープンしたらしい。まだ片付いてない店内が見て取れる。

「ありがとう。そこへ置いておいてくれ」
「かしこまりました」

「ああっ、ちょっと!」
「はいっ?」
 出ていこうとする僕に店主が声をかけた。

「この辺に飾り紐を扱う店はないかな。在庫を切らしているんだけど、まだ王都に不慣れでね」

「飾りヒモですか。……だったら少し遠いですけど、ここから住宅街の方に向かっていくと公園があるんですが、その周囲に飾り細工を売るお店があります。ヒモもあったと思いますよ」

「そうかい。助かるよ」
 店主はニコニコとお礼を言った。

 僕も王都の店には多少詳しくなった。
 リンダやアンさんに連れられていろいろ回ったからだ。

 この調子でもう一年もいれば、ここも故郷として懐かしく感じるようになるのだろうか。

 二件目は娯楽本を売る店だった。
 娯楽本は簡単な装丁そうていで作られており、値段も安い。
 僕がパンの配達に行ったときは、何人かのお客さんが来ていた。

「明日も頼むよ」
「分かりました。ありがとうございます」

 女王陛下の政策が功を奏しているようで、利に聡い商人たちがこぞって集まってきている。

 こういうのは、最初に動いた者が儲かるようにできている。
 儲かるという噂を聞きつけてからおっとり刀でやって来ると、もう旨味が残ってないということもある。

 僕の実家は技国式のパン屋だが、似たような店は他にない。

「儲からないと思われているんだろうなぁ」
 技国式は高くて量が少ないパン。悲しいことに、そう思われている。

 儲かると思われたら、それはそれで競合店が増えるのだろうけど。

「ただいまー……ん?」
 すべての配達を終えて店に戻ると、ミラとファイネさんがなにやら言い争いをしていた。
 仲の良い母娘で言い争いとは珍しい。

「どうしたんです?」
 裏でこっそりとロブさんに聞くと、苦虫を噛み潰した顔で答えてくれた。

「今度新しく竜国商業同盟ってのが出来るんだと。それに入るか入らないかで揉めているんだ」

「竜国……商業同盟ですか?」
 なんだそれ?

「パン屋にはパン屋の組合があるよな。そうじゃなくて、都市全体でひとつの組合みたいなもんだな。竜国のいろんな商売人を集めて同盟を作っちまおうってことなのさ。……で、それの名前が竜国商業同盟ってんだとさ」

「へえ……いろいろ変わって来ましたね。それで、ファイネさんとミラが言い争っているのって」

「ウチのはみんなと一緒に入っちまった方がいいって言うんだが、ミラのやつはいくつも入ったら大変だって反対している」

 なるほど。

「レオン、おまえはどう思う?」

「うーん、僕じゃ詳しい話はなにも分からないので。……でも、女王陛下が率先して動いている政策のひとつですよね。だったら加わった方がいいんじゃないですか? 少なくとも、後から入ると肩身が狭くなるかもしれませんし」

「そういう考えもあるな」

 さてどうするかねと、ロブさんは仕込みをしながら独り言をいうつぶやいていた。

 竜国商業同盟……なんともデカイ話だ。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