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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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あるじよ、さあ行こうではないか』
 最近シャラザードが調子に乗っている。いや、最初からか。

 学院の実習はいま、竜を操ることに特化している。

 竜が町中でひとたび暴れれば家が壊れる。
 そういう存在であることを認識して完璧に操れと、口をすっぱくして言ってくれるのだ。

 だから僕らはその教えに従い、より正確に竜を操れるように訓練する。

 なにしろ、竜がよろけただけで家は壊れ、人が潰れる。
 竜操者が最初に覚えるのは、いかに安全に竜を操れるかで、間違ってはいない。

 そうすると僕のやることは何もない。
 シャラザードはよく分かっているし、知らないことでも口で言えば理解してくれる。

 編隊行動の先頭までこなしたあとでは、教官も学院卒業レベルに近いと言ってくれた。
 無茶振りをした女王陛下は、なぜシャラザードが他の竜を率いることができることを知っていたのか。

 やはり同じ属性竜を持っていることが大きいのかもしれない。

『主よ、そろそろだぞ』
 というわけで、今日も月魔獣狩りに来ている。
 行かないとシャラザードがうるさい。

 それでも僕は思うのだ。シャラザードは調子に乗っていると。

『……主? 今なにを考えた?』
「いや、月魔獣が多いなと思ってね」

『うむ。でははじめようとするか』
 舌なめずりをしたシャラザードが月魔獣に突っ込んでいく。

 危ない、危ない。シャラザードに乗っているときは気をつけねば。
 その伸ばした鼻をへし折る僕の妙案。
 これを悟らせてはならない。

 今もまた、シャラザードが上機嫌で咆哮しやがった。
 うるさい。



 翌日僕は、教官に呼ばれた。確認したいことがあるらしい。
 叱られることはしていない……はずだが、シャラザードが来てからというもの、自信がない。

「レオン操者。この前の出来事をありのまま、話してほしい」

 この前、アンネラと出会ったときの話をするように言われた。
 なるほどと思い、僕は言われるまますべて話した。

 途中何度か質問をしてきたので、それも丁寧に答えた。
 竜紋持ちがなぜ分かったのかのくだりは、シャラザードから聞いたからとしか答えられない。
 あとは概ね、問題なかったと思う。

「……そりゃ、報告義務はあるよなぁ」

 僕が出会った五人は軍人だった。
 月魔獣の被害を減らすために巡回していた。

 なにがあったか、報告書を提出する義務がある。
 当然、僕のことも報告対象だ。

 一方、町に戻ってきたアンネラの商会員たち。
 月魔獣に襲われたことを報告せざるを得ない。

 同時に、自分たちの若き商会長が竜紋持ちであることが判明したこともだ。
 竜紋が現れたら、その町の領主に報告する義務がある。
 アンネラに僕が話したことは竜国民ならば誰でも知っている。

 アンネラの情報はすぐさま町の領主のもとまで届けられ、領主は大喜び……いや、ぬか喜び。
 なにしろ、竜紋が現れた本人は竜操者が連れて行ってしまったのだから。

 アンネラは、商会員たちに詳しい話をしていない。
 本人もよく分かっていなかったこともある。

 領主は、町にいた竜操者に「自分の町の竜紋持ちが竜操者に連れて行かれた」と告げ、事実関係の調査をお願いした。

 領主、操竜会、竜導協会の間で情報が飛び交い、あれは拉致でも独占でもなく、致し方ない事情であることが確認された。

 あとは確認のため、当事者の僕に事情を聞くだけとなったようだ。

 僕の行動は間違ってないばかりか、事前に発見できたこと、竜導協会の本部を頼ったことを評価された。

 ……が、しかし。である。

「特別試験ですか?」
「そうだ。先ほどの説明を裏付ける意味でも、受けてもらいたい」
「……はあ、分かりました」

 なぜか僕だけ、特別試験をすることになった。

 竜に命令して月魔獣を狩りに行かせて、月晶石を得るために死体を持ってこさせる。
 そこまでできるのなら、操竜くらい余裕だろうとばかりに、いろいろ試したいらしい。

 試験といっても合格も不合格もない。
 事前準備させないために、試験内容は秘密らしい。

 シャラザードに月晶石を取って来させたのは、僕が事前に仕込んだと思われたのだろうか。

 試験当日は、教官だけでなく熟練の竜操者が何人も見に来ていた。
 およそ五十人くらい。

 この僕だけの試験。
 後で知ったことだが、二回生の卒業認定になるものも混じっていた。

 それを僕とシャラザードは『説明を聞いただけで』、ことごとく実行してしまった。
 詳細は割愛するが、かなり難易度の高いものも混じっていた。

 ちょっとだけ悔しかったので、「ある程度の実技は免除させてもらえないでしょうか」と聞いてみた。
 渋った教官に「その時間に月魔獣狩りに行きたいので」と言うと、許可がおりた。

「それだけの実力があるなら、月魔獣を狩りに行った方がいい。中型竜以上に必要なのは戦闘経験だからな」と熟練の竜操者たちの後押しもあった。

 ちなみに中型竜は、最初に単独での狩りを覚える。
 それができてから編隊の訓練をする。

 それはなぜか? 操竜技術と狩りの腕が上達してからでないと、小型竜に被害・・が出てしまうからだ。

 たとえば、月魔獣をふっとばそうと体当たりしにいって、近くにいた小型竜もろとも、ということもある。

 狩りの経験値が上がるまで危険すぎて、小型竜と同時に戦場に立たせられない。
 中型竜は、単独で狩りをするゆえんである。

 僕の場合はその心配はないが、経験値を上げるのは推奨される。
 演習の時間に狩りに行けるとシャラザードに伝えたら咆哮をあげやがった。
 相変わらずうるさい。

『ならばいくらでも月魔獣を狩ってやろうぞ』

 そう言うと思ったんだけどね。
 ということで、連日月魔獣狩りに出かけているのに、僕の顔を見るたびに催促するようになってきた。

 だが待ってほしい。
 僕は計画があるのだ。シャラザードの鼻をへし折る計画が。



「今日は座学があるから、その後ね」
『なんだと? 我はもうその気になっておるのに』
 とまあ、こんな感じだ。

 実は懸念も少しだけある。
 月魔獣狩りに行っても、シャラザードの好きにさせているため、僕の技量が上がってないのだ。

 それでいいのかと思うが、今は僕が指示を出すよりも何倍も効率がいい。
 シャラザードとの付き合いは、これから何十年にもわたって続いていく。

 シャラザードの考え方、動きが分かるようになってから、徐々にアドバイスできるようになればいい。

 僕は咆哮をあげようとするシャラザードをなだめすかして授業に向かった。
 午後からシャラザードと狩りだ。

祝、200話です

物語は少しの間、卒業式をはさみつつ、シャラザード中心でお送りしていきます
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