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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 寮に戻るとマーティ先輩がいた。
 年が明けてからは、卒業を控えて慌ただしいようで、両先輩ともなかなか会えない。

「久し振りですね」
「元気だったかい、レオンくん」

「まあまあです。シャラザードの必殺技について少々困ったことになりまして」
「あの属性竜か。大方、被害が大きすぎるってとこかな?」

「なんで分かるんですか?」
 ちょっと驚きだ。

「中型竜ですら、一緒に編隊を組むようになったのは九月に入ってからだよ。それまでは危なくて一緒に行動できなかった。この時期、被害の心配が無いのは小型竜だけだよ」

「そういえば、中型竜っていつもいないか、いても別の場所で訓練していましたね」
 僕らが見学したときは、教官を除けば小型竜ばかりだった。

「単独で月魔獣を狩れるし、早々に狩りの経験を詰みに出かけたのもあるけど、本当に中型竜は危険なんだ。斜行しゃこうといって、まっすぐ走りながらちょっと横にずれるだけで、小型竜が巻き込まれる。そうしたら大惨事だ」

「想像できます」
 中型竜は小型竜を踏み潰せるほど大きい。

「属性竜はそれよりも大きいだろう? 中型竜をものともしないぐらいに。それにブレスも吐くんじゃないかな」

「ええ……まさにその通りです」
 吐きました。そりゃもう、特大の雷玉を。

「青竜も白竜も、町をひとつ壊滅できる威力らしいしね。黒竜だって同様だろうから、こりゃレオンくんは困るだろうなって思っていたわけさ」

「シャラザードの場合、雷竜だったんです。周囲一帯に特大の雷を撒き散らすんですけど、どうしたらいいでしょう」

「雷か。それはどうしようもないね。たぶん、ひとりの時に使うしか……ああ、でも地面だけなら、飛竜と組めばいいかもしれないね」

「飛竜……そうか。空中にいるなら影響がないかもしれないんですね」
「あくまで予想だけどね。実際はどうか分からない」

「いえ、ありがとうございます。なんとなく希望が持てました」
 そうか、飛竜ならば直撃しないかぎり、大丈夫かもしれない。

 軽々しく実験はできないけど、充分距離を取った上なら、確かめてもいいかもしれない。

 その後はマーティ先輩の卒業式についてや、その後生活について話を聞いて、その日は就寝した。
 飛竜との組み合わせは、たしかに有効に思えた。




 卒業式の準備が着々と進んでいる。

 国内の有力者や軍部、操竜会など、これからの就職先やお世話になりうる人たちが軒並み顔を出すらしい。

 式はもちろん王立学校で行われる。
 当然パトロンやそれにかかわる人たちの出席も許可されているとあって、手配や確認に余念がない。

 そんな状態だったからこそ、教職員も二回生にかかりっきりとなる。
 卒業式を間近に控えたこの状態で、一回生に数日間の休みがもらえたのは至極当然のことだったかもしれない。

