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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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「ロザーナさま!?」

 執事のキウルさん。
 領主館で働いているくらいだから、ロザーナさんのことはよく知っているようだ。
 小さい頃から今まで……そう、王都でやらかしてしまったことまで全部知っているのだろう。

「久しぶりね、キウル。みなさんお元気かしら」
「は、はい。お屋形さまも奥さまも……っと、と、と言いますか、ロザーナさま、どうしてここに?」

「私物を取りに来たのよ。まだ家にあると思うのだけど……それともすべて捨てられてしまったかしら?」
「わたくしには何とも……」

 キウルさんがチラッと僕を盗み見る。
 どういう関係かといぶかしんでいるんだろう。

「そう。家は近くだから行ってくるわね」
「だったらレオンもついていったらいいわ」

 送り出そうとしたら、リンダが予想外のことを言った。

「僕も?」
「そうよ」

 僕の後ろでロザーナさんとリンダがゴニョゴニョやっている。
 なにやら二人で同意できたらしい。

「……じゃ、お願いしようかしら。キウル、そういうわけだから失礼するわね」
「ロ、ロザーナさま、しばしお待ちを……いま、お館さまに確認を取りますので」

「悪いけど、時間がないわ。今日中に王都に戻りたいのよ」
「はっ?」

 キウルさんが虚を突かれた顔をしている。
 今は昼を少し回ったくらい。日帰り出来るとは思ってないようだ。

「シャラザードはそこらの飛竜よりよっぽど速く飛ぶことができるんです。王都までなら一日で往復できるんですよ」
「………………えっ?」

 またしても固まったキウルさんを残して、僕らは群衆に向かって歩き出す。
 颯爽と前をゆくロザーナさんに、群衆は二つに割れた。

「じゃ、私は港に行ってくるわね」
「分かった」
 ここからリンダとは別行動だ。
 リンダは港の使用許可を得るのと、品物を卸す倉庫を確保したいらしい。



「……しかしここも変わらないわね」

 町中を歩くロザーナさんはそんなことを言った。
 一年や二年で町並みが変わるものじゃないだろう。

 実家は本当に領主の館から歩いてすぐの場所にあった。
 坂を上り下りしなくていいのは楽だ。

 それなりに大きな屋敷の敷地に入る。
「少し待っててくれるかしら。中で話を付けてくるから」

「分かった。庭をぶらぶらしているよ」
 そう言って広い庭を散策することにした。

 王都やソールの町にくらべて、ここは背の高い木が多い。しかも上が尖っている。
 植生の違いだろう。物珍しいので、ずっと眺めていたら、気配が近づいてきた。

 若い使用人の女性だ。
 緊張した面持ちで歩いてくる。

「失礼致します。レオンさまでよろしいでしょうか」
「はい」
「主人が中へお連れするようにと」
「分かりました」

 使用人に連れられて屋敷の中に入る。
 通された部屋には、ロザーナさんの他に男女が一列に並んで立っていた。
 年齢からすると、両親だろうか。

「父と母よ。さあレオンくん、座って」
 まず座れときたか。自己紹介させないらしい。
「では失礼します」

 突っ立っていてもしょうがないので、促されるままにソファに身を沈める。
「お父様もお母様も座った座った」

「あ、ああ……」
 タイミングを外された両親も固い仕草で座る。

「ご挨拶が遅れました。いつもロザーナさんにはお世話になっております。竜操者のレオンです」

 僕が挨拶をすると、「ああ」とか「うむ」とか「うー」とか返答があった。
 内心の葛藤がよく出ている。

 竜に乗って突然の帰郷はさぞや驚いたことだろう。

 両親とも館内で書類仕事をしていたらしく、シャラザードの飛来には気づかなかったらしい。
 すぐさま領館から知らせが来たらしく、すでにシャラザードのことは把握していた。

