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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 シャラザードが放った特大の雷玉。
 それが及ぼした影響は……。

 ――大地が黒コゲに変わっていた

「どういうことだよ! ここ、岩と砂だったじゃんか! なんで岩が消えて、砂が真っ黒なんだよ! 地面が固まってるよ!」

『知るか。それよりどうだ。我の力は』

 これが人間だったら、鼻の穴を膨らませていたことだろう。
 どうだ褒めてみろ、そんな雰囲気がシャラザードの声音こわねから伝わってくる。

「すごすぎだよ!」
『そうであろう、そうであろう』
 見えないけど、ドヤァって顔をしているんだろう。

「だけど実戦で使えないよ!」
 間違いなく周囲に悪影響を及ぼす。
 敵も味方も殲滅だ。もうどんな呼び名が付くか分かったもんじゃない。

「ちょっと待って! 仲間はどうした?」
 安全のため、十キロメートル以上離れてもらった。

 同級生や竜操者、そして学院の指導教官たちはどうなったのだ?
 急いでシャラザードに戻ってもらった。

 すぐに一団が見えた。
 無事だ。よかった。
 だが様子がおかしい。
 こちらに気づく様子がないのだ。というか動いてない。


 ――全員、気絶していた


 みなが落ち着いてから聞いたところ、あれだけ離れていても雷玉が放つ光が見えたらしい。
 すぐに身構えたという。

 巨大な光が爆ぜた瞬間、足元から激しい痛みが這い上がってきて、全身を針で刺されたような激痛が襲い、そのまま意識を手放したのだという。

「あれだけ離れていてもですか」

 同じ場所にいた竜は無事だった。
 だが竜に乗っていた者も、その竜を通して雷を浴びて失神している。
 これは耐性というよりも竜のタフさ、つまり耐久力の違いだろう。

 少なくとも人の場合、十キロメートル離れただけでは、その影響力から逃れることは無理だと分かった。

「つ、使えない……」

 おそらくこの雷玉を使う機会はないだろう。危険過ぎる。
 いや特大じゃなければ行けるか?
 いやいや、そう考えるのは危険だ。もう試さない方がいい。

 そして驚いたことに、二十キロメートルも離れた宿泊施設にも影響はあった。
 飼っていた家畜が暴れ、庭に出ていた者たちは大地から上ってくる雷に痺れ、飛び上がったという。

 何がなんだか分からず、慌てて靴を脱いだ者もいたし、木に登った者も出たという。
 申し訳ないことをした。

「少なくとも特大の雷玉を打つならば、二十キロメートルは離れないと駄目だな」
 もう視認できない距離だ。

 この実験の結果は、操竜会に報告される。
 書類としてまとめられて王宮にも届けられるだろう。
 女王陛下が爆笑する姿が目に浮かぶ……。



 休憩を取った後、僕らは学院に戻ることになった。

 最終日はフォーメーション移動を繰り返しつつ戻る予定だった。
 問題点を洗い出したあと、学院内でひと月くらいかけてみっちり弱点を克服する練習をするのだが、みな失神したこともあり、訓練をせずにただ戻るだけとなった。

 何人かは王都で医者にかかるという。ごめんなさい。

「……き、気まずい」

 休憩の間、だれも僕に話しかけない。
 気絶した人の体調を考慮して休憩を多く取りながらの帰還だったが、なぜか僕のそばに寄ってこないのだ。

『主よ、嫌われたな』
「おまえのせいだよ!」

 さっきチラッと聞こえたんだ。月魔獣の方に逃げろって。
 うん、なんだか泣きたくなってきた。

 そのまま僕は、半泣きで学院に戻った。

 すると寮には早くも新入生が入寮していた。

               ○

「おれたちもとうとう二回生か」

 寮に戻ってくるとアークは平静を取り戻した。
 アークに聞いた所、同級生たちみんな、シャラザードが怖かったらしい。

「他国民が竜を怖がるって話を聞いたことがあるだろ。あれは傑作だとおれは思っていたんだ。あんなに頼もしい竜を怖がるだなんてね」

 他国民が竜を恐ろしがるという話は聞いたことがある。

「今回それをおれたちは思い知ったんだ。竜はやっぱり恐ろしい存在だとね」

 竜国民はみな竜を敬い、頼もしい味方だと考えている。
 それは竜が人に危害を加えない存在だと知っているからだ。

 だが今回、遠く離れた場所から放たれた一撃で身体が麻痺し、失神するほどの影響を受けた。
 まだ操竜術の未熟な一回生がいつ誤って、シャラザードの力を暴走させやしないかとヒヤヒヤしていたのだとか。

「小型竜や中型竜はブレスを吐かないからね」
 そういうものなのかもしれない。

「おれも竜の背で気がついたとき、頼もしさよりも怖さが勝っていたと思う」
「あのときはすまなかった。あそこまで強力だとは、僕も正直思わなかったんだ」

「そうだと思う。だからいまはもう平気さ。仲間たちも数日すればもとに戻ると思う」

 今はまだ難しいかもしれないが、彼らもまた竜に乗る者たちなのだから、きっと理解するだろう、そうアークは言った。

 そんな話をしながら寮の二階にあがり、自分たちの部屋に入った。

「あれ?」
 部屋の中に誰かいた。
「入寮者だね。ということは、おれたちの後輩か」

「お世話になります」
 僕たちの姿を見つけて、その人物は立ち上がった。

「……でかい」

 天井に頭が届きそうなほど背が高かった。
 横幅は僕の倍くらいあるだろうか。

 厚い胸板を反るようにして直立した男は、綺麗な角度でお辞儀をした。

「自分は、レゴン・ウルムストと申します」
「………………」

 腰を折った状態でいるレゴンの背中で、小さなモノが動いた。
 みると小動物らしかった。

「リンク?」
「だね。庭から入って来たのかな」
 学院内の林に住んでいる小動物だ。

 寮の庭で木の実を食べている姿をよく見かける。
 王都の林の中ではときおり姿を見かけるが、警戒して人のいるところまではめったにおりてこない。

 レゴンは頭をあげると、リンクは器用に身体を這い登り、レゴンの右肩に止まった。

「なぜか離れんのです」
 困ったように笑う巨体に、僕らは自然と笑みがこぼれた。

 これが心優しい巨人。レゴンとの初めての出会いだった。
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