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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 演習の最終日。
 フォーメーションの訓練と同時に竜どうしの模擬戦を行うことになっていたが、とある事情で、いまだ行われていない。

「属性竜は他と一緒に模擬戦をしない方がいいのではないか?」

 そんな意見が現役の竜操者の間から出た。

 というのも、僕よりも前に属性竜を得たソウラン・デボイ躁者の場合、竜を得た当初から完全に特別なカリキュラムが組まれていた。

 現役の竜操者たちにとって、その記憶はまだ新しい。
 なにしろ、六年前のことなのだ。

 当時、女王陛下の竜である『白姫しろひめ』と対等な相手がいなかったこともある。
『白姫』も年がら年中竜舎に押し込めるわけにはいかない。

 かといって、竜国の女王に月魔獣狩りをさせるわけにもいかない。
 妥協案として、王都周辺の空の散歩だけは定期的に行っていたが、到達高度や飛行速度ともに通常の飛竜では追いつくだけで一苦労である。

 白竜に対等の相手がいなかったのだ。
 そのため、ソウラン操者が現れたとき、これ幸いと女王陛下にあてがったわけである。

 ソウラン操者もよくできた若者で、文句を言わずにそれに付き合い、王都では白と青の竜が大空を舞う姿が何度も目撃されることになった。

 当時学院生であったソウランだったが、竜の学院の意義は竜を操ることである。
 それはなにも学院の中でしかできないことではない。

 そう言った経緯を知っているだけに、現役の竜操者たちは、通常と違う黒竜について、このまま学院のカリキュラムを当てはめても意味が無いのではないかと言い出したのだ。

「……そういうことですか」
 その説明を受けた僕は、なんとなく納得してしまった。

「そういうわけで、ソウラン操者同様、キミも特別なカリキュラムを組むことを念頭に入れたい。黒竜のことをもう少し詳しく教えてほしい」
「いいですよ」

 シャラザードの狩り方は他の竜操者からみるとどうなのだろう。その辺は知りたかった。
 月魔獣を爪や牙で一撃死を与えることとか、上空から下りるときに踏みつけるだけで月魔獣が粉々になるとか、僕が覚えている限りの説明をした。

 しっかり理解できるよう、より具体的に話した。

「………………」

 少々刺激が強かったようだ。
 こめかみを押さえている竜操者がいる。

 指導教官は目頭をもんでいる。
 僕は問題児だろうか。いや、問題児はシャラザードだよな。

「そういえば、報告には竜に月魔獣を狩りに行かせたとあったが、あれは……?」

 アンネラと初めて会ったときのアレかな。

「僕なんかよりもシャラザードの方が広範囲に月魔獣の存在を感知しますから。言えば行って狩ってきてくれます。さすがに月晶石だけ取り出すことはできないので、死体を持ってきてもらっています」

「………………」
 こめかみを押さえる人が増えた。最近頭痛持ちが増えたのか?

「そうか……属性竜はそういうものなのか。ソウラン操者の前は女王陛下だったしな。充分な記録がないことが悔やまれるな」

 属性竜は中型竜とは違う。
 そのことを遅まきながら理解できたと指導教官は言った。

「そういえば……」
 ふと誰かがシャラザードを見上げた。
「属性竜だからもちろん属性があるわけだな。この竜の属性は分かっているのか?」

 集まった全員の瞳が僕に注がれた。

「それが……困ったことに、雷なんです」

「困ったことに?」
「雷? どういうことだね?」

雷玉らいぎょくを作って打ち出せるんですけど、威力がですね……少々……大きいかな……とか」
 小首をかしげて可愛く言ってみた。

「どのくらいの威力だね?」

「雷玉が落ちたあたりの月魔獣は消滅しますね。跡形もありません。付近の地面も岩も燃えます。岩とか燃えるようなものじゃないんですけどね、燃えます」
「………………」

「それとかなりの範囲で木々が燃えます。中心部に近いところは何もかも黒焦げになります。あと見渡す範囲に雷の影響が出ます。小さな点にしか見えない月魔獣も倒れました。雷が地面を伝ったのだと思います」
「………………」

 全員がこめかみを抑えた。この辺、空気が悪いのだろうか。

「た、たとえば、こ、ここで……見せてもらうことはできるかね?」
「見えている範囲だと、竜に乗った状態ですら危険だと思いますが、やりましょうか?」

「えっ、いや……どうだろ」
「わ、わたしに振られても……キミ、どうかね」

「さ、さあ……危険かも……しれませんね。どうでしょうか」
「そ、そうだな」

 全員が顔を見合わせた。

 結果、充分距離をとった上で実践することになった。
 僕としてもシャラザードの雷玉がどの範囲まで影響を及ぼすのか知りたかったので、願ったりかなったりだ。

 ここは陰月の路に近いため人の姿どころか、建物すらなにもない。

 シャラザードにまたがり、充分離れた所まで向かう。

「宿泊施設から距離にして二十キロメートルくらいは離れたかな」
 竜操者たちは十キロメートル以上離れてもらっている。もはや点だ。

『準備はよいぞ、主よ』

「よし、特大のを打てるか?」
『もちろんだ!』

 シャラザードが首を反らせ、口の先に小さな雷玉を発生させる。
「相変わらずすごいな」

 見るのはこれで二度目だが、バチバチと帯電した様は触れたものすべてを黒コゲにしそうなほどの力を秘めていそうだ。

『はぁああああああ!』

 その雷玉がはじけ、シャラザードの身体全体に行き渡った。
 シャラザードの身体全体が帯電し始める。
 不思議と僕の身体は平気だが、これは……やばいんじゃなかろうか。

 雷をまとったシャラザード……そんな感じだ。
 前回とは比べ物にならない。

 視界が雷の渦に満たされた。
 どうなっているんだ? そう思うが、もうどうしようもない。

 シャラザードの身体全体にあった雷が再び一箇所に集まった。
「特大の……雷玉?」
 シャラザードの身体くらいの雷玉ができあがった。

 ちなみにシャラザードの身体は二百メートル近い。
 大丈夫か、これ?

『がぁああああ……』

 唸り声とともに雷玉が大地に向かい、そして……爆ぜた。

 ――爆ぜた

 目をやられた。
 僕は危険を感じて目を瞑った。ギュッと。
 だが、まぶたを通して侵入してきた光の奔流だけで僕の目をくらました。

「マジか!」

 目がチカチカとする。

『どうだ、主よ』
 得意げなシャラザードの声が聞こえるが、何も見えない。

「眩し過ぎるわ!」
『特大と言ったからの。少々のことは仕方ないであろう』
「少々かこれが!」

 時間にして数分。
 僕はまぶたをあげることができなかった。

 ようやく目を開いたと思ったら、視界がオレンジ一色に染まっていた。
 慣れるまで十分はゆうにかかった。

「これは対策を取らないとだめだな」

 両手で目を覆うとか、なんとかしないと無理だ。

 目が慣れて、雷玉が向かった先がどうなったのか、ようやく目をやることができた。
 そこには……。

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