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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 家族団らん、夕食の席なのになぜか僕の黒歴史暴露大会が始まっているのだけど……。

「レオンが領主は悪人だって叫ぶから、何かと思って聞いたらそそんな話だ。またエイナが吹き込んだと思ったが、そのうち分かるだろと思って放っておいたんだ」

 そんなこともあったな。
 あれは姉さんが悪い。あと父さんも。

「人の血をすする悪人がいるって、領主の館に石を投げやがったんだ、こいつは」

 うん、僕は悪くない。あれは姉さんの……。

「そんなことしたの?」
 リンダがジト目で僕を睨む。

「だから姉さんに騙されたんだって」

「領主の館を守護している兵が捕まえようとしたら、すばしっこくて逃げるわけだ。館の庭で追いかけっこをやらかしたらしい。兵が門を閉めたんで、外へは出られない。だけど探しても見つからないって、兵が店にやってきたんだよ」

「家が分かったんですか?」
「石を投げるとき、正々堂々と名乗ってたらしいからな」
「あー」

 リンダは残念な人を見る目をしている。
 いや、あれは姉さんが……。

「俺が探しに行ったら、なぜか館の屋根の上で寝てやがった。どうやって館に潜り込んで、どうやって屋根まで登ったのか、分からなかったがな」

「あの頃からすばしっこかったのね。わたしも時々人じゃなくて、猿か何かかと思う時があったし」
 昔を思い出すようにして、リンダの目が遠くを見つめた。

「その後で家に連れ帰ってこっぴどく叱ったんだが、エイナが悪いとずっと言い張っていたな」

 あれは絶対に姉さんが悪い。僕をけしかけたんだから。

 その後も話は続いた。
 パンの捏ねで失敗して全身粉まみれになった話や、喉が渇いて水瓶から水を飲もうと酒を飲んでしまって、土間で丸まって寝ていた話などのエピソードで、僕の心をえぐっていった。

 食事が終わり、アンさんが母さんと仲良く後片付けをしているのを横目に、僕はぐったりと横になっていた。
 もう心が弱って動けないのだ。

 リンダは父さんと商売についての難しい話をし始めたので、僕は夜風に当たりながら、町を散策してくると言って外に出た。

 リンダからは「夜に出歩くのが好きよね」という言葉をもらった。

 人目がないことを確認すると、僕は持ってきた黒衣に着替えて、そのまま闇に溶けた。

               ○

 ソールの町は、竜国の七大都市のひとつに数えられる。
 商国から一番近い町に加えて、竜紋限界の中でもある。

 他国からすれば魅力的に映るらしい。
 人が増えてゆき、次第に町が発展していった。

「なにもない町なんだけどなぁ」

 商国からの交易で潤っているが、独自の産業は発展していない。
 工場を建てる案は、領主にとって魅力的に見えるだろう。

 領主が悩んでいると父さんが言うのも分かる。

「……で、ここか」

 商国の交渉人が住んでいる館を見た。派手ではないが、堅牢な建物だ。
 さすがに金をかけている。特注だろうか。

 建物は石造りで、門も立派である。
 塀はかなり高くなっており、人を寄せ付けない雰囲気を持っている。

「これはあれかな。難民がやってきたときの備えかな」

 もともと国を代表する人たちが使う建物は石造りにすることが多い。
 何十年、ひょっとしたら何百年も使うことを想定している。

 王都でアンさんに招待された技国会館もそんな建物だった。

「たしかに魔道結界は見えないな。さて、どういうことか、確かめてみようかな」

 指令もないので、父さんは調査していないらしい。
 なんとなく怪しいから潜入して調べるなんて、父さんはやりたがらないだろう。そういう性格だ。

 闇に潜ったまま敷地内に入る。
 建物の中にいざ入ろうとしたら気づいた。

「……人の気配?」

 館の中に複数の気配がある。それはいい。ここに住んでいるのだから。
 問題は、建物の中に入って感じたこの気配である。

 押し殺したような静かな気配。プロが身を隠している!?

「マジか。人が守っているわけね」

 魔道結界がないと父さんが言ったので、何があるのかと思ったら、人の目で警備しているらしい。

「意外と有効なんだよな、これ」

 プロに守らせる。
 これは多大な費用と労力がかかるが、効果は高い。
 もともと魔道結界は、人を雇うコストを惜しんだことで広まったのだ。

 長期にわたって警備するのではなく、領主との交渉事が終わるまでの間ならば、手練を雇って警備させても、それほど懐は痛まないのだろう。

 昼夜を問わず警備されてしまえば、手も足も出ない。
 それにいくつかの部屋で犬の気配もある。

 室内に放し飼いにしているのだろう。愛玩用とも思えない。
 侵入者感知、撃退まで含めた番犬としての役割を担っているものと思われる。

「……どちらかといえば、こういう警備の方が嫌だな」

 魔道結界を導入し、安心して寝こけてもらった方が僕にはありがたい。

「さてどうしようか。天井裏もないしな」

 部屋が石造りなので、天井裏がない。
 隠れ場所を排除したかったのだろう。

 これは久しぶりに本気で取り組む必要がありそうだ。

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