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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 シャラザードを戦わせようと思ったら、なぜか僕も戦うことになった。
 解せん。

 だが、ソウラン操者は属性竜を駆る僕の大先輩であり、否は言いづらい。
 やるしかない。

 ソウラン操者の構えは中々堂に入っている。ざっと見たところ、隙はない。
 槍が得意と聞いたが、剣も相当やりそうだ。

「……だけど、鴎の氏族のウォールさんほど、脅威は感じないな」
 あの化け物じみた威圧はない。

 この模擬戦、僕は魔道はなしでいく。
 魔道は僕の商売道具であり、切り札だ。

 命のやり取りがない模擬戦で見せるわけにはいかない。
 その代わり、〈影〉の技は使用するつもりだ。

 空にはカイダの月が輝いている。
 ソウラン操者がこの日を指定したのも、月魔獣の降下がない日だからだろう。

「……じゃ、行きますよ」
 夜は僕の独壇場。
 最近不利な戦いばかりだったので、思いっきりいかせてもらおう。

「……おっ? 気配が変わったね」
 腰を落とし、やや前傾姿勢で身構えた僕に、ソウラン操者が微笑む。
 まだ余裕はありそうだ。

 僕は足音を立てない歩法でゆっくりと近づく。
 小剣の間合いは狭い。
 ソウラン操者は自分の間合いに入ったら攻撃を仕掛けてくるだろう。

 そこを狙う!

 じりじりと僕が間合いを詰め、あと半歩でソウラン操者の攻撃圏内に入るまさにそのとき。

 空から轟音を響かせて、青竜が降ってきた。

 落ちた場所はソウラン操者の後ろ。
 ソウラン操者はまったく見えてなかったために、揺れた大地に足を取られた。
 バランスを崩すも、数歩ヨロめいただけで踏みとどまる。

 直後、シャラザードが青竜を踏みつぶした。
 空から急降下でだ。

 更なる地響きが沸き起こる。
 ソウラン操者がたまらず四つん這いになり、僕も片手を付く。

 地響きが収まるより早く、シャラザードが咆哮をあげた。


 ――シャギャアアアアン(取ったどぉー)!


 胸を張ってふんぞり返るシャラザード。
 その瞬間、血まみれ且つ傷だらけの青竜の首がうなだれた。

 シャラザードが勝ってしまった。
「ちょっと! 台無しだよ、いろいろと!」

 夜空に僕の絶叫が響いた。



 僕がソウラン操者と対峙している間でも、シャラザードが戦う姿は見えていた。

 二頭の竜の戦い方は独特だ。
 互いに同じ高度から向かい合って突撃し、すれ違いざまに牙か爪で攻撃する。

 属性竜どうしの戦いがそうなのか、それとも『話し合い』でそうなったのか分からないが、それはまるで槍隊ランスの突撃のようだった。

 両竜の速度はあまりに速く、すれ違いも一瞬だったため、どちらが優勢か分からなかった。

『主よ、どうだ? しっかりと稽古をつけてやったぞ』

 ドヤァって顔で言われた。
 予定では地面に這いつくばっているのはシャラザードの方だったのだが。

「なんでおまえが勝つんだよ!」
『当たり前だ。戦時でないぬるい(・・・)時代に生きた奴に負けるわけがなかろう』

「それでも、もう少し何かあるだろ」
 勝負なのに一方的すぎた。
 なんでシャラザードが無傷で、青竜がこんなに傷だらけなんだ?

『こやつは西の守護竜だけあって戦い方だけは心得ておったが、実際に四方よもの守護どうしで戦ったことがないのであろう』

 四方の守護……以前シャラザードから聞いたことがある。
 東西南北の国にそれぞれ一体ずつ守護の竜がいたらしい。
 北の国には白竜がいて、東の国はシャラザードだったはずだ。

「おまえはしょっちゅう戦っていた口ぶりだけど」

『うむ。こまっしゃくれた奴だが、南にやたら強いのがおっての。結局決着は付かなんだが、楽しかったわ』

 ……駄目だ。
 シャラザードをぎゃふんと言わせようと思ったら、相手を言わせてしまった。
 竜だから死ぬことはないと思うけど、これってどうなんだろ。

 ソウラン操者を見ると、さすがに顔が引きつっていた。
 どうやら予想外の展開らしい。

「まさかと思ったけど、こんなにあっけなく負けるものなのかね」
 かなり驚いているようだ。僕もだけど。

「なんかすみません」
 わざわざ来てもらったのに、これはないよな。

 青竜はもう一戦できそうな雰囲気ではない。
 シャラザードがまた増長する気がするが、どうしようもない。

 あとはもう大型竜くらいしか、掣肘できそうな相手がいない。
 だが今いる大型竜は、走竜と地竜だ。

 身体が大きいからと言って、シャラザードが不利とは限らない。
 さてどうしたものか。

「さてどうしたものか」
 ソウラン操者が腕を組んで考えている。
 青竜の様子から、これ以上は無理だろう。

「しばらく傷を治すために食費がかかりそうだが、それはいいや。では、僕らは僕らで続きといこうか」
「えっ?」

「こっちはまだ始まってもないだろ」
 どうやら僕らの戦いは続くらしい。

『主よ、応援しとるぞ。我が勝ったのだ。主も勝てる』

 シャラザードの声音が耳障りだ。
 おそらくニヤァって顔をしているんだろうな。

「本当にやるんですか?」
「せっかくだからね」

 そう言われてしまえば断ることは無理だ。
 僕はもう一度小剣を構え、大きく息を吸い込んだ。


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