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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 王都に着いた。

「竜導教会に着陸するからね」

 前もって教会には使用許可をもらってある。
 シャラザードを着陸させ、そこで荷を下ろす。

 竜導教会をいいように使っているけど、学院にはロザーナさんとリンダが入れないのだからしょうがない。

「本当に暗くなる前に着いたわね」
「シャラザードは速いからね」
 ネミンの町から休憩なしで飛び続けたが、シャラザードが疲れた様子はない。

「僕はこの後も用事があるから、リンダは先に帰ってくれるかな」
「いいけど、今から用事?」
 リンダが不思議がっている。

 ロザーナさんは下ろした荷物を整理している。
 それを横目に、僕はシャラザードを見上げた。

「シャラザードってさ、他の竜と違うでしょ」
「そりゃ、属性竜だし」

「うん。それだけじゃなくて、暴君とか呼ばれているし」
 なぜか僕を含めて。

「暴君……そういう噂があるわね」
「シャラザードが僕に対して偉そうな態度を取るのは別にいいんだ。これから長い間、一緒にやっていくわけだし、そのうち最適な距離が分かってくると思う」

「竜が偉そうな態度……多少問題がある発言だけど、それはいいわ。……それで?」

「シャラザードが他の竜を従えさせるのも……まあ、しょうがないと思っている。そういうことができるっていうのは事実なんだし」

「最近、各方面で問題になっているみたいだけど、あなたがそれでいいならいいわ」

「ただね、ひとつ許せないのがあるんだ」
「さっきのふたつもあれだけど、何よ、その許せないのって」

「シャラザードが他の竜を見下すのは駄目だ。自分が言うことを聞かせられるから、竜を下に見たり、そういう態度を取るのはよくないと思う。僕は軍人になるつもりはないけど、これから先、僕は他の竜操者の命令に従わなければならない場面だって出てくる。けれど、そのときシャラザードが拒否したら、それは僕だけの問題じゃなくなるわけだ」

「それはそうよね」
「シャラザードは自分より強い竜がいないって思っているからそういう態度に出るんだ。だから、その伸びた鼻を折っておこうと思ったわけ」

「どうやって?」
「ソウラン操者に連絡を取ってもらったんだ。シャラザードをぎゃふんと言わせたいので協力してほしいって」

「まさか……来ているの?」
 僕はうなずいた。

 青竜を駆るソウラン操者の居場所は、竜国内でもトップシークレットだ。
 普段は陰月の路のどこかにいて、たまに町に寄ったり、王都に戻ってきたりする。

 他国はソウラン操者の居場所を掴めていないため、思いきった手に出てこれない。
 戦争を前提に考えたとき、女王陛下の『白姫』を除けば、まっさきに排除したい相手がソウラン操者の青竜なのだ。

 だからソウラン操者は定宿じょうやどを持たず、竜国のどこにいるか分からないようになっている。

 僕は竜導教会の神官を通じて連絡をとってもらい、シャラザードとの組手、いわゆる模擬戦を申し込んだ。
 シャラザードをぎゃふんと言わせてくださいと付け加えて。



 その日の夜。
 ロザーナさんは荷物を馬車に乗せ、出て行った。リンダも馬車で王立学校の寮へ帰っていく。
 僕だけはここに残り、ソウラン操者が来るのを待っていた。

「はじめましてだね。噂は聞いているよ」
 亜麻色の髪を短く刈り揃えた好青年。ソウラン・デポイ操者がやってきた。

「お世話になります」
「こちらこそ、よろしく」

 このソウラン操者。
 やたらとイケメンだ。
 体術に優れ、槍の腕も一級品らしいが、顔も一級品だった。

 しかも話してみると人当たりもよく、温厚で偉ぶったところもない。
 なんてできた人なんだ。

「まさかこんなに早く模擬戦を頼まれるとは思わなかったけどね」
 ソウラン操者はそう言って笑った。
 夜なのに歯がキラリと輝いた。惚れそうだ。

「早速ですけど、どこでやりますか?」
 集合場所をここに指定されたのは少々意外だった。
 陰月の路付近にある竜操者専用の宿舎で待ち合わせするものと思っていたのだけど。

「万一でも人に見られない方がいいからね。竜の聖門があるあたりがいいんじゃないかな」
 なるほど。王都の北東にあるが、あそこは普段、立ち入り禁止区域になっている。

 聖門を守っているのは竜導神官たちだ。
 だからここで待ち合わせたのか。

 ソウラン操者の青竜はシャラザードよりやや小ぶりだった。
 強面というより、鋭いナイフのような印象を受ける。

「話はついているから、行こうか」
「はい」
 僕らはお互いの竜に乗り、竜の聖門を目指した。

『主よ、我の力を見たいと言ったが、あれと戦うのか?』
「そうだよ。模擬戦してくれるから、存分に戦っていいよ。ただし、属性技ぞくせいぎはなし」

 ブレスを吐かれたらたまらないから、双方なしということで落ち着いた。

『ふむ……平和な時代の青竜か。その力を見てやるのも強者の務めよの』

 シャラザードが偉そうなことを言っているが、この勝負、僕らの方が分が悪い。

 何しろ、僕とシャラザードの連携はまだ未熟。
 戦闘経験に至っては、ソウラン操者の足下にも及ばない。

 シャラザードがいかに頑張ろうとも、技術も差は覆せない。
 だけどそれでいい。
 シャラザードは負けて学ぶ必要があるのだ。

 竜の聖門に影響が出ないあたりで僕らは下りた。

『奴めの力を見るのなら、主は乗らぬ方がよいぞ』
「ん? どういうこと?」

『我らの戦いは少々過激でな、こういう場合は人を乗せない方が良いのだ』
「ちょっと待て! 何をするつもりだよ!」

『我らの勝負は天を仰いだ方が負けと決まっておる。背に乗っていたら危険であろう?』
 天を仰ぐと言うと……ひっくり返るわけか。

「ちょっと待って、確認してくるからっ!」
 ソウラン操者にシャラザードの話をすると、多少驚いた顔をしたが、竜どうしのそういうとっくみあいは見たことがあるという。

「なるほどね。たまに背中を地面に押さえつけて優劣を競っているのを見るけど、そういうルールがあったわけか。ならば僕らはそれに従おう」

 つまり、シャラザードたちだけで戦うわけだ。
 多少思惑が外れたが、問題ない……よな?

『では軽くひねってこようか』
 同じ属性竜を相手にするのにどうしてこう、大口が叩けるのか。

 空に舞い上がったシャラザードと青竜。
 僕らはそれを地上から眺めることになった。

「聞くところによると、キミも結構使うって話だし、地上こっち地上こっちで手合わせをしようか」
 なんですと?

 ソウラン操者は、忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の一員だったりする。
 だから僕が〈影〉であることも知っている。

「えっと……」
「僕はこれを使うから。さあ、構えて」
 ソウラン操者は剣を取り出した。

 得意の槍じゃないっから平気だよってアピールだろうか。
 でもそれ、真剣なんだけど。

 しかも断れる雰囲気ではないし、どうしてこうなった?

 仕方なく、小剣を抜く。
 剣と小剣だと間合いが違う。それに経験の差もあるから、勝てる気がしないのだけど。

「さあ、好きにかかってくるといい」
 イケメンが挑発してきた。


心配してくださいった方、ありがとうございます。
いまは農業用ビニールで二の腕と胴体を固定しているので、痛くないです。
月曜日に医者にかかろうかと思います。
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