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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 僕らが追いついた時には、すでにふたりの竜操者が大地に投げ出されていた。
 近くに地竜と走竜が横たわっている。

 残った三騎の竜たちが民を守るために一列に盾となって防いでいる。
 だが’このままでは、ジリ貧だ。

『ガァアアアア(そこを退け)!』

 シャラザードの咆哮で、三騎の竜たちが脇に退く。
 驚いたのは竜操者たちだろう。だが、いちいち声をかけている暇はない。

 空いたスペースにシャラザードが低空から侵入する。

 すれ違いざまに三体の月魔獣が宙を舞った。
 爪で二体ひっかけ、牙で一体を噛み砕いたのだ。

 一度上空まで上がったシャラザードは、小さく旋回すると、今度は急降下をしかける。

「少しは乗り手のことを考えてくれよ」
『口のわりには、主は平気そうだな』

 僕だって鍛えているのだ。急降下中に話しかけることくらいはできる。

 ――ズズン!

 シャラザードの足の下に二体の月魔獣が潰れていた。地面が陥没したのはご愛敬だ。
 踏んで殺せる月魔獣が弱いのか、シャラザードが規格外なのか。

『残り、たった二体か。ツマラン』

 尻尾の一振りで、二体が粉々に砕け散った。
 なんともあっけない戦闘だった。

「大丈夫ですか?」

 僕はシャラザードから飛び下り、地面に投げ出された竜操者に声をかける。
 背中を打ったらしく、むせている。

「………………」

 ディナードさんが口を開けたままだ。
 あれは周囲のホコリを取り入れる新しい健康法だろうか。

「ディナードさん、大丈夫でしたか?」
 近寄って声をかけると、ようやく我にかえったようで、眼の焦点が合ってきた。

「えっ、はい……私らだけじゃ対処できませんでした。助かりました」
 また口調が――。
 学院生に対するものじゃないし、どうしたらやめてもらえるだろう。

「たった五騎で月魔獣を七体も相手にするのは無茶ですよ」
 囮を出して、後ろにかばった商人たちを竜の背に……って、人数が多いのか。

 馬車から降りてきたのは、十五人ほど。
 全員を乗せて逃げるのは難しそうだ。

「七体を一瞬で倒すとは、本当に噂以上ですね。先ほどのアレも驚きましたが」

「あー、勝手に従えさせてしまいました。すみません」
 竜が自分ではなくシャラザードの命令を聞いたことに驚いただろう。

「いえ、私たちではあのまま対処しきれなかったでしょう。そうなれば、後ろの人たちも無事では済まなかったはずです。本当に助かりました」

「そう言ってもらえてなりよりです」
 勝手に竜を従えさせたことで気分を害するかと思ったが、そうでもないようだ。

 ディナードさんが特別なのかもしれないが。

「……で、シャラザード。何をしているんだ?」
『月晶石を取るのだろう? バラしてやっているのだ』

 そうだった。あれ? でもこの場合って、どうなるのだろう。

「ディナードさん、今回の月晶石ですけど……」

 月晶石は倒した者の物になるが、軍人が軍事行動中に倒した場合は軍あずかりとなる。
 軍人は給与が出ているのだから、当然かもしれない。

 学院生は予備役兵と同じ扱いで、軍に所属していない。
 もらっちゃってもいいのだろうか。

「それは構いません。私たちは助けられただけですから」
 そう言ってくれた。いい人だ、ディナードさん。
 小遣いが少し増えた。

『主よ、向こうにも月魔獣の気配があるぞ。行っていいか?』

 まだ狩りたいらしい。
 今までの戦闘を見れば、シャラザードだけでも心配なさそうだ。

「いいよ」
『よし、では行ってくる』

 シャラザードは飛び立っていった。

「えっ?」
「あれ?」

 ディナードさんたちがあっけにとられて、シャラザードを見送っている。
「ど、どうしたのですか?」
 一人が僕に尋ねてきた。たしかランディールさんだ。

「月魔獣を見つけたようなので、シャラザードが狩りに行きました」
「はっ?」

 みんなきょとんとしている。
 すぐにシャラザードが戻ってきた。
 両手に一体ずつと口に一体加えた状態で。

『主よ、月晶石を取るのだろう? 持ってきてやったぞ』
「ありがとう、シャラザード」

『まだ向こうにいたので行ってくるぞ』
「気をつけてな」

 シャラザードが再び飛び立ったので、その間に月晶石を採取しにかかる。

「な、なぜ月魔獣の死体を持ってきたのですか?」
「僕が月晶石がいると言っておいたのを覚えていたみたいです」

「………………」

 竜操者たちがヒソヒソと話し合っている。
 竜を得たばかりだとか、どうやって意思疎通をとか聞こえる。

 そういえば、まだ他の竜はどのくらい意思疎通ができるのか、たしかめた事がなかったな。
 いくつかの命令を口に出しているから、ある程度はできると思うのだけど。

 三体の身体から月晶石を取り出し終えたところで、シャラザードが月魔獣を持ってきてくれた。
『まだ残っているので、持ってきてやる』

「ありがとう、シャラザード」

 シャラザードは三往復して、都合九体の月魔獣を持ってきた。
 竜操者たちも唖然としっぱなしだ。

「この周囲にはもういないみたいですね」
「そ、そうですか。……で、でしたら、私たちは巡回に戻ります。レオン操者はどうされますか?」

「月晶石も溜まったし、そろそろ帰ろうかなと思っています。学院から結構近いですので、頻繁に来れることが分かりましたし」

「………………」
 苦笑いされた。
 そういえば、シャラザードは飛竜の倍くらいの速さで飛べるからそう感じるだけで、王都からここまで結構距離があったっけか。

 竜操者たちは僕にそろって敬礼をすると行ってしまった。
 地面に横たわっていた二体の竜もさっきの間で回復している。
 さすがに竜はタフだ。

「さてと……そういえば、こっちはどうなんだろ?」

 商人たちの方を見た。
 移動中に襲われたらしく、馬車が半壊している。

 飛び散った荷物はいいとして、車輪は……大丈夫そうだな。
 馬がいないか。逃がしたのかな。

「あ、あの……」
 僕が商人たちの所へ近づいていくと、ひとりの少女が話しかけてきた。


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