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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

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 ちょうど月魔獣狩りに来たところなので、彼らの負担を軽くしてあげようと思ったのだけど。
 竜操者のみなさん、なぜか顔が引きつっている。

 伍長のディナードさんは、四名の部下を率いている。
 名前はランデールさん、レクサミーさん、イオネストさん、ブライゼルさんだ。
 女性はブライセルさんだけで、あとは男性。

 あまり軍のしきたりに詳しくないが、全員きっちりと名乗ってくれた。
 人数が多いときは大変じゃなかろうか。

「ここから真北の方角ですが、手が足らず巡回しておりません。月魔獣がいる可能性が高いと思われます」

 それはいいことを聞いた。

「ありがとうございます。早速いってみます」

「では」と僕はシャラザードに指示を出し、空に舞い上がった。
 ディナードさんたちが風圧で吹き飛ばされる。
 もっとゆっくりと飛び立たないと、危険だな。

『この先か。久しぶりの狩りだ。胸が高鳴るわ』

 シャラザードの機嫌がいい。
 反対に僕は最悪だ。なんだよ、暴君って。

 おそらく諸悪の根源は王女だよな。そう決めた。今度会ったら文句を言ってやろう。
 きっと、帰りの道中で、あることないこと竜操者に言いふらしたに違いない。

 ドラン隊長も振り切られたり、帰りも到着が僕より遅れたことで、根に持っていたかもしれない。

 だからって、善良な学院生をつかまえて、闇の暴君はないだろ。

『主よ、見つけたぞ!』
 たしかに月魔獣だ。

「シャラザードは好きに狩っていいよ。ただし、僕が背中に乗っていることを忘れないように」
『心得た!』

 あれだけ自信があったのだ。まずは好きにやらせることにした。
 シャラザードの戦闘力がまったく分からないので、指示が出せないともいう。

 月魔獣に向かってシャラザードが高度を下げる。風を切る音が激しくなった。
 月魔獣はまだ気づかない。

『シャァアアアア!』

 すれ違いざまに振るった爪で月魔獣の四肢が砕け、胴体が破壊される。

「爪だけで一殺か!」
 想像以上だった。

 そもそもシャラザードの巨体からして、月魔獣が敵うとは思えない。

『次はあいつだな』

 別の月魔獣を見つけて、喜々として向かっていく。

 シャラザードはわずかな時間で、五体の月魔獣を狩ってしまった。
 順調すぎる。
 改めて竜の凄さを実感した。

「僕がひとりで狩れない月魔獣をこんなに呆気無く」

 半年前の遠征を思い出す。
 最も攻撃力が高い『闇鉤爪やみがぎづめ』でも傷を付けるのがやっとだった。

 それまで闇を隠密にしか使ってこなかった。
 竜紋が現れたとき、もっと想像力を働かせていればよかったと反省したりもした。

「その後で月魔獣用の魔道は開発したのだけど……」

 あの時の悔しさをバネに、新しい魔道は開発済みだ。
 実戦で使っていないのだが。

『主よ、なにをしているのだ?』
 僕はシャラザードからおりて、月魔獣の身体を調べた。

「体内に月晶石つきしょうせきというのがあってね、それを取り出すんだ」

 大地に落ちてきた月魔獣は、エネルギーを一切補給しない。
 月魔獣は活動限界が来ると動かなくなるが、そうすると体内の月晶石はボロボロと崩れてしまう。

 月魔獣がまだ動けるうちに採取した月晶石は、その中にエネルギーを溜め込んでいるので、高く売れる。
 なので、ちょっとした小遣い稼ぎにいいのだ。

『では我も手伝おうぞ』

 バラバラになった月魔獣の身体を爪でさらに細かく砕く。
 力が強いと便利だな。というか、コナゴナだ。

 月魔獣の身体は、死ぬと石と砂の塊のようになる。
 月晶石を掘り返すだけでも結構大変なのだが、シャラザードには関係ないらしい。

「よし、全部取り終わったし、次に行こう」
『次だな。よし、任せろ!』

 シャラザードとともに、大空に舞い上がる。

 少しして、シャラザードが二体の月魔獣を見つけた。
 ディナードさんの話にもあったが、この辺はまだ巡回していないのだろう。
 本当によく遭遇する。

『ヌファアアア!』

 上空から月魔獣の上に降り立った。
 それだけで月魔獣の身体が砕ける。

「踏んだだけかよ。もう、なんでもありだな」

 ただ降り立つだけで、月魔獣が倒せるものなのか?
 一応、国が総力をあげて排除しなければならない相手なのだが。

『この程度、我が爪を振るうまでもない』

 残りの一体を足蹴にした。
 器用だよ、シャラザード。

「これ、国すら滅ぼす存在なんだけどな」
 少なくともシャラザードにとって、月魔獣はなんら脅威にはならないことが分かった。

 中型竜ですら単独で月魔獣を狩るのだから、シャラザードでも充分可能だろうとは思っていた。
 だが、こうも圧倒的だとは思わなかった。
 まだ試してないが、防御力の方も相当だろう。

 その分、騎乗している僕がやられないように気をつけなければ。

『……主よ、あそこにいるのは、先ほどの連中ではないか?』
「どれどれ?」

 僕よりもシャラザードの方が目がいい。
 悔しいことに、僕には点にしか見えない。

『月魔獣が七体もおるわ。我らも参加しようぞ』

「七体? さっきの人たちって五人しかいなかったぞ!?」
 小型竜だけしかいなかった。

 手に負えない場合、撤退して本部に知らせるのではなかったか?
 近づいてみて、理由が分かった。人を守りながら戦っているのだ。

「竜操者の五箇条かっ!!」

 竜操者には守るべき五つの戒律がある。
 その中に、力なき弱者を守ることも含まれていた。

 そのため、彼らは撤退できないのだ。

「シャラザード!」

『なんだ、主よ』
「遠慮はいらない。蹴散らせ!」

『心得た!!』

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