挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第3章 商国陰謀編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

194/660

194

 この前マーティ先輩と話していた防具だが、つい今しがた届いた。

「すごいな……注文通りだ」

 漆黒しっこくの鎧だ。
 ちゃんとつや消しになっている。

 シャラザードが黒竜なので、乗っている僕が目立たないように黒い鎧を注文した。
 それとなるべく動きやすいように軽くしてもらった。

 鎧はパトロンが用意するのだが、今度会ったらお礼を言わねばならない。

 この鎧は内側に投擲用のナイフが隠せるようにもなっている。ちょっとしたギミックだ。
 他にない仕掛けを施した鎧なので、かなり高かったのではないだろうか。

「……うん、ぴったりだ」

 顔合わせ会の準備で服のサイズを測ってあったので、それを流用したと聞いた。
 相変わらず、職人は腕がいい。

「どれ、シャラザードに見せに行ってくるか」

 僕は軽い気持ちで竜舎に行った。

 いつも一日一回はシャラザードに会いに行っている。
 だから忘れていた。

『ようやく鎧が届いたのだな。では月魔獣を狩りに行くぞ』

「………………そうだった」

 約束していたのだった。
 あまりにシャラザードがうるさかったので、竜操者の決まりで行けないと話した。
 鎧ができたら行ってやると伝えた記憶がある。

『何をしている、さあいくぞ』

 シャラザードは行く気満々である。
 しょうがないので竜務員りゅうむいんさんに事情を話し、鞍を持ってきてもらった。
 もう規則を盾にすることもできない。

 鞍は特注だ。結婚式に出席したときは時間が足らなかったので、女王陛下の予備を借りた。
 シャラザードは大きいので、そのまま背に乗れば落ちることはないが、月魔獣をはじめて狩るのだ。
 どんな動きをするか分からない。

 振り落とされないためにも、鞍を付けてもらうことにした。

『さあいくぞ』
 僕が乗るやいなや、シャラザードは大空高く舞い上がった。

               ○

 月魔獣を狩りに行くのに否はない。
 いつかは行かねばと思っていたし、シャラザードの力を早めに確認しておきたかった。

 シャラザードの力はどんなものだろうか。
 まさかとは思うが、口だけということもある。

あるじよ、何か失礼なことを考えてなかったか?』

「そんなことはないよ。たぶん気のせいだ」
『疑わしいのう』

 シャラザードは僕を背中に乗せているときだけ、僕限定で勘が鋭くなる。
 感情を読めるというか、口に出さなくても言いたいことが伝わる気がする。

「どうしてだろうね」
『接しているからではないか』
「なるほど」

 馬ですら慣れるとそっと撫でたり、重心移動だけで意思疎通ができるというし、竜にできても不思議ではない。

『やはり、失礼なことを考えておるのではないか?』
「いや、考えてないよ」

 シャラザードも馬レベルくらいは、感応力があるのかなとか考えていない。

 しかし、シャラザードの飛翔速度は速い。
 何度か乗せてもらった走竜や飛竜と比べても、格段に速い。

 気がつけば、もう陰月の路付近に来ていた。

「……この辺は演習で来たことがあるな」

 通っただけだが、見覚えのある地形だ。
「うん? あそこ……竜の編隊かな?」

 はるか遠くだが、大きな一団が移動している。
『行ってみるか、主よ』

「そうだね。情報交換できるかもしれない」

 見たところ、走竜が二体と地竜三体だ。
 二本足で走るのが走竜、四本足が地竜なので、遠目にも分かる。


「うわっ!」
「なんだ!?」

 急行して空から一気に降り立ったので、驚かせてしまったようだ。

「学院一回生のレオン・フェナードといいます。月魔獣を探しに来たんですけど、少し教えてもらっていいですか?」

「学院の一回生?」
「おい、例の……」
「へっ? ああ、黒竜で一回生って、そうか」

 あれ? 僕のことを知っているのかな?

「王女を気絶させ、魔国の外交官に喧嘩を売った闇の暴君か!」

「ちょっと待てい!」
 なんだよ、その闇の暴君ってのは!?

「「「す、すみません!」」」

 あれ? この人たち学院の卒業生で、現役の竜操者――つまり僕のはるか先輩だよな。
 僕は学院生なんだけど、なんで僕に敬礼しているの?

 五人の竜操者は、敬礼のまま上官の言葉を待つかのように微動だにしない。

「とりあえず、手をおろしてくれますか?」
「「「はっ!」」」

 なにこの人たち。

「えっと、言いたいことはいろいろあるんですけど、さっきの闇の暴君というのは、僕のことでしょうか?」

「も、申し訳ありません!」

『主よ、恐れられているではないか』
「ちょっと黙って!」

「はっ!!」
 いや、そっちじゃないから。

「王女が気絶したのは、王女が自分から乗ると言い出したことですからね。それと全速力で飛べと。……魔国の外交官の件は、僕のほうが喧嘩を売られたんです」

 話の出処は王女だろうな。あと、あの時の飛竜編隊。
 それを竜操者仲間に広めたと。

 竜迎えの儀の件もあって、広がるのが早かったんだろう。
 僕はちっとも悪くないのに、なんで僕が暴君なんてアダ名を付けられなきゃならないのだ。

「それで、他にはもうないですよね、僕のアダ名」

「他でしょうか? 月魔獣と闇の暴君が同時に現れたら、月魔獣の方に逃げろとは言われていますが、そのくらいでしょうか」

 なんで逃げること前提なんだよ。
 何にもしないよ! しかも逃げる先が月魔獣の方って。

「月魔獣の方に逃げたら、一緒に襲いますからね」
 シャラザードの攻撃範囲にいてほしくないので、そう言っておいた。

 竜操者のみなさんは青い顔をして頷いていたけど、分かってくれたみたいだ。

「そ、それで、な、何用でありましょうか。……も、申し遅れました。私は、地方竜隊第七竜団の伍長ごちょうをしておりますディナードと申します」

 聞いたところ、最近月魔獣の被害が多発しているので、いま第七竜団はいくつかに別れて退治に出かけているらしい。

『月魔獣の被害が多発しているとな……それはそれは』
 シャラザードは嬉しそうだ。

 ふつうは三つくらいの伍隊ごたいが合わさって活動するが、被害が多いのでそうも言っていられないらしい。

 月魔獣を見つけて、伍隊だけで狩れそうならばよし。
 無理だと判断したら、監視を残して本部へ報告に戻る命令を受けているようだ。

「そうですか。ちょうど良かったです。月魔獣がたくさんいそうな辺りを教えてもらえませんか?」
 僕はニッコリと微笑んで問いかけた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