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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 さて、以前アンさんから来た手紙だが、ようやく返事を書いた。
 僕の実家はパン屋だ。ほぼ年中無休で働いている。

 出かけていて留守ということもない。
 それでも準備があるだろうから、僕が手紙を出して、その返事をもらってからと伝えた。

 突然会いに行きたいとは言い出さなかったので、いまのところ実家からの返事待ちとなっている。
 リンダは幼なじみなのでウチの家族もよく知っている。
 問題はアンさんだ。

「氏族長の孫娘とか説明して大丈夫だろうか」

 父さんはまだしも、母さんとか姉さんとかどう反応するか予想できない。
 早めに済ませてしまいたいと思う反面、ずっと先に引き伸ばしたい自分がいる。

『主よ、あちらに多くの月魔獣がいるぞ』

 その言葉で我に返った。
 そうだ。いまシャラザードと月魔獣を狩りに来ていたのだ。
 こんなところで考え事は駄目だ。ちょっと反省。

「よし、そこへ行こう……ってもう、向かっているのか」
 相変わらず月魔獣のことになると素早い。

『ほほぅ、たくさんいるではないか』

 数が七体。他に見える範囲にも同数いた。

「やけに多いな。巡回が間に合ってないのかな?」
 竜操者がサボっているとは思わないが、一度に十体以上いるのは珍しい。というかおかしい。

『どうでもいいではないか。……どれ、ひとつずつ潰すのは面倒だ。ここは我に任せておけ』
「何をするつもりなんだ?」

『見ておれ。すぐに分かる』

 シャラザードの周りになにかが集まり始めた。
 雷だ。周囲を覆う空気がバチバチと弾けている。

「……こ、これって、放電?」
 シャラザードがやったのか。
 問いただそうと思ったときにはもう、目の前に巨大な雷光の玉が出来上がっていた。

『くらえっ!』

 月魔獣のかたまりに雷の玉が落ちる。
 直後、激しい光が瞬き、地中を伝って雷が四方八方に拡散した。

 遅れて轟音が轟く。

 月魔獣が痙攣けいれんをはじめ、その後身体がボロボロと崩れていく。
 雷玉らいぎょくが落ちたあたりにいた月魔獣は黒焦げになっている。
 近くにあった木はすべて燃えている。

「シャラザード。なんだよ、これ!」
 空気がチリチリと青白い火花を上げている。

 地上はひどいありさまだ。
 見えている範囲の月魔獣は全滅したが、それ以外のものも軒並み雷にやられてしまった。

『我の力だな』
 鼻高々な声が返ってきた。

 地面の多くが真っ黒である。土中にある何かが焦げたのか。
 見渡す限りの木が燃えている。
 延焼しなくてよかった。

 草が生えていたあたりはすっかりなくなっている。
 植物は全滅だ。

 これが属性竜――シャラザードの能力だろう。
 他に竜操者がいなくてよかった。
 たぶんだが、こんなのが直撃したら竜だって無事には済まない。

 そもそもかなり離れたところに打ち込んだから冷静でいられるが、至近距離だったらどうなっていたことか。

「周囲の被害が尋常じゃない。どーすんだよ、これ」
 僕は頭を抱えた。




 シャラザードがやらかした。
 同時に、シャラザードの属性が分かった。雷だ。

「おまえは雷竜らいりゅうだったんだな」

 天災のひとつに数えられる落雷。
 それを何十倍、何百倍にしたような規模だったが、シャラザードが放ったのは紛れも無く雷だった。

 月魔獣は全滅。それはいい。
 問題は周囲の被害だ。

『どうだ。中々のものだろう』

 シャラザードは鼻高々だ。
「どうだじゃないだろ! どーすんだよ、この有様」

 周囲の木々は燃えて全滅。
 中心部の大地は真っ黒だ。
 雷が地中を走ってどこまで広がったか分からない。

 人や竜が周囲にいなくてよかった。
 間違いなく巻き込んでいるし、無事に済むとは思わない。

『良い感じに撃てたぞ。なにを怒ることがある?』
 心外だという声が聞こえてくる。

「あまりに危険すぎるだろ。周囲への被害が尋常じゃない」
『我の攻撃はそういうものだ』

 たしかに必殺技っぽかったけど、これ、敵も味方も巻き込んでしまうだろ。
 そもそもこれじゃあ、他の竜との連携がとれない。

「まあいいや。とりあえず、月晶石つきしょうせきを回収して帰ろう」
 課題ができた。シャラザードの雷玉らいぎょくの運用についてだ。ちゃんと考えないと死人が出る。

 学院に戻った僕はシャラザードを竜舎に預け、義兄さんのもとへ向かった。
 この件でだれに相談するか、それを義兄さんに聞きたかった。

「同じ属性竜持ちだろうな」
「そんな簡単に言うけど、それって難しいよね」

 属性持ちといえば、青き炎を吐く青竜を持つソウラン・デボイか、女王陛下が思い浮かぶ。
 女王陛下は白竜で、氷竜と呼ばれている。

「まあな。だが、伝え聞いたところだと、ソウラン操者の青竜も相当だという話だぞ。あれは炎であって、炎でないとか」

「なにそれ」
「水の中でも消えないらしい。しかも液体のように流れるんだと。だから、ひとたび炎を噴けば、すべて焼きつくすまでそのままだ。例外なく何もかも溶かすと言われている」

 それはまた物騒な炎だ。というか、炎なのか?

「女王陛下は?」
「氷のブレス一発で、あたり一面氷の世界だ。風すら凍らすと言われている。もちろん生き物はみな凍る」

「……あれ? 属性竜って結構やっかい?」

「優しい能力じゃないと思うぞ。見渡す限りで味方がいないところで放つならいいが、乱戦では使えない能力だな」

「………………」
 属性竜は、ただ大きいだけの竜じゃなかった。

「おまえは相談と言ったが、こんなのどこへ話を持って行っても、同じ答えしか返ってこないと思う」
「同じ答え?」

「味方のいるところで使うな」
「………………」
 道理だ。……道理だけど、問題の解決になっていない。

 考えてみると、誰に相談してもどうしようもない気がする。
 今度、女王陛下に会ったときにも相談してみよう。

「でも、女王陛下は実戦に出ることがないからなぁ」

 白竜が戦うときは最後の時だ。周囲の被害なんか考える余裕はない気がする。


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