「ロザーナさんには、在学中よくしていだきました。感謝致します」

「こ、こちらこそ……存じ上げてなく、まことに申し訳ない」
 実に変な返答だが、娘と一切連絡を取っていなかったことで、僕のことをまったく知らなかったようだ。

「長話してもしょうがないし、私は荷物をまとめるわね。すぐに済むわ」
 もとから整頓してあるらしく、思い出の品と衣類をまとめる程度らしい。

 ロザーナさんが退席したあと、残された僕ら三人の間に、微妙な空気が流れた。
 初対面だし、共通の話題はロザーナさんのことしかない。

 もちろん最初からその話題は危険だ。
 一瞬、幼少時の黒歴史を聞いてみたい衝動にかられたが、かなり自制して町の様子について話を振ってみた。

 するとロザーナさんの両親は、ポツリポツリとだが、いま町が置かれている現状を語ってくれた。
 ここに来るまでにロザーナさんから聞いた話とほとんど変わらなかった。

 やはり領主所有の船が行方不明になったことで、町全体が重苦しい雰囲気に包まれているらしい。

「物資不足以外に困ったことはありませんか?」

「困るといえば、他の町へ行くには山道を通らねばなりません。情報の出入りがあまりないことでしょうか」

 この時期になっても、竜迎えの儀の情報が入ってこなかったらしい。
 もとから情報が届きにくい場所がらに加えて、船を失ったことが大きいと思う。

 それともうひとつ。
 どうせ関係ないからと、自然と流れてくる情報以外、自分たちで集めようとしていないのだ。
 この辺は王都の民と大きく違う。

 他の町の情報を集める余裕がないのかもしれないが、情報収集を怠っていいものではない。

「僕はソールの町の出身ですので、あまり北方については詳しくないのですが、陰月の路を挟むと、いろいろと大変でしょう」
 そう言っておいた。

「領民は生活していくので精一杯です。いや、我々だってそう余裕のある暮らしはできていません。北方は竜国に置いていかれた地なのです」

 その言葉には、疲れと諦観ていかん、そして自分自身に対する嘲りが感じられた。
 随分と地方差が深刻なようだ。

「先ほど聞いたのですが、竜操者は町中に常駐していなようですね」
「ええ、そうです。山を越えた麓に竜操者専用の宿泊施設がありますので」

 この町に月魔獣がやってくる場合、必ず山を越えねばならず、山の手前で迎撃した方が効率がよいらしい。

 話を聞いてみると、ロザーナさんの両親は常識人だった。
 もっと自分勝手な人たちだろうと予想したが、それほどでもない。

 意外だったのは、領主に連なる家系にもかかわらず、生活に疲れているところだろうか。

 だが、ロザーナさんがやらかした後で連絡を絶ったのは紛れもない事実であり、人柄と行動になんとなくちぐはぐな印象を受けた。

「僕がロザーナさんと知り合ったのは一年前の入学式のときでした。謹慎中だったロザーナさんと、人混みから逃げてきた僕が偶然出会ったのですけど」

 そこでロザーナさんとどんな話をしたのか、その後、どんなつきあいがあったのか。
 僕はロザーナさんと過ごしたこの一年間のことを、覚えているだけ話した。

 本当ならばこれは、娘が親に対して話すべき内容だと思う。だけど、ロザーナさんはそうしない。
 それを選択しない。

 だから僕はその代わりとして、ロザーナさんの一年間の様子を語って聞かせた。

「……不甲斐ない父親と思われたでしょう」
「いえ、そんな」

「アレは優秀で、よくできた娘です。だから必要以上に使命感に燃えました。そして領主も必要以上に期待をしたのです」

 学費は領主の一族が負担したらしい。
 将来に対する投資だとか。

 入学にあたっては、町を挙げて送り出したらしい。
 この町から王立学校に入学する生徒は多くない。
 二、三年に一人くらいだとか。

 そしてパトロンになれそうな人物の入学は久しぶりだったという。
 容姿と知性、家柄、礼儀作法……どれをとっても他の候補者に負けないと、満を持して送り出した。

「町を挙げてですか」
 それはさぞすごかっただろう。

「結果はご覧の通りです」
 やらかした話題が町に届くと、領民は失望し、領主は怒りまくったという。
 よくある話といえばそうだが、期待が大きかっただけに落胆も大きかった。

 怒りの矛先はロザーナさん個人に向き、あのような絶縁状態となったらしい。

「そうだったのですか」
「罰が当たったんでしょうか。それ以降、災難続きでしてね」
 乾いた笑いが室内に響いた。

 船が行方不明になったこと、それを何とかするためにロザーナさんの縁談をまとめたところ、商会の不正がばれて、商人とは連絡が取れず。

 最近はやることがすべてが裏目に出ているらしかった。
 商会の不正については僕が暴いたな、そういえば。

「でもそれは自業自得よ」
 ロザーナさんが戻ってきた。荷物整理は終わったようだ。

今朝4時半過ぎ、起きなきゃとベッドに浅く腰掛けてぼーっとしていました。
足を伸ばしたまま重心を前にしたらストンとおしりが落ちて……左手をベッドの端に添えてなければ問題なかったのですが。
「○$%&@!」
二の腕を捻りました。スジをやったってヤツですね。
直立した状態から左腕が30度くらいしか上がりません。超激痛です。
「前ならえ」なんて不可能です。
完治に2年くらいかかるんだろうなぁと落胆しつつ、激痛のため右手1本で生活しています。。。
+注意+
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