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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 ガイスン本部長にシャラザードと意思疎通できることをすべて伝えた。

「話は分かりました。レオン殿とだけ会話ができるのですね。私の方でも調べておきましょう」
 女王陛下は、過去にも竜と会話できた者がいたと言っていた。

 古い文献にそれが残っているらしい。
 ならば、竜導りゅうどう教会はどうだろうか。やはり何か残っているかもしれない。

 僕はそう考えたのだ。

「ありがとうございます。それとシャラザードが他の竜を従えることも一緒に調べてもらえませんか? こちらは過去に例がないかもしれませんが」

「なるほど。たしかにそうですね。教会の中には同志も大勢います。みなレオン殿に協力するでしょう。お任せください。史料をあさってみます」

「よろしくお願いします」

 僕とガイスン本部長はかたい握手をした。
 良かった。シャラザードから聞いた話には、重いものもある。

 竜と月魔獣との戦いの歴史や、人と竜が心を通わせていた時代の話。
 そしてもしかすると、僕らの祖先かもしれない人の話。

 これは公にできないかもしれないが、調べておくことに意味があると僕は思っている。

 女性神官に連れられて、アンネラが戻ってきた。

「間違いなく竜紋でございます」
「ご苦労だった。では、書類を書こう。王宮へ早急に奏上そうじょうせねばならぬ」

「はう!?」

 ことが大きくなって、アンネラは驚きの連続のようだ。
 だが、慣れてほしい。竜を得るとはそういうことなのだ。

 僕はいつもそれを味わっている。
 なぜか事が本人だけで終わらず、学院や隣の王立学校、ひいては町や王宮、結局すべてを巻き込むのだ。

 竜を得るのは、それだけ大変で面倒なのだと知ってほしい。

「レオン様……」
「逃げられないからね」

 竜を使えば商売が有利になる。そんな甘い話ではない。
 もう一度言おう。そんな甘い話ではない!

 それで済むならば、僕はいつでもパン屋を始める準備がある。

 ちなみにアンネラの身柄は、教会預かりとなった。
 入学前までに最低限、竜操者としての知識を身につけないといけないのだ。

「身に付けるというよりも、詰め込むと言った方がいいくらいですな」
 分かる。
 僕だって、学ぶのに結構な日数をかけたわけだし。

「そうですね。歯を食いしばれば、間に合いますかね」
「本人の努力しだいでしょう」

「そ、そんなにですか?」
「大丈夫です。現役の竜操者の方々もここにはいらっしゃいますので」

「それが大丈夫の理由なんでしょうか」
「教師に事欠きません、大丈夫です」

「それが大丈夫の理由なんでしょうか」
「大丈夫です」

「それが……」
「教会には連絡用に数体の竜が常駐しているからね。当然優秀な竜操者もいる。頑張って覚えるといい」

「………………はい」
 不安そうだ。

 だがこれで、アンネラの情報は王宮と学院に届く。
 すぐに寮や制服の準備に入れる。本人の意思とは関係なく、物事は急ピッチで前に進んでいくだろう。

 そもそもこんな突貫工事になったのは、気づかなかったアンネラが悪い。
 どちらかと言えば、高熱で寝込んでいるときに竜紋が現れたタイミングの悪さか。

「じゃあ、僕も気にかけておくからね」
「もしかしてレオン様……行ってしまわれるのですか?」

 もちろんだ。というか、何を言っているんだ。
 僕は学院生なので、教会には用がない限りこない。

「大丈夫、ときどき様子を見に来るからね」
「レオン様……あの、なんていうか」

 聞いたところ、アンネラは十四歳だとか。
 まあ、がんばってほしい。

「ではガイスン本部長。アンネラをよろしくお願いします」
「うむ。任された!」

 後ろのほうで悲鳴のような声が聞こえた気がしたが、僕は後ろ髪を引かれることなく、部屋を出た。

 すぐにシャラザードに乗って学院に戻った。
 シャラザードを竜舎に入れ、学院の事務局で月晶石を渡す。
 学院生が自力で取得した月晶石はここで換金できる。

「それではお預かりします」

 現金で持ち歩くのではなく、学院に預けておくことにした。
 使いたいときに引き出せばいい。

 一通りの用事を済ませて寮に戻ると、手紙が届いていた。
 アンさんからだ。

「どれどれ……」

 手紙の中を見る。いろいろと書いてある。
 リンダと話し合いの席を持ったようだ。またリンダの父親とも話をし、理解を得られたと書いてある。

「やっぱりふたりは仲がいいな」

 互いのことをよく考えている感じが文面の中から見てとれる。
 もう少し読み進めて、僕は固まった。

「……なるほど。そうきたか」

 以前、手紙にあった内容に、僕は返信しておいた。


 ――今度、みんなで会おう


 あれは気軽に言ったつもりだった。
 僕らにシャラザードを加えて、少し空でも散策したりとか考えていた。

 だが手紙の文面には、こう書かれていた。

 ――わたくしとリンダさんで相談しました。そして、できれば早いうちにレオンくんのご両親に結婚のご挨拶をしたいと考えております。レオンくんおよび、ご両親のご予定はいかがでしょうか。

「……結婚の挨拶か」

 まさにそう来たかである。
 なんだろ、急に逃げたくなった。

 僕はまだ十六歳だ。いや、歳はいい。そういうことではなくて。

 お嫁さんを連れて父さんと母さんに会いにいく。
 それはまた、難易度の高いミッションになる気がした。

 そう……〈影〉でも経験したことのない、高難易度ミッションだ。

 これに返事を書かねばならないが、どう書いていいか分からない。



 その日の夜。
 僕は机を前にしてずっと悩んでしまった。

 ぶっちゃけて言うと、返信が書けないのである。
 どう書けばいい?

 翌日、僕が寝不足になったのは致し方ないことだと思う。

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