「それじゃあ、行きましょうか」
 大荷物を背負ったリンダが上機嫌でシャラザードに乗り込んだ。

「ドキドキですわ」
 ひるがえって、軽装なのはアンさん。
 アンさんもシャラザードに乗り込む。

「本当に行くんだね。……まあ、許可を取ったのは僕だけど」

 この休みを利用して、僕とリンダとアンさんは、シャラザードに乗って僕の実家に向かうことになった。

 ロザーナさんは卒業式の準備だ。
 あたりまえの話だが、学校を離れられない。

「早く乗りなさいよ」
 僕の竜なのに、リンダが一番偉そうだ。

「ふたりとも準備はいいかい?」
「大丈夫よ」
「楽しみですわ」

「じゃ、シャラザード、お願い」
『心得た。それであるじよ、全力で飛んで良いのか?』

「まあ、いいんじゃない」

 すでに何度も月魔獣を狩りにいって分かったが、シャラザードの体力は底なしだ。
 一緒に乗っている僕の方が参ってしまう。

 今日はリンダとアンさんにその苦労の一端を少しだけ体験してもらおう。

 リンダは初めての騎乗。
 アンさんは技国からの帰還で乗っているので、二回目となる。

『ぬぅおおおおお……』

 気合いを入れたシャラザードが高度を上げ、水平飛行に移行した瞬間、大加速した。

「………………」
「………………」

 僕は慣れているだけで、平気なわけではない。
 結構マジに耐えている状態だ。

 そしてリンダは……頬を痙攣けいれんさせて固まっていた。
 アンさんは白目をむいているので、たぶん失神している。

 別に意地悪をしたいのではない。
 シャラザードとはこういう存在であると知って欲しかったのだ。

 なにしろふたりとはこれから長い付き合いになるのだし。

 シャラザードは速い。
 それが全速力で飛んだのである。
 朝出発したのに昼前にソールの町に着いてしまった。

 馬車で五日の道のりを驚異的な速さで飛翔した。

「パパが川の向こうで手招きしていたわ。あれ、渡ったらどうなったのかしら」

 リンダのお父さんは死んでないからね!
 この前も上機嫌で贈り物持ってきていたから。

「シャラザードさんは速いですわね。一瞬で着いてしまいましたわ」

 アンさんは、上昇途中から気絶していたから!
 一瞬で着いたんじゃなくて、その間の記憶がないだけだから。

 さて、シャラザードはソールの町のどこへ降りるのか。
 当然町中におりたら大混乱になる。

 領主の館に近い場所に竜舎が存在している。
 そこに、シャラザードが降り立つのだが……。

『シャァアアアアア(並べぇええええええ)!』

 シャラザードが吠えた。

 ――ビシィイイイイイ!

 そこにいた七体の竜が一列に並んでシャラザードを出迎えた。
 こいつは、こういうことを何の予告なく平気でやる。

 まるで王族一行を出迎えるかのような形で、僕らは舞い降りた。

 到着の目的と人数を告げて、シャラザードを竜舎に預ける。
 ソールの町は七大都市のひとつと言われるだけのことがあって、竜務員も一流の者が揃っている。

 シャラザードがここにいる間はすべてやってくれるそうだ。

「領主に挨拶した方がいいのかな?」
 こういう時の作法が分からない。

「別段必要ないわよ。報告が行くだろうし、用があれば使者がくるわ」
 領主は忙しいらしい。竜操者が来たといって毎回会っていては仕事にならないとか。

「なるほど。じゃ、そういうことで、家に行こうか」
 馬車を手配してもらい、僕らはシャラザードをおいて、実家に向かった。

               ○

「お久しぶりです、おじさま」
 リンダが如才なく挨拶する。

「やあ、リンダちゃん。この前も来てくれてありがとう」
 そういえば、長期休みのときにリンダが来たと言っていたっけ。

「その節は、突然おじゃまいたして失礼しました。それと、父からも末永くよろしくと言付かってまいりました。これは父から預かったものです。お納めください」

 やけに大きな荷物を背負っているとは思ったが、どうやらお土産だったようだ。

「ありがとう。ヨシュアさんからよく手紙をもらっているよ。変わりないようだね」
「ええ、この度のこと、父も大層喜んでおりますわ」

 朗らかにリンダは笑った。
 こんな感じだったっけか? 今日のリンダは特大な猫の着ぐるみを着て、顔だけ出しているように見える。

 リンダは挨拶が済むとスッと後ろに下がった。
 すごいよ、リンダ。なんか感心してしまった。

「お初にお目にかかります。アンネロッタ・ラゴスと申します」

 アンさんが軽く一歩を踏み出して、一礼する。
 優雅なしぐさなのに、堅苦しさがまったくない。マナーのお手本のようだ。

「ラゴス家のアンネロッタ様ですね。息子から話は聞いております」

「恐れいります。のちほど氏族の者が正式にご挨拶に参ります」
「分かりました。技国の作法は少しですが理解しております。そのときに」

「はい……ぜひ」

 アンさんがおしとやかに笑う。
 よく分からないが、技国的なしきたりでもあるのだろう。

「おふたりとも、よく来てくれました。歓迎します。さあ、どうぞ、中に入ってください」

「ただいま、父さん」
「おかえり。母さんは店にいるぞ」
「うん」

 こうして僕はパトロンと嫁候補をつれて実家に戻った。
 このまま母さんに会うのは、すげー照れる。
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