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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 シャラザードをぎゃふんと言わせる作戦は散々な結果に終わった。
 まさかシャラザードが圧勝するとは思わなかったし、僕がソウラン操者と戦ったのも想定外だ。

 模擬戦には負けて、相手の前歯を折ってしまうなんて……。
「本当に申し訳ありません」
 平身低頭して謝った。

 ソウラン操者は気にしなくていいと言ってくれたが、僕は申し訳ない気持ちで一杯だ。
 前歯が欠けたことでイケメン度がかなり下がってしまった。

「同じ属性竜を持つ者どうし、これからも切磋琢磨していこう」
 イケメンは、言うこともイケメンだった。

「そういえば、一度お聞きしたいことがあったんです」
「なんだい?」

「属性技なんですけど、あれって……被害を減らす方法はないでしょうか」
 シャラザードの雷玉は危なくて使えない。

「うーん、難しいかな。僕の場合もそうとう苦労したんだ。ブレスが炎の絨毯になってね、辺り一面火の海になってしまった」

「それ、どうなったんですか?」
「中々消えなくてね。結局雨の日にようやくかな。……陰月の路付近でやったからよかったものの、扱いは慎重にしないと実感したね」

「あれ? たしか決して消えない炎を吐き出すんでしたよね」
 王都の噂ではそうなっていたはずだ。

「うん。僕もそのままじゃいけないと思って、ブレスを圧縮する練習をしたんだ。結果、直線状に伸びる炎の滝にすることができたわけだけど、濃縮したせいか、密度が濃くってね。消えないんだ」
「はー」

「しかもなんでも溶かすものだから、あちこちに大穴が開いてね。それで有名になってしまったのさ」

 空から斜めにブレスを吐くため、地上に洞窟ができあがるらしい。
 いまは全部埋めたそうだが、その痕跡が噂のもとになったのだという。

「シャラザードの場合、最初から圧縮してありますからね。これ以上は無理かな」

「女王陛下は海に行ってブレスを吐かせているよ。白姫はなんでも氷らせるから、海上に氷の板ができあがるね。数キロ四方にわたって島ができあがると考えてごらん」

「……それはまた豪快ですね。やっぱり氷も使い所が難しいですね」
「単純に人相手に使おうものなら、同じ竜国内からも非難されそうだね」
 たしかに無慈悲すぎるかもしれない。

 やはり属性竜のブレスは、人相手には封印した方が良さそうだ。

 今日はロザーナさんの私物を引き取りに行って、夜は模擬戦。
 そろそろ僕も眠くなってきた。

「じゃ、またやろうか。青竜の傷を治さないといけないけど、近いうちにぜひ」
「はい。そのときは胸を貸してください」

 僕はソウラン操者と固い握手をして別れた。



「あっ、レオン様っ!」

 翌朝、寮の一階でアークと雑談をしていると、階段を下りてきたアンネラと目があった。
 昨日は盛りだくさんな内容だったため、実はまだ眠い。

「久しぶり、アンネラ。無事入寮できたようだね」
「その節は、骨を折っていただいて、どうもありがとうございました」

 深々と頭を下げるアンネラに、一階にいた数人の同級生たちがこちらに注目する。もちろんアークも。

「一回生だね。キミの知り合いかい?」
「うん。紹介するよ。彼女はアンネラ・ディーバ。月魔獣狩りに行った時に知り合ったんだ」

 細かいことは省くことにした。説明が面倒くさい。
 それになぜか注目されている。

「そうだったのか。おれはアーク・ロイスタ。レオンとは同室なんだ」
「はじめまして、アークさん。アンネラです」

「キミはどういう出会いをしたんだい? キミが様付けで、おれがさん付けなんだが」
「すみません。変な意味はないんですけど、レオン様には命を助けていただいて……」

「月魔獣狩りに行ったときだから」
「……ああ」

「命を助けたって……まさか」
「月魔獣に襲われててね。現役の竜操者がいたんだが、月魔獣の数が多くて劣勢だったんだ」

「それを助けたと……キミはまた随分と無茶な狩りをしているね。まだ三月だよ」

「シャラザードがどうしても行きたがるんだよ。僕が望んだわけじゃない」
「いくら強い竜がいたって、おれらはただの人なんだ。ちょっとしたミスで死ぬんだから、単独の狩りはほどほどにな」

「心配してくれてありがとう。充分気をつけるよ」
「その方がいい。それにしても、アンネラ嬢は陰月の路にどうして?」

「アーク先輩。私のことはただ、アンネラと呼んでください」
「分かった。なら、アンネラさんでいいかな」

「はい。よろしくお願いします、アーク先輩」
「ならば、僕のこともレオン先輩と呼んでほしいな。様を付けられるような人間じゃない」

「様付けか……それもまた面白いんじゃないのかい?」
「ホラッ、こうやってアークが面白がるからね」

「分かりました、レオン先輩。……それで陰月の路ですけど、交易のための荷を運ぶ途中だったのです。まだ私の商会は専門の荷がなくて、ルートも決まってなかったので」

「扱う品目が決まってないのかい? 商会を立ち上げたばかり?」
「商会は父のものだったのです。私がそれを継ぎました。父の専門の荷は……そうですね、珍しいものでしょうか」

「……ん?」
 アークは首をかしげた。僕もわからない。珍品を扱う商人ということだろうか。

「珍しいものを好事家に売り込むような感じ?」

「売り先はそういうものもありますけど。父がやっていたのは、天蓋てんがい山脈に入って珍しい物を探したり、陰月の路の影響で使われなくなった廃墟から古いものを見つけたりですね」

「だから陰月の路付近にもいたのか」

「はい、レオン先輩。父はできるだけ陰月の路に近い拠点がいいとあそこに決めたようです。それにあの近くを通る荷運びはだれもやりたがらないので、儲けが高いですし、失われた町や建造物を見つけるいい機会でもあります。あのときは運悪く月魔獣が出てしまいましたが」

「僕が聞いた限りだと、ちょうど月魔獣の被害が増えて、巡回が間に合ってなかったんだ。あと一日でも遅かったら退治されていたんだろうけどね」

「なるほど。しかし今時珍しいな。アンネラさんみたいなのを探索商人と言うんだ。おれが小さい頃、一度だけ探索商人に会ったことがあるよ」

 ヒューラーの町は竜国の七大都市に数えられるものの、陰月の路には近い。
 それでも町の規模からすれば、必要なものはなんでも手に入る。

 アークが言うのが確かならば、探索商人がヒューラーの町に来ることもあるだろう。

「以前は父も大きくやっていたようですので、アーク先輩の町にも商会の人間が来たかもしれませんね。そうだ、レオン先輩」

「なんだい?」
「結局私だけ王都に来ることになってしまいましたが、商会の仲間たちもこっちに出てくることになったんです」

「あの時の人たちかな」
 馬車の中には十数人の人がいた。

「そうです。私が二年間こっちにいることが決まったので、どうせなら、王都で商売をしようと」
「そうなんだ。王都で商売は大変かもしれないね」

「競争が激しそうですけど、いまちょうど新規商会の受け入れが緩和されているそうなんです。その話をしたらノリ気になってしまって……」

 新規商会の受け入れ……これは女王陛下が行った政策のひとつだ。
 商国の息がかかっていない商人たちを優遇して、商国の息のかかった商人を追いだそうとしている。

「商売が軌道に乗るといいね」

「はい」
 アンネラは嬉しそうに笑った。

 その後、入学式についてのアドバイスとか、学院の外に出るときは私服に着替えた方がいいなどを告げて、僕らはアンネラと別れた。

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